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システム環境の明後日を支える新技術

モノのインターネット(IoT)の不都合な真実

システム環境の明後日を支える新技術/番外編(1)

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私たちと機器をつなぐデータ通信規格

 私たちはさまざまなウェラブルデバイスや家庭用端末を日々使っています。家庭用無線LANルーターはもとより、ヘッドフォン、時計、脈拍計、体重計、電球、スマートフォンに至るまで、市場に出回る種類は日々増えていっています。

 図4は私たちと機器をつなぐデータ通信規格を整理したものです。あくまで普段使いのデータ通信規格であるBluetoothやWi-Fiに焦点をあてていますが、ご家庭で身のまわりにあるデバイスと、無線LANルーターのまわりにあるデバイスにおおよそ分かれてきます(頭部にたくさんのデバイスを付ける方がいるかは謎ですが……)。

図4. 私たちと機器をつなぐデータ通信規格とその整理
図4. 私たちと機器をつなぐデータ通信規格とその整理

 これらのデバイスが生成するデータは、インターネットの向こう側でグラフ化されるなど、IoTと呼ばれる以前からあったかと思います。最近よくある技術用語がそうであったように、IoTも定義があいまいでありながら過大評価され混乱の中を突き進んでいき、最後には市場の失望が広がっていかないかを筆者なりに心配しています。

 とはいえ、もう少しIoTを取り巻く環境について整理していきましょう。図5はIoTを支える機器および通信コストをざっくりと集計したものです。聞きなれない家庭用電力管理システム(HEMS:Home Energy Management System)から、さらに聞きなれない卸FOMA特定接続プラン 基本使用料まで、「これで何が分かるんだ……?」と読者の方が少し混乱されるかと思いますので詳しくみていきましょう。

図5. IoTを支える機器および通信コスト
図5. IoTを支える機器および通信コスト

 まず、図5で示したかったのはIoT導入にあたり、産業別にどれだけのコストがかかるか」です。家庭用電力管理システム(HEMS)は電気・建築設備向け産業の機器で、家を新築する際に取り付けられ、太陽電池や節電設備などさまざまな「家」に関わる電力管理を行ってくれます。電気・建築設備向け産業で「家」という大きな買い物になるので、その金額も私たちが気軽に何かを買うようなものではありません。このカテゴリーに近しい価格帯に組込み向けIoTゲートウェイがあります。その名のとおり、さまざまな産業向け組込み機器と連携することを意図して作られたものであり、安価なSIMフリースマートフォンよりは高価な価格帯になっています。

 その下に位置するのが、私たちが普段使いする家庭用デバイスたちです。ここでは「BluetoothとWi-Fiに対応したもっとも安価な機器」を種類別にリストアップしました(種類別の最低価格帯)。

 さらにその下は、実際にIoTとしてデータ生成が行われた場合、どれぐらいの価格帯の通信費がかかるか、また通信費の最低価格帯を決めている要素はなにかを示したものです。

 ここに書かれている「インターナビ通信費(パケット代)」とは、本田技研工業株式会社が 2002年にサービス開始した自動車向けテレマティクスサービス (インターナビ・プレミアムクラブ)で渋滞情報や交通情報を共有する際に発生する通信費用です。インターナビは会員から自動的に収集される走行データを活用することで、交通情報から渋滞を予測し的確なルートを誘導するために使われています。前述の通信費は、その走行データをサーバーへアップロードする際の費用となるのです。

 卸FOMA特定接続プラン基本使用料は設備を保有するモバイル通信キャリアが、さまざまな低価格プランを提供しているMVNO(仮想移動体通信事業者)向けに回線を卸売りする際に、1回線加入ごとに最低必要となるもっとも小さい基本料をピックアップしたものです。つまり、モバイル回線といえども、限りなくゼロ円に近づくような価格帯でIoT向けにサービス展開はできないということが分かります。

 なかなか頭を回転させるのが、大変かとは思いますが、さらに進めます。

 次に紹介するのは、M2M/IoTにおけるラストワンマイルの分類と考察をまとめたものです。この数字は総務省 総合通信基盤局 番号企画室が平成23年に資料公開した「想定されるM2Mサービスの需要母体」を使い、現在利用可能なインターネット接続性ごとに分類したものです(図6)。

図6. M2M/IoTにおけるラストワンマイルの分類と考察
図6. M2M/IoTにおけるラストワンマイルの分類と考察

 整理に際して、「製品本体よりも高価な通信設備は利用されないが、情報セキュリティ対策として閉域網は使われる」という仮説をもとに分類しています。ここまでの整理で、古くはM2Mと呼ばれ、今はIoTと呼ばれる市場の外形が見えてきたのではないでしょうか。

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この記事の著者

松本 直人(マツモト ナオト)

1996年より特別第二種通信事業者のエンジニアとしてインターネット網整備に従事。その後システム・コンサルタント,ビジネス・コンサルタントを経て2010年より,さくらインターネット株式会社 / さくらインターネット 研究所 上級研究員。(2016年より一時退任)研究テーマはネットワーク仮想化など。3~5年先に必要とされる技術研究に取り組み、世の中に情報共有することを活動基本としている。著書: 『モノのインターネットのコトハジメ』,『角川インターネット講座 ~ビッグデータを開拓せよ~』など多数。情報処理学会 インターネットと運用技術研究会 幹事

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https://codezine.jp/article/detail/8770 2015/06/25 14:00

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