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懐かしい? いいえ、SAP Crystal Reportsは今も今後も「現役」です――SAPジャパンに聞く「SAP Crystal Reports」の現在

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 企業システムの分野でニーズが高い「帳票ツール」。その中でも一世を風靡した製品として「旧Crystal Reports」がある。複数の買収を経て、今ではSAPの製品となっている「SAP Crystal Reports」の現在の状況を、SAPジャパンのシニアソリューションアーキテクトである篠原史信氏に聞いた。篠原氏によれば「SAP Crystal Reportsは、今も、これからも現役であり続ける」という。

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帳票ツール「SAP Crystal Reports」が現役であり続ける理由

 企業情報システムの分野で、ERPなどの基幹系データベースをはじめ、さまざまなデータソースと接続し、その集計結果を視覚的に分かりやすく提示する「レポーティングツール」は非常に需要が高いものだ。特に日本では「帳票ツール」などとも呼ばれ、数多くのベンダーから、多様な特長を持った製品がリリースされている。

 その中でも、特にカスタムアプリケーションに対して、手軽にレポーティング機能、帳票機能を組み込むことができるツールとして、多くの開発者に愛用されてきた製品の一つが「SAP Crystal Reports」である。

SAP Crystal Reportsの帳票画面
SAP Crystal Reportsの帳票画面

 ビジュアルコンポーネントベースでの生産性の高い帳票開発が可能な点、多様なデータソースへの接続が標準でサポートされている点など、「旧Crystal Reports」が支持された理由はいくつもある。しかし、同製品が世界規模で帳票ツールの「デファクトスタンダード」的な地位を得たのは、マイクロソフトの統合開発環境である現在の「Visual Studio」に標準バンドルされたことも大きかった。特にVisual Basicで業務アプリを作る開発者にとって、旧Crystal Reportsは最も身近な帳票ツールとして大きな存在感を持っていた。

 SAP Crystal Reportsという製品自体は、もともとCrystal Decisionsによって開発されたものだ。その後幾度かの買収を経て、現在はERPのメジャーベンダーである「SAP」の製品となっている。そうした経緯もあり、Visual Studio 2010以降、OEMバージョンのバンドルは行われなくなったが、現在も最新版の開発と提供はSAPによって継続されている。

 SAP Crystal Reportsの現在の状況に詳しい、SAPジャパンのシニアソリューションアーキテクトである篠原史信氏は「SAP Crystal Reportsは、日本はもとより、特にグローバルでの支持が強い製品。SAPにおいても、継続的なサポートが約束されている。ぜひ、引き続き業務アプリ開発向けのレポーティング、帳票ツールとして安心して活用してほしい」と話す。

「SAP Crystal Reports」プラグインの開発ライセンスは現在も無償

 篠原氏によれば、最新版のVisual Studioで利用可能な「SAP Crystal Reports」のプラグイン(SAP Crystal Reports, version for Visual Studio)は、現在もSAPのサイトからダウンロード可能だ。このプラグインをインストールすることによって、Visual StudioのIDE上で、SAP Crystal Reportsのコンポーネントをフォーム上に配置するという形での開発作業を行えるようになる。

 「Windows 8のような最新のOSやVisual Studioへの対応、SAP HANAをはじめとする新たなデータソースへの対応と行った機能拡充は随時行われていますが、良い意味でそれ以外の機能や開発スタイルは、従来から大きく変わっていません。もし、Visual StudioにバンドルされていたSAP Crystal Reportsで帳票開発を行った経験がある人であれば、そのスキルを現在でも十分に生かすことができます」(篠原氏)

 ライセンス形態だが、基本的に「開発ライセンス」については、無償である。つまり、Visual Studioプラグインを利用した帳票の開発は無料で行えるわけだ。一方、レポーティング機能を組み込んだアプリケーションの配布については、いくつかのパターンがある。クライアントマシンにインストールして動作させるアプリケーション(ローカルで動作するWindowsのネイティブアプリなど)として配布する場合は、社内、社外での利用を問わず、ライセンスは「無料」となっている。一方で、現在ではより一般的になっているWebアプリとしての公開(サーバ上でSAP Crystal Reportsのランタイムが動作する環境での公開)については、公開範囲や利用範囲などによって、製品版のライセンスやOEM契約などが必要になる。

 製品版のライセンスやライセンスポリー詳細については「クリスタルソリューション」のサイトで情報が公開されている。「SI案件にSAP Crystal Reportsを利用したい」「帳票開発者とアプリケーション開発者を分けたい」「ホスティングしたSAP Crystal Reportsエンジンを利用して複数社にサービスとしてレポート機能を提供したい」といった場合のライセンスについての相談、購入にも対応できるので、ぜひ活用してみてほしい。

過去の「旧Crystal Reports」資産を生かすもう一つの方法

 先述したように、SAP Crystal ReportsはかつてVisual Studioに標準バンドルされ、これらを組み合わせて多くの帳票アプリケーションが開発された。企業によっては、そうした時代に作り溜められた多くの「帳票」が、塩漬けにされているケースもあるのではないだろうか。

 もし、眠っているアプリケーション資産の中に、SAP Crystal Reportsのエンジンを使った帳票データが含まれているのであれば、それを再利用するための仕組みも用意されている。それが「SAP Crystal Server」と呼ばれるエンジンである。

 SAP Crystal Serverを利用すると、「SAP Crystal Reports」や「SAP Crystal Dashboard Design」といったツールでデザインされた帳票に対して、ユーザーはWebブラウザ経由でアクセスできるようになる。条件指定によるデータの絞り込み、集計軸の変更、日時の指定による定期的なレポーティングといった機能も、Webアプリを通じて利用可能になる。

Crystal ReportsのレポートがCrystal Serverで表示されている画面
Crystal ReportsのレポートがCrystal Serverで表示されている画面
Dashboard DesignのダッシュボードがCrystal Serverで表示されている画面
Dashboard DesignのダッシュボードがCrystal Serverで表示されている画面

 「SAP Crystal Serverに既存のSAP Crystal Reportsコンテンツをエクスポートすることで、レポーティング環境、帳票環境をWebアプリケーションとして展開することが可能になります。特に、過去に作成したSAP Crystal Reportsによる帳票資産が多くある場合などには、Visual Studioでの開発作業を行わずとも、それらの資産を再び活かせる有効な選択肢となる場合があります。SAP Crystal Serverについては、無料のハンズオンセミナーも行っていますし、具体的な機能について解説した動画も公開されていますので、ぜひ参考にしてください」(篠原氏)

環境の選択肢が広い「SAP Crystal Reports」
――DBには何を選ぶ?

 普及した経緯から、Visual StudioおよびWindowsプラットフォーム向けの帳票ツールとしての印象が強かった「Crystal Reports」だが、SAPの傘下で開発とサポートが続けられることによって、新しいカラーが増えている。例えば、Eclipse上で利用できる「SAP Crystal Reports, version for Eclipse」と呼ばれるアドオンは、JavaアプリにSAP Crystal Reportsの帳票機能を組み込めるものとして提供されている。

 さらに、SAP Crystal Reportsが長く支持されてきた理由の一つとして、極めて広範な業務アプリケーションや、RDBMS、Webサービス、ODBC、OLE DB、JDBCなどのデータソースに対応した接続性の高さがある。近年では、最新の環境に対応した機能拡充も行われており、SAP HANAへの対応なども行われている。つまり、マイクロソフトのプラットフォームに限ることなく、帳票機能が求められるさまざまな状況で、SAP Crystal Reportsは活用できるというわけだ。

 「Visual Studioを使っている開発者のみなさんは、マイクロソフトやOracleデータソースを使うケースが多いと思います。しかし別段の理由がなく選択されているケースも少なくないはずで、視野を広げて、SAPが提供するVisual Studioに最適なデータベースを選んでいただいても良いと思います」(篠原氏)

 例えば「SQL Server、Oracleライセンス購入で苦労をする場合」や「オープンソースのデータベースを使うのはサポート面で不安」といった案件において、篠原氏は「ぜひ『SAP SQL Anywhere』を検討してほしい」と話す。

 「SAP SQL Anywhere」は、1990年代前半に最初のバージョンがリリースされて以降、さまざまな用途で利用されてきた商用RDBMSの老舗ブランドの一つだ。データベースベンダーだったサイベース(アイエニウェア)の製品として販売されていたが、SAPによる同社買収に伴って、現在では「SAP SQL Anywhere」として開発とサポートが継続されている(日本語情報はこちら)。

「SAP SQL Anywhere」の製品ページ
「SAP SQL Anywhere」の製品ページ

 SAP SQL Anywhereは、その軽快な動作や処理能力だけでなく、フットプリントの軽さ、InstallShieldを使ったインストーラからの組み込みにも定評がある。また親子ノードの間でデータを同期するMobile LinkもSAP SQL Anywhereの特徴であり、スマホが普及し、マルチデバイスとなった時代の業務にユニークな変革を投じてくれる。篠原氏は「Accessよりも本格的な業務に使え、SQL Serverよりもリーズナブルで軽量。かつ、きちんとした商用サポートが受けられる製品として、システム開発の際には是非、選択肢に加えてほしい」と話す。

「SAP Crystal Reports」を活用するためのリソースは?

 SAPでは、SAP Crystal Reports活用のためのさまざまなリソースを用意している。例えば、日本SAPユーザー会(JSUG)では、主にSAPソリューションの一部としての「SAP Crystal Reports」について、ユーザーの意見や要望を聞く取り組みを定期的に行っているという。また保守契約のないお客様に対してのバグ対応や改善要求についても「SAP Crystal Single Case」と呼ばれる個別プログラムで、対応が行えるケースがあるという。

 さらにJSUGへの参加は難しいという開発者向けにも複数の窓口が用意されている。1つは書籍による情報収集だ。2011年には『SAP Crystal Reports 2011レポート開発入門ガイド』(SAPジャパン著、翔泳社刊)が発売された。この書籍では、極めて初歩にあたるツールのインストールから、SAP Crystal Reportsを使った具体的な企業データの活用シーンまでを順を追って知ることができる。これから、SAP Crystal Reportsを使った開発を始めるという人に、最初にお勧めしたい1冊だ。

『SAP Crystal Reports 2011レポート開発入門ガイド』
『SAP Crystal Reports 2011レポート開発入門ガイド』

 また、SAPジャパンのブログでは、今回話を聞かせてくれた篠原氏によって、SAP Crystal Reportsに関するエントリがアップされている。

 そのほかにも、Twitterでは「@CR_Fun_JP」というアカウントで、Facebookでは「SAP Crystal Reports JP」というFacebookページ上で、公式ページではないが日本語での最新情報が提供されている。

 さらに、開発や機能について、より詳細な情報を得たい場合には「SAP Community Network」のSAP Crystal Reportsに関するディスカッションに参加することもできる。こちらはワールドワイドに開放されているコミュニティのため、コミュニケーションは英語が主体になるが、SAP Crystal Reportsの開発担当者やエバンジェリストも多く参加しているため、技術的により深い議論が行えたり、具体的な問題の解決策が見つかるケースもあるという。世界的にSAP Crystal Reportsのユーザー数は多いため、議論も活発に行われている。

 「特に海外がからむ案件などでは、利用する帳票ツールとしてSAP Crystal Reports以外の選択肢がないというケースもあるでしょう。一部にはSAP Crystal Reportsがなくなるのではといった臆測もあるようですが、SAPではBIソリューションの一部として、引き続きSAP Crystal Reportsの開発、サポートは継続される予定です。近年でも新しいOSやデータベース、新しい開発ニーズにも対応が続いております。英語で発信される情報が多いため、私自身もできる限り日本のユーザーのみなさんに向けた情報発信を行い、より多くの方にSAP Crystal Reportsを引き続き愛用していただきたいと思っています」(篠原氏)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/8358 2015/01/05 14:00

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