エンタープライズRIA「Curl」
最近では、「RIA」(リッチインターネットアプリケーション)という言葉もだいぶ浸透してきた。RIAというと、アニメーションGUIや動画再生などコンシューマー向け製品のイメージがあるが、その分かりやすい操作性は業務効率を向上させる手段として、エンタープライズ領域でも注目を集めている。
そんな「エンタープライズRIA」に長年取り組み続け、確固たる地位を築いているのが「Curl」だ。Curlが企業案件で使用される理由や最新バージョンの情報などについて、株式会社カール セールスサポート・コンサルティングチームの岡本奈緒氏に聞いた。
企業用途に強いRIA
2008年頃からRIAという技術が脚光を浴びています。そういった他の技術と比べた「Curlの強み」は何でしょうか。
エンタープライズ領域に非常に強い、ということだと思います。
Curlは、もともとのコンセプトが「クラサバをWebに」というものなんです。そのため、とにかく速く処理できるように設計されています。そしてエンタープライズ、つまり企業の通常業務で使われるような機能が非常に充実しています。Excelのようなスプレッドで何件ものデータを表示して1つ1つ編集できたり、ドラッグ&ドロップでアイテムを操作できたり。
また、企業向けということでセキュリティにも気を遣っています。細かいところでは、Curlアプリケーション内ではコピー&ペーストを禁止することやスクリーンショットを撮れなくするといったことも可能です。
他に特徴をあげるなら操作性の良さなどですね。後は本当にいろんなことができるので、開発するたびに新たな発見があります。今までのシステムになかったようなUIを作りたいというときに、他の技術だと難しい部分がありますが、CurlはAPIが豊富に提供されていますし、部品も多数用意されています。
確かにFlash系のRIAなども最近は業務システムに力を入れてきていますが、もともとがBtoCだと思います。BtoB領域に関しては、Curlは当初からそういった目的で設計してきているので自信がありますね。
Curl Ver.7で進む開発環境の進化
5月には最新版のVer.7が出ます。
Ver.7では、コンパイラの中のエンジンの部分を書き換え、パフォーマンスを向上させました。処理にもよりますが、従来と比べ20%以上、ものによっては300%以上パフォーマンスがアップしています。その他、2D・3Dグラフィック機能や、セキュリティ機能なども強化しています。
また、オフライン機能も強化しました。オフライン機能はだいたい5年前のCurl Ver.3の頃から実装されていましたが、最近、AIRやGoogle Gearsなど、いろんな製品が出てきたことで注目されていると思います。
以前、Curlではアプリケーションを立ち上げた段階でオンライン・オフラインを判定していたんですが、Ver.7からはアプリケーションが動いている間にリアルタイムで判定するようになりました。オフラインであれば一時的にローカルに保存しながらオフラインモードで動き、ネットワークと接続したらオンラインモードでサーバーと連携する、といったことが可能になっています。
アプリケーションのデザイン機能も変わると聞きました。
Ver.7からはアプリケーションのデザイン変更も簡単に行えるようになります。Ver.6のときも外部ライブラリとして提供していた機能なのですが、それをAPIとしてランタイムの中に組み込みました。これにより画面の配色やデザインを簡単に設定できるようになります。設定したものは外部ファイルとして保存できますので、他のアプリケーションに読み込めば瞬時に反映することができます。
加えて、スタイルを編集できるデザイナー「Style Designer」も提供します。左側のパレットで編集しながら右側プレビューを確認して調整していくだけという、非常に便利なものになっています。できあがったら簡単に外部ファイルに保存できるようになってます。
開発ツールという点では、Ver.7ではIDEのEclipse対応がさらに進みます。既に「Eclipse Curlプラグイン」(CDE)としてEclipseアドイン形式の開発ツールを提供していますが、よりEclipseとの機能統合を果たし、ツール上で行えることを大幅に増やしました。
もちろん、現IDEを愛用されている方もいらっしゃいますので、こちらも順次バージョンをあげていきます。ただ、将来的にはCurlのIDEはEclipseベースに移行していきますので、Eclipse版にも慣れていっていただけたらと思います。
「今までにない」を提案する
セールスサポートとはどんな仕事なのですか。
お客様のところに営業と一緒に行って、現状のシステムについてヒアリングしたり、それをWebシステムに置き換える際、RIAを使ったらどういうことができるか提案したりします。Curlだったらこういうことができる、こんなUIが使えるといった提案ですね。必要に応じてプロトタイプを作成し、お客様の前でデモをすることもあります。
今まで何社ぐらいのシステムに関わったのですか?
うーん…、数え切れないですね。
私の仕事は、お客様が導入を決める際のサポートですので、通常ですと1週間ほど、長いと2ヶ月を超えることもあります。既にCurlを導入されている企業は全国に400社もあるぐらいですので、次から次へと担当させていただいている感じです。
どういった業種のお客さんが多いのでしょうか。
そうですね、さまざまな業種で使っていただいていますが、製造業のお客様が多いかもしれません。工場で使うものもありますし、社内の基幹システムや、部品管理システムなどでも使われています。
製造業の場合、実際に製品を作っている方たちですので、少し勉強して、自分たちでもCurlを使いこなせるようになりたい、というのがあるみたいなんです。打ち合わせも実際のシステムに近い内容や、非常に細かい部分にまで話が及ぶことがあり、結果的に品質の高い、ほとんど業務システムのようなプロトタイプ・デモを提供しているケースが多いです。プロトタイプにもかかわらず、作り込んでいるうちに「このまま使えるんじゃないの?」というものができあがってしまうこともあるぐらいですね。
セールスに行ったときに求めらることは?
とにかく「速さ」、処理速度が求められます。
RIAを使うにあたって、今までのWebアプリケーションと同じように作ったのではRIAを使う意味がないので、そのメリットを生かしたいという要望をいただきます。見た目の部分であったり、操作性の部分であったり、RIAは使い勝手がよくなると言われますけど、じゃあ実際にはどうしたらいいのかということですね。
そこで、お客様のニーズを聞いたうえでプロトタイプ・デモを構築し、検討しているシステムがCurlで本当に実現可能なのかを見て確認していただきます。
後は、ほとんとの案件が業務システムなので、扱うデータ量がすごく多いんですよ。なので、お客様はレスポンスの部分を気にされます。一覧に数万件とかのデータを出したときに処理が重くならないか、また、Excelのような表形式で表示し、1項目ずつその場で編集していきたいのだが可能か、といった感じです。Curlはこういった要件を非常に得意としていますので、プロトタイプをお見せすると安心されることが多いですね。
とはいえ、お客様もRIAの経験がないので、どう作ったらいいかわからない。ですから、お客様は「自分たちには発想があまりないので、そこを提案してください」と言われます。
意外に難しくないですか? 今までにないというUIというのも。
難しいです(笑)
「使い勝手がよい」といっても、さまざまな観点があります。例えば、ITリテラシーに左右されない操作性だったり、あるいはユーザが必要としている情報への到達速度を短縮させる仕組みだったり、新システムへの移行に伴う教育コスト削減や直感的な操作ができるように、既存システムやWindowsアプリの経験を活かした操作感を組み込むことであったり。
こういったさまざまなアプローチを考えながら提案するようにしています。幅広く考えられるのは柔軟性のあるCurlならではだと思ってますね。
Curlはリピーターが多い
実際、Curlを使われたお客さんの反応はどうでしょう?
お客様の多くはWebアプリケーションに慣れていて、それを踏まえたイメージの指示をいただくんです。ところが、プロトタイプを作って持っていくと「え、これWebでできるの?」って言われることが多くて。すると、お客様も自分の中にあった「Webシステムはこういうものだ、これしかできない」というイメージが崩れ、「これもできるんじゃないの?」とアイデアがどんどん膨らんでいくんです。そうなっても、CurlはいろんなAPIがあるので、すんなりとアプローチできる、すると、そういうところでまたお客様に驚いていただける。そんな繰り返しがよくあります。
例えばこんなケースがありました。お客様は2つのシステムを持っておられ、一方はCurlで、一方はJavaなのですが、お客様がJavaシステムを触ったときに、「いつもできることができない」とおっしゃるんですね。いつのまにか、お客様の中ではCurlのUIが普通のWebシステムになっていて…。そのぐらい、CurlのUIに馴染んでもらえているんだと思います。そういう場面は嬉しいですね。ユーザーさんに驚いてもらえたとか、喜んでもらえたとき、「Curlってこんなことができるんだ」と言われると「やった!」って思います。
実際、Curlでシステムを作られたお客様はリピーターが多いんです。Curlの操作性やスピードに慣れてしまうと通常のWebアプリケーションは使えなくてしょうがない、という風になってしまうんだそうです。
システム導入というと、最近は「最初はスモールスタートで」ということがほとんどですが、Curlは企業の中で横展開していって、基幹システムなどにも採用されるケースが出てきています。それはお客様の中で、使ってみて分かる「Curlの良さ」を理解いただけたんだと思います。
スモールスタート後、広まらないという話は聞きますが、横展開していくというのはすごいですね。
多分、いろんなシステムと比べられるんじゃないかなと。既存システムが「ユーザーにとって効率悪いんじゃない?」ということが分かると、じゃあ、置き換えてみようかとなる。そういえば、システムのあそこの部分で使っているCurlは使い勝手が良かった、じゃあ、Curlでさらに機能拡張してリニューアルしよう、といった具合です。
運用面でも、Curlには「バージョン管理」という1つのウリがあるんです。他の技術ってバージョンアップしたときに、もともとのランタイムを上書いてしまうんですね。そのためにバージョンアップにあわせたメンテナンスが入るんですけれど、Curlの場合だと、同じPC内に複数バージョンのランタイムが同居できるんです。Ver.5も、Ver.6も、Ver.7も。
だから長い期間で使っていても、既に動いているアプリケーションをメンテナンスし続ける手間が省けるんです。いわゆる「バージョンアップ対応」が不要になるんですよ。運用の方はそこで苦労している人が多いので、一度Curlを使われると、じゃあこっちもCurlで作ろうか、こっちも作ろうかという風になるんです。
Curlアプリケーションを使われているユーザーの方、そしてメンテナンスをされている運用の方、どちらもCurlの魅力を分かっていただけるので、結果的にリピーターが非常に多い製品になるんだと思います。
今後、RIAは注目される
2009年も春になり、たくさんの新人がIT業界にやってきます。
IT業界は技術の移り変わりが早く、新しい技術がどんどん出てくるので、常に探求心を持って仕事をしていくといいんじゃないかな、と思います。私を含めてですが(笑)
その中の1つとして、Curlをウォッチしたり、触れてみたりしてくれると嬉しいです。RIAはコンシューマー、エンタープライズどちらの領域でも注目され、必要とされている技術になってきていますので。
Curlを触れてみたい方は、Curl公式サイトを見たり、Curl Apps Galleryで実際のアプリケーションを動かしてみてください。Curl Developer Centerには、たくさんの技術情報が集約されているので開発の参考になると思います。実行環境(ランタイム)や、開発環境は無償で提供していますので、すぐに始めることができます。
また、月に一度、無料でハンズオンセミナーを開催しており、おかげさまで好評をいただいています。よければこちらにも遊びに来てください。
- リッチクライアントCurl無料セミナー開催中!(ハンズオンセミナーの詳細)