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これでGOサイン! クラウドを利用したいエンジニアのための会社・上司を説得する方法


反論をはね返す!

 前ページで挙げた会社からの反論には、もちろん当を得ているものもありますが、誤解や正しくない理解の基に検討されているケースも見受けられます。

 こうした反論に対して「公平な判断を促す」ために私たちにできることは、意見を無理矢理変えさせたりオンプレミスをdisったりすることではなく、公平な材料を提供することだと考えます。ここでは、会社からの反論をはね返すために必要な材料とロジックを紹介します。

「セキュリティが不安」への説得

会社・上司に訴えるポイント!

 

  • システムのセキュリティは物理的+論理的の2層である
  • オンプレミスでは2層ともユーザーが守る必要があるが、クラウドではオンプレミスの保護を事業者に委託できる
  • 信頼できるクラウド事業者を利用することで、銀行と同じように預けることがセキュリティ面でプラスに働く

 まずはなんといってもセキュリティです。クラウドのセキュリティを考える上で大切なことは、「クラウドを利用する場合、事業者と利用者の双方が持ち分についてセキュリティに関する責任を果たす必要がある」というポイントの理解です。

 つまり、

 物理層はクラウド事業者が守るが、それを操作するIDやパスワード、クラウド内で展開されるアプリケーションやデータはユーザー企業が守る

ということです。これは非常に合理的な分担です。通常、システムのセキュリティレベルを高めるためには、物理的な防御と論理的(ネットワーク上)の防御の2つを考慮しなくてはいけません。クラウドは自社内のサーバールームや自社で運用するデータセンターよりも強固な物理環境を備えており(これは第三者認証により証明しています)、物理的な防御を任せることができます。したがって、利用者は論理的な防御に集中できます。

 「それでも大切なデータを預けることは不安だ」という方がいらっしゃったら、「では、あなたの大切なお金の大半はどこにありますか?」と聞いてみてください。ほとんどの方が「銀行にある」とお答えになるはずです。

 その第一の理由は? セキュリティですよね(利息という方はほとんどいないと思います)。銀行に預けるほうが、物理的なセキュリティレベルが高いということは分かっている。だからみなさん、大切なお金を銀行に預けているわけです。

 セキュリティの分担も、銀行で考えれば「銀行は金庫などの物理的なファシリティについては自分たちの責任でしっかり守る。キャッシュカードや暗証番号は利用者の責任で守る必要がある」と、ごく当たり前のことになります。

 逆にいえば、それさえしっかりやっておけば、高い物理セキュリティの環境を安価に借りることができるわけです。セキュリティに多大な投資をしている大手クラウド事業者を利用することは、大変お得なのです。

「コストが割高」への説得

会社・上司に訴えるポイント!

 

  • オンプレミスの費用とクラウドの費用では、カバーしている範囲が異なり、クラウドのほうがカバー範囲が広い
  • クラウドのメリットは単純なコスト抑制ではなく、時間を買えることである

 最近はハードが安くなりました。「100万円のハードを5年間で償却すれば、1年当たり20万円となり、クラウドの費用を下回る」という言い方もよくなされます。

 これは「エンジニアの時間を原価としてみなさない」のであれば、当たっているかもしれません。ですが、実際にはそんなことはありません。次表のように比較してみると、クラウドにはオンプレミスで必要だった実に様々な業務が含まれていることが分かります。

オンプレミスとクラウドで必要な業務の比較
比較項目 オンプレミス クラウド
設置場所 別途必要 必要なし
OSインストール 別途必要 必要なし
設置場所 別途必要 必要なし
インターネット向け回線 別途必要 必要なし
故障時の対応 別途必要 必要だが限定的
資産管理 別途必要 必要なし
廃棄作業 別途必要 必要なし
上記の業務にかかる時間 把握不能(極めて難しい) 必要だが限定的

 オンプレミスの場合、業務が発生するだけでなく追加のコストもかかります。今はサーバーを捨てるのにもお金がかかる時代です。物理サーバーを捨てるとなると、データの消去や廃棄業者への委託、場合によってはリースの解約など、かなりの大ごとになってしまいます。

 それがクラウドであればコンソールからポチっとやるだけ。こうした業務にかかる時間をきちんとトラッキングすれば、決して「ハードの代金を5年で割る」という発想にはならないはずです。

「パフォーマンスが出ない」への説得

会社・上司に訴えるポイント!

 

  • メジャーなサービスでは、パフォーマンスの問題を解決する手段が提供されている
  • 「海外にサーバーがあるから遅い」はもはや都市伝説。日本国内にサーバーがあり遅延は懸念材料にならない

 パフォーマンス面からの会社の反論は、大きく分けると以下のようなものです。

  • クラウドでは共用モデル(マルチテナント)のため、ベストエフォートのパフォーマンスしかでない
  • 海外事業者のサービスだと海外への通信が発生するから遅くなる

 IaaS(Infrastructure as a Service)の場合、AWSではプロビジョンドIOPSというオプションで、またAzureではPremium Storageというサービスを使うことで、IOPS(Input/Output Operations Per Second)を保証してもらえます。また、AWSやAzureは日本国内に複数のデータセンターを構えており、ユーザーが日本国内のロケーションを選択できるようになっていますし、ネットワークのトラフィックが心配であれば専用線を引き込むことも可能です。

 SaaS(Software as a Service)においても、SalesforceやOffice 365などの大手事業者がこぞって日本にデータセンターを構え、ネットワーク遅延の問題を解決しています。

 以前は拠点が米国にしかなく、パフォーマンスの保証ができないサービスもあったので、今でも「海外事業者のサービスだと海外への通信が発生するから遅くなる」のような都市伝説が、クラウド利用反対の根拠としてまかり通るのかもしれません。ですが、冒頭で挙げた主要クラウドを利用するのであれば、特殊な使い方をしない限り、パフォーマンスの問題は解決可能というのが現在の事実です。

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クラウドでなければつかめない「ビジネス上のメリット」を示せ!

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この記事の著者

大石 良(オオイシ リョウ)

株式会社サーバーワークス代表取締役。AWSやクラウドサービスを組み合わせることで「作らない」SIを実現すべく奔走中。「プレゼンで得るものが無ければ切腹します!」という切腹プレゼンスタイルでも知られ、デブサミ2013「『SIの未来ってどうなのよ?』SIer大淘汰時代にAWS専業で新しいSIの形にチャレ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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