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及川卓也氏と語ろう! イノベーティブなサービスを生み出すクラウド活用(AD)

技術選定にコストをかけるのは意味がない? 及川卓也氏とIBM大西彰氏が語る「クラウドはまず使ってみる」ことの大切さ

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 IBMの競合を含む、さまざまなIT企業で経験を積んできた及川卓也氏と大西彰氏。大西氏は2017年10月より日本アイ・ビー・エムでデベロッパー・アドボケイトのリーダーとして活動している。一方の及川氏も昨年6月に独立。現在はフリーランスとしてさまざまな企業の製品・技術戦略などの支援を行っている。その一貫でIBM Cloudにも注目し、エンジニアへ向けて魅力を伝えているという。及川氏、大西氏の2人はどんなキャリアを築いてきたのか。そして、クラウドを筆頭に目まぐるしく登場するテクノロジーをいかに選択・活用すればよいのか――エンジニアとして活躍し続ける秘訣について語り合った。

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IT業界に入り約30年

及川卓也氏(以下、及川) まずはお互い自己紹介から。大学卒業後、DECに入社し、研究開発に従事しました。その後、マイクロソフトに転職し、日本語・韓国語版Windowsの開発マネジャーに就任。Windows Vistaの開発に携わりました。Googleでは検索系のサービスのプロダクトマネージャやChromeのエンジニアリングマネージャを経験。2015年11月より、プログラマのための技術共有サービス「Qiita」などを提供するIncrementsでプロダクトマネージャを1年半ぐらい務めた後、2017年6月に独立しました。現在はいろんな企業の製品・技術戦略やエンジニアリング組織づくりの支援を行っています。

フリーランス エンジニアリング・プロダクトアドバイザー 及川卓也氏
フリーランス エンジニアリング・プロダクトアドバイザー 及川卓也氏

大西彰氏(以下、大西) 私は及川さんとキャリアの形成が違います。まず高校を卒業後、東京に上京して働きながら2年間浪人して、1989年から電気通信大学の夜間主課程に進み、昼間は働き、夜は学業という学生時代を過ごしました。浪人生活の間、肉体労働ばかりしていたのでITに関わりたいと思ったんです。

 そんなとき、大学の入学直後に見つけたC言語プログラマのアルバイトを始めたことから、IT業界のキャリアが始まりました。その後、さまざまな経験を重ね、2000年4月からコンピュータ・アソシエイツ(現・CAテクノロジーズ)のプリセールスやコンサルタント、国際化のアーキテクトなどを経験して、開発に飽きていた矢先の2005年9月にマイクロソフトのエバンジェリストに就任しました。大手SI担当、Channel 9、Silverlightテクニカルマネージャー、Windows Phone、Windows、Xboxアプリのエバンジェリストを経験した後、ISV施策のマネジャーに2年間従事。昨年夏頃にIBMから声がかかり、10月に入社しました。

 及川さんと出会ったのは、マイクロソフト時代ですよね。マイクロソフトの動画サイト「Channel 9」が立ち上がって2年目ぐらいに、及川さんと出会って相談したことを覚えています。

及川 社外の人と対談したら面白いのではと提案して、番組に出させてもらいましたね。

日本アイ・ビー・エム株式会社 デジタルビジネスグループ デベロッパー・アドボカシー事業部 Tokyo City Leader 大西彰氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 デジタルビジネスグループ
デベロッパー・アドボカシー事業部 Tokyo City Leader 大西彰氏

IBMと開発者との壁を壊していきたい

大西 今、私はデベロッパー・アドボカシー事業部で、City Leaderという仕事に従事しており、日本ではChief Digital Officerにレポートしつつ、職責上の上司は米サンフランシスコにいます。IBMでは世界10都市でアドボケイト活動しており、私を含めいずれもグローバルチームに所属しています。

及川 マイクロソフト時代のエバンジェリストとIBMのアドボケイト活動では役割が違うように思います。具体的に、デベロッパー・アドボケイトは何をしているのでしょう。

大西 開発者の明るい未来を作る仕事です。開発者と対話をし、信頼を得て、テクノロジーを伝えたり、困っていることを聞いたり、いろんなコミュニティに顔を出したりして、特定の製品担当ではなく、IBMの技術について知ってもらい、活用してもらい、開発者をヒーローにしていくことがミッションです。これまでもIBMは情報発信をしてきましたが、実際に開発者と話をしてみると、私たちの情報が届いていないことがわかりました。その状況を変えるために、このような組織が作られたのです。

及川 そうですね。確かに開発者視点ではIBMはまだまだ遠い存在に見えます。

大西 私もコミュニティとIBMには距離があると思っています。セグメントが分かれているというような。だからこそ私たちがコミュニティに溶け込んでいき、壁があるなら壊していきたいと考えています。

 今はまさにその転換期。ライトニングトークやセッションに登壇したり、懇親会で仲良くしたりして、とにかく手を変え品を変えながら、開発者の方と接点を増やしていこうと思います。これまでの開発者が持つ「高い」「ダークスーツのおじさん」「開発者が声をかけづらい」というIBMのイメージを変えていきたいんです。

大好評イベント「及川卓也氏とクラウドについてあれこれ語ろう」レポートを公開!

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オープンな開発者向けカンファレンス「INDEX」開催!

 INDEXとは、IBMが今年から始めるオープンな開発者向けカンファレンス。2月20日から22日にサンフランシスコで開催します。IBM製品やサービスに依存しない、オープンソースやあらゆる技術について触れ、学び、楽しむことのできる3日間です! 初日はハンズオンやワークショップ、2日目と3日目はMicrosoft、Google、AWS、Facebookなどさまざまな技術エキスパートによるセッションを聞くことができます。

IBMのオープンソースへの取り組みはもっと知られるべき

及川 マイクロソフトも以前は開発者と距離のある会社だったと思います。しかしCEOがスティーブ・バルマーからサティア・ナデラに変わり、オープンソースにコミットするなど、今ではだいぶ様変わりしました。以前にも増してデベロッパーフレンドリーな会社となりました。IBMも同じような道を歩んでいる気がします。

大西 マイクロソフトは変革に10数年かかりましたが、IBMはその期間をもう少し短縮できると考えています。というのも一部のギークにしか知られていませんが、IBMは昔からオープンソースにコミットしているんですよ。

及川 例えばIBM CloudはOpenStackをベースにしているなど、ありとあらゆるところにオープンソースを使っているんですよね。オープンソースを使っていることによるメリットが外にはあまり理解されにくいように思います。

 例えば、IBM CloudのPaaSのベースはCloud Foundryですが、Cloud Foundryを使っているという良さが訴求し切れていないじゃないかと。パブリッククラウドを使わず、自社でインフラを構築している大手IT企業は一杯ある。楽天やヤフーなどもその一例です。彼らは社内でCloud Foundryを使っており、そのツールをGitHubで公開しています。例えばそういう企業と共に、Cloud Foundryコミュニティを盛り上げると、IBM Cloudの認知も高まり、IBMがオープンソースにコミットしていることも開発者に伝わると思うんです。やっているかもしれないんですが、あまり聞こえてこないですね。

大西 IBMにはオープンソースにコミットしているチームがあり、彼らも貢献しているのですが、なかなかその情報が届いていないんですよね。そこで私たちのチームが開発者の中に溶け込んで行き、壁を壊していきたい。今はまさにその転換期だと思っています。

働き方の変化によって気づいた開発の知見

及川 Increments時代は今のフリーランスの時と似たように自由な働き方をしていたので、変わらないのですが、その前々職や前職であるマイクロソフトやGoogle時代と比べると、変わりましたね。

 マイクロソフトやGoogleは組織が大きいので、自分たちで一からほぼすべてのサービスや仕組みを作っていけます。しかし、そこまで体力のないスタートアップは、自分たちのコアとなるサービスや製品以外はありもののサービスを組み合わせる方が現実的です。つまり、自前主義ではなく、自分が本当にこだわって作るべきところと、すでにあるサービスを見つけてさっさと作る部分の切り分けをすることが求められるんです。そこで、SaaSなど、使えるものはどんどん活用していくということが必要となります。自分のフリーランスとしての活動でも、さまざまなサービスを活用するようになりましたね。

大西 私は1年前に品川区から静岡市に移住して新幹線通勤を始めました。このような働き方をすることで、時間の使い方が大きく変わりましたね。1日の始まりに段取りを考えるのですが、時間という制約ができました。制約があると、今まで見えなかったものが見えてくるんです。山ほどサービスがあって何を使ってよいかわからない人も多いと思うのですが、使う側の人に制約があると、使うべきサービスが見えてくるのと同じだと思います。

及川 Googleの元副社長だったマリッサ・メイヤーも「Creativity loves Constraints(創造性は制約を好む)」と言っていますからね。私はこの言葉が好きです。

大西 何をやりたいのか、そしてそれを実現する方法を見つける方が生産的なのに、多くの日本の開発者はAWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)、IBM Cloudを比較することから始めてしまうんです。クラウドはまず使ってみることだと思うんです。使うと結果が出ますからね。

及川 そこは同意ですね。どのインフラを使うかなど、気にしなくてもいいと思います。私がスタートアップのエンジニアに聞かれたときには次のようにアドバイスをしています。「そのアイデアは3か月後にはゴミになっているかもしれない。だから今、技術選定に必要以上にコストをかけるのは意味がない。もしスケールして今の技術ではダメであれば、作り直せば良い」と。

 そしてもう一つが自前主義にこだわるなということ。PaaSやBaaSなど、ありもので楽できるところはどんどん使うことを勧めています。最初から当たることを考える必要はないんです。当たるものを育てていけばよいですし、アクセルを踏める段階になったら、改めて自分たちのサービスに適している技術は何かと見直してみればよいのです。技術的負債となってしまわないようにするタイミングは難しいですが、割り切りは必要だと思います。

 こだわらなくて良いとは言いましたが、ユーザーからフィードバックをもらえる仕組みを作ることは必要です。現在のパブリッククラウドはそのような仕組みを持っています。

IBM Cloudは使いやすいのに「もったいない」

及川 IBM Cloudはすごく使いやすいサービスだと思います。IBM Cloudライト・アカウントならクレジットカードの登録はありません。PoC(Proof of Concept:概念実証)をさくっと作るような時に便利に使えると思います。また、このライト・アカウントでは「ライト・プラン」が適用されたサービスを期間制限なく無料で使うことができます。Watson APIもほとんどがライト・プランになっています。マシンラーニングやコグニティブ・コンピューティングを試してみたいという企業にとっては、すごく使いやすいのではないでしょうか。

 一方で、もったいないなと思うのは、開発者を相手にしてくれないと思えるようなところが多い点です。オンラインのドキュメントが整備されているようでされていないのもその一つ。またチュートリアルを進めていくと、IBM Cloudのサービス名が以前のままだったり、APIがなかったりするんです。後者は統廃合が進んでいるから仕方がないのですが、何か深く知ろうとすると、法人契約が必須かと思うような案内にぶち当たる。でも実態はそうではないんですよね。

大西 IBM Cloudはベアメタルから含めてPaaSのレイヤーまで教科書通りに作られているクラウドサービスです。しかもそれがオープンなテクノロジーで構成されている。それが特長です。例えばマシンパワーが欲しいというのであればベアメタルでCPU、ストレージ、メモリ、さらに必要であればGPUなどWebからハードウェア構成を決めて、お望みのパフォーマンスを満たせるようなマシンをオーダーすればいい。もちろんベアメタルサーバーと既存のオンプレミスとの間にDirect Linkでプライベートなネットワークも敷くことができる。いろんなインフラを組み合わせて、さらにPaaSレイヤーにあるWatson APIやさまざまなサービスを取り入れてシステムを作っていけるところはIBM Cloudの面白さだと思います。及川さんが指摘されたドキュメントについても、整備しつつあります。今後はGitHubで更新していくようになる予定です。

及川 IBM Cloudの強みとしては、パブリックとプライベートの両方に対応できるところです。例えばプライベートクラウドをIBM Cloud Private、もしくはCloud Foundryで構築すれば、後にパブリックに移行することも理論的には可能です。プライベート、パブリックの境目なく同じ技術が使えるのは強みだと思います。

大西 しかもIBM Cloud Privateは多くのオープンソースで構成されているため、製品に含まれる各オープンソース技術にもれなくIBMのサポートが付いてくる。それもIBM Cloudを活用するメリットだと思います。

及川 そういったIBM Cloudの強みを、これからどのように伝えていく予定ですか。

大西 IBMは開発者を大切にしており、クラウドを利用したアプリ開発を加速させるためのお手伝いに注力していることを伝えていきたいと思います。例えば「声で操作するVRアプリを作りたい」というのであれば、「IBM Code」というサイトを見れば、その参考になるパターンをソースコード付きで紹介しています(声で操作するVRアプリのパターンはこちら)。

 こういう風にするとうまくいくよ、これはうまくいかないよという体験や知見を共有できようにしているので、開発者の皆様の試行錯誤の時間を削減できると思います。

クラウドを使いこなし、すばやく結果を出すことが生き残りの秘訣

大西 クラウドを使いこなすためには、先ほど紹介したIBM Codeのコードパターンを参考にすることがおすすめです。84パターンぐらいありますが、理解しなくてよいので、興味のある技術から絞り込んで、とにかく眺めてほしいと思います。ドキュメントは英語のみなのですが、英語が苦手というのであればFlowに示されている構成図やGitHubに公開されているソースコードを見てください。そうすると、「この組み合わせでこういうことが実現できるんだ」と理解できると思うんです。さらにソースコードをダウンロードして、一部を改造したりして好きなように動かしていく。そして「デプロイのために、ここはこういうスクリプトを使っているのか」というような知識を獲得していくんです。習うより慣れよ、あっという間にクラウドをバリバリ使えるようになると思います。

及川 IBM Cloudはベンダーロックインが怖い人にもおすすめできます。ローカルでNode.jsやRailsで作ったサービスをみんなに見せたいというときなど、IBM Cloudにアカウントを作ってリージョンを割り当てれば、CFコマンド一つですぐにクラウドにアップでき、動かすことができます。こういうクラウドの使い方は、今まではHerokuの独壇場でしたが、IBM CloudはHerokuと同じぐらい使いやすいですね。

 またIBMでは、APIのサンプルをGitHubで公開しており、それをIBM Cloudにデプロイすることができるようになっています。さらに、リポジトリやWebエディターとしても活用できるIBM Cloud DevOps Servicesも提供しています。もし慣れたエディターでサンプルを修正したいというのであれば、GitHubから自分のリポジトリに持ってくることもできます。そういった使い方をしていくことで、クラウドを使いこなしていくことができると思います。

 今は、クラウドを使うべきか否かを判断する時代ではなく、クラウドは当たり前になり、マルチクラウドを検討する時代にきていると思います。確かにマルチクラウドだと認証や課金がバラバラになってしまい面倒ですが、例えばアナリティクスはGCP、コグニティブはIBM Cloudというように「この機能はこのクラウドサービス」と、組み合わせて使うことが当たり前になると考えています。今はAWSを使っていても、それだけしか使えないと今後、エンジニアとして生き残っていくのは難しいのではないでしょうか。

大西 現状、日本でクラウドというとIBM Cloudは候補にも挙がらないのではないかと思っています。その状況を変えることですね。IBM Cloudはベンダーロックインさせられない、オープンなクラウドです。しかもIBMはオープンソースにもコミットしています。オープンソースに親しんでいる開発者の方であれば、馴染んでいただけると思うサービスです。

 IBMはサービスをブラッシュアップし、開発者の生産性に寄与するよう、いろんなチャレンジをしていきます。マッシュアップ感覚でマルチクラウドの一つの選択肢として、IBM Cloudを使ってほしい。ありものを使って早く結果を出す。それがこれからのマルチクラウド時代に生きるエンジニアに欠かせない条件だと思います。

大好評イベント「及川卓也氏とクラウドについてあれこれ語ろう」レポートを公開!

 及川卓也氏を交えて、AWS、Azure、GCP、IBM Cloudの使い所やマルチクラウドの是非について語り合ったイベントの詳細レポートを公開しました! 及川氏の語るエンジニアの生存戦略や、AIやブロックチェーンを実現するためのIBM Cloudの機能についてのセッションも押さえた、すべての開発者必見のレポートです。

オープンな開発者向けカンファレンス「INDEX」開催!

 INDEXとは、IBMが今年から始めるオープンな開発者向けカンファレンス。2月20日から22日にサンフランシスコで開催します。IBM製品やサービスに依存しない、オープンソースやあらゆる技術について触れ、学び、楽しむことのできる3日間です! 初日はハンズオンやワークショップ、2日目と3日目はMicrosoft、Google、AWS、Facebookなどさまざまな技術エキスパートによるセッションを聞くことができます。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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