SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

【夏サミ2017】セッションレポート

外部コミュニティへの貢献が、自社プロダクトの価値を高める理由――ソウゾウのエキスパートエンジニアが語る

【A-3】コミュニティ活動と企業の相互作用 ~コミュニティへの貢献と組織活動への還元~

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「簡単に」「手短に」の意識で、持続性の高いコミュニティとの関わり方が可能に

 ここから話し手が日高氏にバトンタッチされ、「貢献と還元を考える」ことをテーマに語られた。メルカリ/ソウゾウの多様なチャレンジを、どう一般化していくかといった内容だ。

 コミュニティへの貢献には大きく分けて、2つの形があると日高氏は話す。例えば、たくさんの人が集まるカンファレンスの開催・参加などは目に見えやすい形だ。一方で、技術書の頒布や技術ブログの執筆といったアウトプットもまた、一見分かりづらいがコミュニティへの貢献である。この2つの貢献の形について、日高氏は次のように整理する。

 「この2つは同期的・非同期的な活動と言い換えることができます。勉強会に参加することは同期的で、参加者の距離が近いこと1つのポイントです。もう1つ、技術書というのは、著者が知識を本の形でアウトプットしたもの。ブログなどと同様、非同期的な活動ですね。コミュニティへの貢献には、勉強会に行くことだけではなくて、執筆活動を通じて新しい技術を普及することも含まれると思います」

コミュニティの成長に必要な「同期的な活動」「非同期的な活動」
コミュニティの成長に必要な「同期的な活動」「非同期的な活動」

 では、実際にコミュニティへ貢献するにはどのような取り組みを行えばいいのだろうか。日高氏は「直接開発と関係のないところで、コミュニティへの貢献を始めるのはなかなか難しい」と、多くの企業が抱える事情に理解を示したうえで、「プロダクト開発を見つめ直す」ことから始める方法を提案した。

 開発を通じたコミュニティへの貢献には、「どこまでが自分のプロダクトか」などの問題が伴う。現在、プロダクト開発はOSSを使わずにやりきることは難しく、すでに多くの開発で使われているという実績もある。どこの開発現場でも、OSSを活用したプロダクトが1つは存在しているだろう。そんな中、ライブラリやOSSは自社の手が届かないところで自由に開発が行われ、機能が追加される、と考えるのが一般的だ。自社の開発で利用している状態とかい離してしまうことも少なくない。「結果、このような構図になり、「ライブラリ」や「OSS開発者」といった外部のコミュニティと「社内」の関係は、分断されてしまいます」と日高氏は下図を示した。

一般的なプロダクトの領域
一般的なプロダクトの領域

 しかし、実際にコミュニティとうまくやっていくためには、そのやり方をほんの少し変える必要があると日高氏は話す。プロダクトを、下図のような価値の領域に設定することが重要だという。

いずれもプロダクトの価値を構成している、という考え方
いずれもプロダクトの価値を構成している、という考え方

 「自分の会社の価値やコアを支えるモジュールはあるけれど、その中には必ずOSSを取り込んでいるはず。ならば、そのOSSの実装も含めて価値あるプロダクトを作っていこう、といった考え方ができます。いずれもプロダクトの価値を構成しているパーツだ、との見方が、昨今のOSSコミュニティとの付き合い方においては大事だと思います」

 日高氏はこのように話し、この図の考え方を用いることでモチベーションコントロールしやすくなると述べた。また、OSSプロダクトの作者の方とお話をすると「プルリクエストをくれるのはうれしいが、それだけが貢献ではない」ということを強く思っていると感じるという。では、どういったことが貢献につながるのか。

 「貢献の形はさまざま。例えば、欲しい機能や不具合の報告、プロダクトで使った際の不具合の挙動報告、リリースに対する動作確認など、『イシューを立てる』『作者との対話をする』などのアウトプットで全然構わないんです。むしろ、それが望まれています。これなら、皆さん、自分でもできると思っていただけるのではないでしょうか」

 このように問いかけ、まずはできることから取り組んでみることで、コミュニティへの貢献の、初めの一歩になることを強調した。

 「組織は簡単には変えられないですが、コミュニティへの貢献を徐々に実施していくことで、少しずつエンジニアリングしやすい方向に向かいます。エンジニア自身の知見が蓄積されていき、社外からもフィードバックを得られる。われわれの会社ではこれが重要だと考え、エキスパートが技術コミュニティにコミットメントする取り組みをしていますが、これはわれわれの会社にしかできない、特別なことではありません。各エンジニアがまずはやってみることが、有効な手段だと考えています。そうすることで、新しい技術が根付いていくと考えていただければと思います」

 日高氏は最後にこう語り、セッションを締めくくった。

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【夏サミ2017】セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/10414 2017/09/15 14:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング