クラウドでなければつかめない「ビジネス上のメリット」を示せ!
会社や上司にクラウドの利用を承諾させるには、クラウドに対する反論をはねつけるだけでなく、クラウドでなければつかめない「ビジネス上のメリット」を示すことも重要です。ここではそのような事例を2つ紹介します。
事例1:容量無制限のストレージでビジネス機会を拡大
1つ目は「容量の制約を受けずにデータを保管できる」というクラウドの特徴を売上向上に結び付けた事例です。
横河電機さんはWebサイトをAWSに移行したことをきっかけに、「取得するログの量を増やし」ました。AWSでは、Amazon S3という(事実上)容量無制限のストレージを安価に利用できるからです。
オンプレミスの環境ではハード資源の上限が決まっていますから、どうしても「使用量を下げる」方向にインセンティブが働きます。同社でも取得するログの容量を少なくし、古くなったログを捨てていました。「ストレージの容量がもったいないからデータを捨てる」ということが起きていたわけです。
この状況は、Amazon S3に保管した大量のログを、ビッグデータ分析ソフトウェア「Splunk」を使って分析するようになって一変しました。Splunkは、例えば「販売を停止した製品の情報資料をダウンロードした」という事実から、その顧客が、製品の使用で何らかの問題を抱えているか、買い替えを検討していることを導き出します。これにより、同社は追加の製品資料を送付するなどのサポートを行う環境を構築することができ、顧客満足度を高めました。さらに、海外を中心に販売している製品のサポートを可能とし、営業担当者の後方支援も行えるようになりました。
これも、「容量の制約を受けずにデータを保管できる」というクラウドの特性を活かした、すばらしい事例だと思います。
事例2:世界中どの地域でも安定したITインフラを確保できる
もう1つの事例は、ITインフラが不安定な海外で、国をまたいでクラウドを利用し、安定的なシステムを構築した事例です。
ロート製薬さんは、カンボジアやミャンマーといったアジア各国での事業展開を進めています。しかし、アジア各国でITインフラを確保するのは容易ではありません。同社もデータセンターと契約し自社で運用を始めてみると、電源に問題があったり、回線を引き込んでもカラスにいたずらされて切られてしまったり(!)と、大変な苦労をされたそうです。
そこで同社は、AWSのシンガポールリージョンにシステムを構築し、タイやカンボジアからVPN(回線は3G[1])を引いてシステムを使うことにしました。これにより、ITインフラが整っていない地域でも安定的にシステムを運用できるようになりました。進出リスクの低減とリードタイムの短縮にも大いに役立っているとのことで、クラウドが事業のグローバル展開を加速させた好例といえるでしょう。
[1] 物理的な回線より3Gのほうが安定しているそうです!
まとめ
一度でもクラウドを使ったことがある人ならお分かりのとおり、クラウドは非常に使い勝手もよく展開のスピードも速いので、一度使い始めれば誰もが「どんどん使っていこう」という姿勢に変わります。これは個人でも企業でも同じです。
一方で、クラウドは「使い始めるまで」に大きな壁が立ちはだかります。クラウドを利用するという合意を得るのには、企業の体質・文化やそのときの上司の性格など様々なものがハードルになって、かなりの時間と労力がかかるケースが多いようです。しかし、米IBMが公開している「クラウドを使っていない企業は使っている企業と比べて収益が半分であるというレポート」が示すとおり、ほとんどのケースにおいて、クラウドを使って企業のインフラを効率化し収益を上げていくという方向性が有効に機能するものと考えられます。
本稿をご覧になったみなさんが、これをヒントに上司の説得や会社への提言を行い、「クラウドの導入で会社が良くなった」と感じていただければ、本稿の目的は達成したものと思います。ぜひ皆さまからの嬉しいご報告をお待ちしています!
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