政府も市民もハッカーも一体になったシンガポールのテクノロジーイベント
FOSS ASIAはスマートシティ、スマート国家を掲げるシンガポールのもと、ユーザ会も企業も行政も一体になった、オープンなテクノロジーイベントです。
データベース、プログラム言語、ハードウェアなど、テクノロジー全般にわたり4日間続くカンファレンスです。RubyKaigiやLLイベント、YAPCなどのようなイベントが合同で開かれるようなものだと考えるといいかもしれません。
初日は大きいホールでカンファレンス、2日目からの3日間は小さい会場に分かれて数十人のワークショップが行われるのですが、ここに 掲載されている(PDF)初日のテーマだけでも、
- シンガポールのオープンテクノロジー(RedHat)
- オープンソースハードウェアによるラップトップ(bunnie fuang)
- Linuxのディストリビューションはどこから来てどこへ向かうのか(RedHat)
- フリーソフトの力:どうやって15000のクライアントをWindowsからLiMuxにリプレースしたか(CronusConsult)
- Maria DB(MariaDB)
- Firefox OS(Mozilla)
など、起業からコミュニティベースまで、多岐にわたります。
シンガポールらしいと言えるのは、「Smart Nation」というセクションで、今も現役でPythonやJavaScriptを書いているギーク大臣ことVivian Balakrishnan大臣が、天気/バスの運行情報/GIS情報などの政府系/大企業系データのAPIを積極的に開示し、「スマートネイション」を作ろうとしている取り組みをプレゼンし、エンジニアたちとディスカッションしたことです。
Vivian大臣は、「シンガポールって政府の統制が厳しいことで知られているし、"オープン"から遠い国なのでは?」という欧米人ハッカーからの質問に、「僕らはそれ以上に、お金儲けが大好きな国として知られていると思うんだけど、僕も首相もオープンソースやデータの解放がすごく経済に役立つことを知っている」と、ギーク大臣らしい返しをして喝采を浴びていました。
大規模なイベントですが、参加者の多くはLaptopの天板をステッカーで埋め尽くし、「Mongo DB」や「Pycon」などのテクノロジー系のTシャツを着たハッカーたち。
僕の隣に座った欧米人の女性は、初日のカンファレンス中ずっと、17インチぐらいあるデカいLaptopにデンマークのゲーミングデバイスブランドSteelSeriesのメカニカルキーボード(廉価版でも1万円以上する)をのせて、Sublime Textでコーディングしていました。
イベント全体は、ここまで書いてきたような大きいセッションばかりでなく、2日目からは20~30人ぐらいの小部屋に分かれてのグループセッションやワークショップが行われ、アットホームな雰囲気です。
bunnieは、2006年に発表されたchumbyというIoTのはしりみたいなLinuxベースのガジェットを開発したハードウェアエンジニアで、その後も世界で最初にXboxをハックしたことで知られる、伝説的なハッカーです。MIT研究者としての深セン関係のプロジェクトに携わりつつ、シンガポールに住んでいます(彼の家が僕のオフィスのそばなので、よく会います)。
このようなハードウェア寄りの内容もあれば、1日まるまるみっちりPython関係のセッションだけの部屋もあります(タイムテーブルPDF)。
久々に「技術系イベントに出たなあ」と感じた楽しい4日間でした。
ハッカースペースシンガポール(以下、HackerspaceSG)はこのイベントのオーガナイズに全面的に協力していて、IDA(情報通信政策を担当する省。日本だと総務省や経産省にあたる?)やシンガポール国立大といった大組織と並んで、パートナーとしてクレジットされています。