IoTの背景と課題
6月3日に催されたセッション「米国におけるIoT/Big Data & Analytics活用事例の最前線~先進事例に学ぶIoTのベストプラクティス」では、米Amazon Web Services プリンシパルソリューションアーキテクトのミハ・クラーリ氏がIoTの概要を説明しました。
「IoTの定義」について
まずは「IoT」そのものの定義についての再確認から。クラーリ氏は「少なくとも一つのコンピューティング機能を持っている、複雑なデバイス」「ネットワーク側に縛りがある、非常に小さな、シンプルなものであること」「数千台、またはそれ以上の数量で展開されるもの」「人的なやり取りなしに、クリティカルな用途で利用されるもの」とその定義について紹介。「現在に至るまでの過程で、マシンのサイズは改善を繰り返し、環境の中で小さなマシンやデバイスに発展進化してきた。スクリーンもキーボードもない。IoTの世界ではそういうデバイスに対応していかなければならない。これがM2M(Machine to Machine:機器間通信)の時代だ」と、これから来るであろうIoTの時代とはどういうものかについて端的にコメントしました。
IoTアーキテクチャにおける「4つの課題」
IoTを活用したアーキテクチャを構築するにあたっての注意点を、クラーリ氏は「4つの課題がある」と述べた上で解説しました。
1つ目は「IoTコマンドにおける課題」。IoTアーキテクチャでは、まず何より「正確なコマンドを送信すること」が求められます。数十万もの大量のデバイスが必要とする、正確かつ最低限のコマンドを、トランザクション処理の過程で最小コネクションで送らなければなりません。
2つ目は「IoTデバイスDevOpsにおける課題」。IoTアーキテクチャでは、一度デバイスを稼働させてしまうと物理的な置き換えはもちろんのこと、再起動させることもできなくなります。だからこそ、ステージングや検証環境での入念かつ徹底的な検証作業が重要ですし、段階的に、そして繰り返し行われる更新処理に対応するために、さまざまな条件下でも稼働するインテリジェントな例外処理管理が求められます。
3つ目は「IoT 監査と承認における課題」。デバイスやユーザーがリソースにアクセスする許可を持っているかという「認証」プロセスについても、対応すべき課題です。「AWSでのアーキテクチャを考慮する場合、Cognitoが重要なサービスとなってくるだろう」とクラーリ氏は強調しました。
そして最後の4つ目は「IoTテレメトリーに関する課題」。テレメトリーとは"遠隔測定法"の意で、テレメーター(自動計測電送装置)を使って遠隔地の測定結果をコントロールセンターに送信することを指します。IoTの世界では、デバイスそれぞれがデータを送信する過程で接続が途切れる問題やデータの転送品質についても対応しなければなりませんし、ピークや落ち込みの波形を許容する柔軟性も求められます。
クラーリ氏は「これらの課題をクリアしていくことでセンサーは情報をつかみ、ストリームが情報を受け取って分析し、データが蓄積されていきます。データの小さな流れは小川に、そして河川に。データの大きな川になっていくのです」とコメントし、自身の発表パートを締めました。