再び配置ダイアグラムの作成
設定と制約を理解したところで再度、配置ダイアグラムに話を戻していきたいと思います。ここでは、配置ダイアグラムで設定と制約の整合性を検証してみます。先ほどまで見てきていた設定と制約は関係を絵にしてみると図24のような状態です。
配置ダイアグラムを使うことでこの関係の検証を行うことができます。まずは本稿で初めに作成していた配置ダイアグラム(サンプル例では「AllSystem1.dd」)を開いてください。次にダイアグラムの適当なところで右クリックし、[ダイアグラムの検証]を実行します。
検証が終了して、アプリケーションや論理サーバーの設定と制約に整合性エラーがある場合は、エラー一覧ウィンドウに警告が表示されます。アプリケーションや論理サーバーをすべてデフォルト設定のままで[ダイアグラムの検証]を行うと間違いなく警告が表示されます。
図26を見ると5件の警告と共に、配置ダイアグラム上にもエラー状態を示すマークが表示されていることが分かります。WindowsClient1やIISWebServer1のところに赤い小さな×マークがあります。このエラーはアプリケーションと論理サーバーで設定内容に食い違いがあることを示しているので修正する必要があります。通常、ソースコードを書いているときと同様、エラー一覧ウィンドウで対象の行をダブルクリックすれば修正対象の部分までジャンプできます。が、これは使わないことをお奨めします。なぜなら、このエラーはアプリケーションと論理サーバーの設定に食い違いがあることを示していますが、どちらが間違っているのかはこれを設定したユーザーにしか判断できないからです。一つ一つのメッセージに対して、どちらが間違っているのかを判断し、修正していくようにしてください。必要な警告情報を修正できれば作業は終了です。
ここまで来ると絵のモデルとしても配置が分かりやすく、それぞれのアプリケーションや論理サーバーに求められる設定条件なども確認できるドキュメントとして一定の価値あるものを作成することができました。
まとめ
今回は、VSTS-AEの分散デザイナの最後になる配置デザイナについて見てきました。今までの連載の中で出てきたものに加え、ドキュメントとしての価値を一段上げるための設定と制約についても併せて確認してきました。最後のまとめに当たる機能になるため、やらなければいけないこと盛りだくさん、細かいところにも細心の注意を払わなければいけないこと盛りだくさんで、どっと疲れてしまったかもしれません。しかし、配置デザイナがなければ、VSTS-AEで価値ある成果物を作成することが不可能なことも一緒にご理解いただけたのではないかと思います。
この連載では、全4回にわたり、VSTS-AEに用意されている分散デザイナ機能を一つ一つ確認してきました。著者の私見ですが、VSTS-AEはただでさえ捉えにくい製品や機能だと思っています。1つの機能だけを見ているといったい何に使うのかよくわからないという結論になりがちというのがその理由です。しかし、4つの機能やそこに用意されている細々したものを紐解いていくと、思っていたよりは価値のあるものを作成できる可能性が見えてくるのではないでしょうか。
次期バージョンになるVisual Studio 2010のArchitecture Editionではこれらに加え、UMLの作成などもサポートされる予定です。アプリケーションの構造を視覚的に捉えるための機能が盛りだくさんになるArchitecture Editionは今後ますます注目されていくことでしょう。そのための最初のステップとして、本連載の内容をぜひ実践していただければ幸いです。