IT機器が高度にネットワーク接続された我々の社会では、日常的に情報が発信消費されています。情報社会ではネットワークは不可欠であり、災害時には情報収集と発信が行える心強いツールです。東日本大震災を教訓として、災害時にITインフラにどのようなことが起こったか、ITで何ができたのかを最初に学んで行きます。
この文章には、東日本大震災当時を想起させる記述が含まれます。お読みいただく前にご留意ください。
ITインフラに何が起こったか?
総務省が発行する平成23年版情報通信白書には、東日本大震災の際に「電話が通じにくかった被災地域」が掲載されています。今回はこのデータと国土交通省が蓄積している国土数値情報をもとにして、さらに詳しく分析を行いました。
青色は人口密集地を表し、赤色と灰色はKDDI株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ、ソフトバンク株式会社の3社で震災発生から4日間で「電話サービス不通」と確認された携帯電話網と固定電話網を表しています。また、「1社でも電話サービス不通(携帯電話)」であった地域を、赤色で抽出しました。(図1.)
震災発生から72時間以上も、電話やデータ通信が途絶した地域があったことが読み取れます。断続的な余震が続くなか、情報のやり取りができなかった空白地帯が広がっていたことも分かります。さらに詳しく総務省被災市町村等による臨時災害放送局の免許状況によって、通信空白地帯と臨時災害放送局の相関図を見てみましょう。
この図から、人口密集した地域に電話サービス不通エリアと、そうではない場所の差が確認できます。また、電話サービス不通エリアを補完するように「臨時災害放送局」が設置されていったことも分かります。また、この図2.に示されている各項目が、異なる時間軸で開示されたデータであることも補足させていただきます。震災当時は、すべての情報が整然とまとめられていったわけではないのです。
ITだから分かったこと
東日本大震災の発生直後、どのような情報がITインフラを通じて確認できたのでしょうか。まずは震災当時、筆者が保存していたデータから紐解いていきましょう。1つは公益財団法人日本道路交通情報センター(JARTIC)が、1つは国土交通省が提供する降雪深の情報が残されていました(図3.)。これのリアルタイムに近い情報は、被災地からの避難、または被災地の災害復旧に極めて有効な情報なのです。この情報は、私の知人が震災翌日に東北地域へ携帯電話の移動局を開設するために向かった際に使ったものであり、当時まったく現地の状況が分からない中で貴重な情報となりました。
「ITを使って生きている情報を集める」ことは極めて重要であり、自分や周りの人たち安全にも寄与できる可能性を秘めているのです。筆者は自らの趣味(バイク・ツーリング)のため、日常的に気象・交通・海象といったリアルタイム情報に触れる機会が多く、震災当時にも各種情報からいち早く災害全容を推定できる事象を確認できました。「災害に対して日常的に使っているツールは効果的に働く」というお話は、数多くの研究者や震災対応を行われた方の中で共有されている事実です。
次回予告
公的な情報は多岐にわたり存在します。次回も引き続き震災当時を振り返り、ITだから分かる情報の実態に迫っていきます。