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システム環境の明後日を支える新技術

モノのインターネット(IoT)の不都合な真実

システム環境の明後日を支える新技術/番外編(1)

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IoTに取り組むということ

 繰り返しとなりますが、「モノのインターネット(IoT)」と呼ばれ、あたかも新しい市場が急激に作られていっているようにみえますが、その内容はとても古い歴史を持つ市場です。「インターネット家電」「IPv6家電」「すべての電球にIPアドレスを!」「ペットに携帯端末を!」「M2M(Machine-to-Machine)!」「電子カルテ」「電子タグ」など、本当にたくさんの新規参入取り組みがありました。

 ここでは本田技研工業株式会社が2002年にサービスを開始した自動車向けテレマティクスサービス (インターナビ・プレミアムクラブ) を題材にして、いかにしてゼロから市場を作り上げていったかをみていきましょう。図9は、同サービスの加入者数推移をグラフ化したものです。現在でこそ200万加入を誇るサービスですが、その歩みは実に11年以上を経過しています。

図9. M2M/IoT先行事例および市場成長の考察
図9. M2M/IoT先行事例および市場成長の考察

 サービス開始から会員数が10万人を超えるまで2年、100万人になるまでは、さらに5年という歳月を費やしています。昨今のソーシャルゲームやチャットサービスは会員数が1000万人を軽く超える場合もよくありますが、やはり比較するには気が引ける数字ではあります。IoTに限らず、デバイスとサービスを同時に売るというビジネスモデルは、オンラインでダウンロードするだけで完結してしまうサービスとは比較にならないほどの苦労があるものです。

 やや脱線になりますが、IT産業における情報インフラの市場成長について同様の傾向が見られます。

 図10は、弊社さくらインターネット株式会社における「さくらのVPS」加入者数推移をグラフ化したものです。

図10. 情報インフラにおける市場成長の考察
図10. 情報インフラにおける市場成長の考察

 ゼロからサービス開始し、サービス加入者数が6万7000人に達するまで、実に4年の歳月が流れています。

 IT産業といっても、すべて均一に市場成長を達成できるわけではありませんが、デバイスとサービスを同時に売るビジネスモデルの傾向が、やんわりとつかめたのではないでしょうか。

 私たちが10年以上の粘り強い市場成長に取り組んだ先行事例から学べることは多くあります。図11に絵に描いてまとめますが、それは「数年単位で継続的に事業に取り組む経営姿勢と投資準備が必要」ということです。

図11. 粘り強い市場成長に取り組んだ企業の先行事例から学べること
図11. 粘り強い市場成長に取り組んだ企業の先行事例から学べること

 世の中にはバズワード(はやり言葉)ばかり追いかけてつまみ食い的にサービスを開始し、手痛いビジネス上の失敗をするケースも確かにあります。しかし、一度ことに取り組むということは、産業構造やビジネスモデルによって、とても長い日数を粘る強さが必要になるのです。

 さてここまで、「モノのインターネット(IoT)の不都合な真実」と題して、私たちが置かれているIT産業の最前線を考察してきました。読者の皆さまに一つでも何かお役に立っていましたら幸いです。

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この記事の著者

松本 直人(マツモト ナオト)

1996年より特別第二種通信事業者のエンジニアとしてインターネット網整備に従事。その後システム・コンサルタント,ビジネス・コンサルタントを経て2010年より,さくらインターネット株式会社 / さくらインターネット 研究所 上級研究員。(2016年より一時退任)研究テーマはネットワーク仮想化など。3~5年先に必要とされる技術研究に取り組み、世の中に情報共有することを活動基本としている。著書: 『モノのインターネットのコトハジメ』,『角川インターネット講座 ~ビッグデータを開拓せよ~』など多数。情報処理学会 インターネットと運用技術研究会 幹事

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