本稿で想定するクラウドサービス
一口に「クラウドサービス」(以下、単にクラウド)といっても実態は様々です。ここでは議論を簡潔にするため、敢えて乱暴に「大手クラウド事業者が提供しているサービス」に限って話を進めます。具体的には「グローバルで認知と利用が進んでおり、数千億円規模の売上(もしくは投資規模)があるサービス」とすると、挙がってくるクラウド(以下、主要クラウド)は次の5つに絞られると思います。
- AWS(Amazon Web Services)
- Google Apps for Work
- Microsoft Office 365
- Microsoft Azure
- Salesforce
これら以外にもクラウドはたくさんありますが、上記5つを「クラウドではない」という意見はないと思います。そして何より、現場で議論されるケースが多いのはこれらでしょう。本稿で想定するクラウドは上記5つとします。
会社はなぜクラウド利用に反対するのか
クラウド自体の利点の説明は割愛しますが、エンジニアにとって「会社がクラウドを利用するメリット」には、以下の点が挙がると思います。
- 下位層の仕事から解放されて、より早く、ラクに仕事を進めることができるようになる
- 新しい技術・サービスに触れる機会が増えて、自分の技術力の向上につながる
- イケてるサービスを使うことで優秀なエンジニアにジョインしてもらえる確率が高まり、優秀なエンジニアと仕事ができる機会が増える
これらには会社だけでなく、エンジニアにとってのメリットでもあります。しかし、実際には様々な理由で反対され、オンプレミスへの投資を継続する、あるいは(事実上オンプレミスと同義である)プライベートクラウドを構築するという判断がなされることもまだまだ多いようです。
そうした会社側の判断には、クラウドに対する次のような懸念や反論があります。
セキュリティが不安
クラウドが登場して10年以上が経った今でも頻繁に耳にする懸念です。先に挙げたクラウド事業者からの情報漏洩は起きておらず、逆にオンプレミスであるが故に起きている情報漏洩は枚挙に暇がありません。それにもかかわらず、「クラウドのセキュリティが不安だ」という声は大変多いのです。
コストが割高
最近では、高性能なハードウェアがかなり安く手に入ります。そのため「クラウドの料金を毎月払うぐらいならハードを購入した方が安くつく」「試算の結果、費用面でクラウドのほうが高くつくことが判明した」という声を多く耳にするようになりました。
パフォーマンスが出ない
今まで手元にあったシステムがクラウド化することによって、ネットワークのパフォーマンスが問題になるケースがあります。また、クラウドのマルチテナンシーという性質から「達成したい性能がでない」ことを理由に反対されるケースもあるようです。