サンプルの実装
ここまでで、REST APIの使い方について大まかに理解できたと思います。ここからは、サンプルの実装について、実際の作成の流れに沿って説明していきます。コードの詳細については、サンプルコードを参照してください。
[1]新しいプロジェクトを作成する
メニューの[ファイル]‐[新しいプロジェクト]を選択し、「AzureStorageSample」という名前でプロジェクトを作成してください。[プロジェクトの種類]は「Visual C#」の中にある「Cloud Service」を、[テンプレート]は(今回はWebロールのみ作成しますので)「Web Cloud Service」を選択してください。
[2]Default.aspxにコントロールを配置する
Default.aspxにコントロールを配置します。FileUploadコントロール(※1)、タイトル入力用TextBoxコントロール(※2)、アップロード用Buttonコントロール(※3)、画像一覧表示用としてDataListコントロール(※4)を配置します。
[3]アップロード用ボタンのClickイベントハンドラを実装する
配置したアップロード用ボタンのClickイベントのハンドラを、次のような流れで実装します。
protected void UploadButton_Click(object sender, EventArgs e) { if (!FileUpload1.HasFile) return; if (TextBox1.Text.Trim() == String.Empty) return; //コンテナを作成 CreateContainer(); // ※1 //ブロブを登録 PutBlob(); // ※2 // 画像を再表示 Display(); // ※3 TextBox1.Text = String.Empty; }
コントロールの入力値をチェックした後、(未作成であれば)コンテナを作成します(※1)。次に、アップロードされた画像データを、Windows Azure Storageのブロブストレージに登録します(※2)。最後に、ブロブストレージから登録済の画像データを取得し、画面に再表示します(※3)。
[4]ブロブストレージへのアクセス処理を実装する
ブロブストレージに対して、コンテナの作成、ブロブの列挙、ブロブの登録、ブロブの取得、メタデータの取得を行うコードを実装していきます。
BlobStorageUtilityクラスの、CreateContainerRequest(コンテナの作成、REST APIのCreate Container)、ListBlobsRequest(ブロブの列挙、List Blobs)、PutBlobRequest(ブロブの登録、Put Blob)、GetBlobRequest(ブロブの取得、Get Blob)、GetBlobMetadataRequest(メタデータの取得、Get Blob Metadata)の各メソッドが、REST APIの仕様に基づいてHTTPリクエストオブジェクトを作成します。
ここでは、そのうちの一つである、ブロブの登録用のHTTPリクエストオブジェクトを作成するPutBlobRequestメソッドのコードを、詳しく見てみます。
このPutBlobRequestメソッドは、REST APIリファレンス中のBlob Service APIにあるPut Blobの仕様に基づいています。Put Blobは、ブロブを新規作成するか既存のブロブを更新するためのAPIです。なお、更新の場合は、既存のメタデータも含めてすべて上書きされてしまいます。部分的な更新はサポートされていません。
仕様の詳細は、msdnの「Put Blob」をご覧ください。
/// <summary> /// ブロブ登録用HTTPリクエストを作成します。 /// </summary> /// <param name="postedFile">アップロードされたファイル</param> /// <param name="title">画像タイトル</param> /// <returns>HttpWebRequestオブジェクト</returns> public static HttpWebRequest PutBlobRequest(HttpPostedFile postedFile, string title) { // ……コメント省略…… HttpWebRequest request = null; // リクエストURIを作成 Uri uri = new Uri(BlobStorageUtility.ContainerUriString() + "/" + postedFile.FileName); // ※1 // HTTPリクエストを作成 request = (HttpWebRequest)WebRequest.Create(uri); // ※2 request.Method = "PUT"; request.ContentLength = postedFile.ContentLength; request.ContentType = postedFile.ContentType; // x-ms-dateヘッダーを追加 string dateString = DateTime.UtcNow.ToString("R", CultureInfo.InvariantCulture); request.Headers.Add("x-ms-date", dateString); // x-ms-meta-titleヘッダーを追加(メタデータとしてタイトル情報を追加) request.Headers.Add("x-ms-meta-title", HttpUtility.UrlEncode(title)); // ※3 // Authorizationヘッダーを追加 // ・・・処理省略・・・ BlobStorageUtility.AddtAuthorizationHeader( ref request, authorizationString); // ※4 // アップロードファイルをバイト配列に読み込む int contentLength = postedFile.ContentLength; Byte[] contentBuffer = new Byte[postedFile.ContentLength]; using (Stream inputStream = postedFile.InputStream) { inputStream.Read(contentBuffer, 0, contentLength); } using (Stream requestStream = request.GetRequestStream()) { // HTTPリクエストのストリームに、アップロードファイルの内容を書き込む requestStream.Write(contentBuffer, 0, contentLength); // ※5 requestStream.Close(); } return request; }
まず、リクエストURIを作成します(※1)。先程説明した、ContainerUriStringメソッドで環境に応じた有効なURIが返ってきます。取得したURIに基づいて、HTTPリクエストオブジェクトを作成します(※2)。
次に、Put Blobの仕様に基づき、HTTPリクエストオブジェクトのプロパティを設定していきます。タイトル情報をメタデータとして追加したり(※3)、Authorization(認証)ヘッダーの登録を行います(※4)。
最後に、HTTPリクエストオブジェクトのストリームにアップロードファイルの内容を書き込み(※5)、完成したブロブ登録用のHTTPリクエストオブジェクトを返します。実際のリクエストは、呼び出し元のDefault.aspx.csのPutBlobメソッドで行います。
ここでは省略しますが、コンテナの作成、ブロブリストの取得、ブロブの取得、メタデータの取得についても、REST APIの仕様に基づき同じような方法で行っています。詳細については、サンプルコードを参照してください。
まとめ
前回、今回と2回にわたって、Windows AzureのストレージサービスであるWindows Azure Storageについて扱いました。また、REST APIを使用してブロブストレージにアクセスするサンプルを作成しました。Windows Azure Storageを用いたアプリケーション作成のイメージがつかめたのではないかと思います。
次回は、Live Servicesの概要とLive Meshを使ったアプリケーションについて、扱いたいと思います。次回をお楽しみに。