3. アルゴリズムを関数として分離
前述のプログラムをよく眺め、中のアルゴリズムについて考えてみましょう。
ProgramクラスのRun関数の中には、アルゴリズムが隠れています。例えば、次の2つです。
- 書籍のリストの中から、「書籍のタイトルまたは出版社の名前に "リ" を含むもの」を抽出する
- 書籍リストのそれぞれの書籍を表示する
この2つのアルゴリズムを関数として分離してみましょう。リファクタリングの始まりです。
Run 関数から2つの関数を分離したメイン プログラム
#include <iostream> #include <list> #include <vector> #include <string> using namespace std; #include "Book.h" #include "Publisher.h" class Program { public: void Run() { const vector<Publisher> publisherList = { Publisher(L"技術評論社" ), Publisher(L"翔泳社" ), Publisher(L"オライリー・ジャパン"), Publisher(L"SBクリエイティブ" ) }; const list<Book> bookList = { Book(L"4774157155", L"C++ ポケットリファレンス" , 0), Book(L"4798108936", L"C++ の絵本" , 1), Book(L"4798119768", L"独習 C++ 第4版" , 1), Book(L"4873110637", L"C++ プログラミング入門" , 2), Book(L"4797376686", L"C++ テンプレートテクニック 第2版", 3) }; const list<Book> filteredBookList = Filter(bookList, publisherList); Show(filteredBookList, publisherList); } private: // 書籍のリストの中から、 // 「書籍のタイトルまたは出版社の名前に "リ" を含むもの」を抽出する。 static list<Book> Filter(const list <Book >& bookList , const vector<Publisher>& publisherList) { const wstring searchWord = L"リ"; list<Book> filteredBookList; for (list<Book>::const_iterator iterator = bookList.begin(); iterator != bookList.end(); iterator++) { const wstring publisherName = publisherList[iterator->GetPublisherIndex()].GetName(); if (iterator->GetTitle().find(searchWord) != wstring::npos || publisherName.find(searchWord) != wstring::npos) filteredBookList.push_back(*iterator); } return filteredBookList; } // 書籍リストのそれぞれの書籍を表示する。 static void Show(const list <Book >& bookList , const vector<Publisher>& publisherList) { for (list<Book>::const_iterator iterator = bookList.begin(); iterator != bookList.end(); iterator++) { wcout << L"コード: " << iterator->GetCode () << L", タイトル: " << iterator->GetTitle() << L", 出版社: " << publisherList[iterator->GetPublisherIndex()].GetName() << endl; } } }; int main() { wcout.imbue(locale("Japanese", locale::ctype)); Program().Run(); return 0; }
実行結果は同じです。
コード: 4774157155, タイトル: C++ ポケットリファレンス, 出版社: 技術評論社 コード: 4873110637, タイトル: C++ プログラミング入門, 出版社: オライリー・ジャパン コード: 4797376686, タイトル: C++ テンプレートテクニック 第2版, 出版社: SBクリエイティブ
ここで、Run関数に注目してみましょう。
記述が明快になりました。
- 書籍のリストの中から、「書籍のタイトルまたは出版社の名前に "リ" を含むもの」を抽出し、
- それを表示する
という意図の部分だけがRun関数に記述されるようになり、forだとかiteratorのような意図以外の部分の記述がなくなって、分かりやすくなりました。
元の混沌としたRun関数から、書籍のリストに関して「抽出(Filter)」と「表示(Show)」という2つの部分を別関数として分けたためです。
これは重要なことです。
関数2つを分離したということは、「抽出(Filter)」や「表示(Show)」という名前でそれぞれの関心事を切り分けたことになります。そして、その「抽出(Filter)」と「表示(Show)」という新たな語彙でRun関数が記述できるようになった、ということです。