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アプリ開発には「おもてなし」が必要だ! ゲーミフィケーションに学ぶ、面白さの伝え方【デブサミ2018 関西】

【A-6】ゲーミフィケーションエバンジェリストが説く、アプリ開発で見落としがちな「おもてなし」とは~面白さを伝える × 面白く魅せる~

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2018/10/19 14:00

 スマートフォンの普及に伴い、多くの企業がアプリを活用したITビジネスの立ち上げに挑戦している。しかし、ユーザーから使い続けてもらえるアプリはほんのわずか。ほとんどはすぐに飽きられ、いつの間にか忘却の彼方に消えてしまう。では、人気の出るアプリとそうでないアプリは何が違うのか。その解が「ゲーミフィケーションとおもてなし」にあると考えるのが、株式会社ナノコネクトだ。本セッションでは、ゲーム理論を活用する同社のノウハウをベースとし、面白いアプリやサービスを作るコツについてゲーミフィケーションエバンジェリストの仲 功児氏が解説した。

株式会社ナノコネクト ゲーミフィケーション エバンジェリスト 仲 功児氏
株式会社ナノコネクト ゲーミフィケーション エバンジェリスト 仲 功児氏

おもてなしが上手なサービスの代表格は「ゲーム」

 ゲーミフィケーションエバンジェリストは、ゲーミフィケーションの手法を多くの人に伝え、サービス開発のプロセスに組み込むといったことを行うという。仲氏は同職らしい「遊び」を活用してセッションを開始した。

 「これから、3種類のスライドをみなさんに見ていただきたいと思います」

 次々に投影されるスライド。それぞれ、「Developers Summitのアイコン」「プードル」「株式会社ナノコネクトのロゴ」の画像がタイル状に何枚も並べられていた。あたかも、間違い探しのように。

仲氏が投影した3枚のスライド
仲氏が投影した3枚のスライド

 「みなさん、頭の中で何が起こっていましたか? 『3種類のスライドを見てください』と言われただけなのに、1つだけ違う画像がないか探していませんでしたか? 不思議ですよね。これは、今回解説するゲーミフィケーションの手法のひとつです。このように、人の感情や行動を動かすためのコツを楽しく紹介できればと思います」

 ユーモアあふれる導入の後、仲氏は「おもてなし」というテーマについて語り始めた。

 「『おもてなし』ってそもそもなんでしょうか――ごちそうを出すなどして心を込めて客を接待する、人を取り扱う、待遇することを意味しています。これを踏まえて、私たちはサービス開発におけるおもてなしを『お客さまの心に寄り添い、期待以上のサービスを提供することによって、心地良くなっていただくこと』と定義しています」

 では、おもてなしが上手にできるサービスとは何だろうか。その好例として、仲氏はゲームを挙げる。ゲームは娯楽であり、存在しなくても人々の生活には支障のないサービスの代表格だ。だからこそ、「いかにして手に取ってもらうか」「どうすれば続けてもらえるか」を徹底的に計算して作られている。

ゲームにはおもてなし要素がふんだんに盛り込まれている
ゲームにはおもてなし要素がふんだんに盛り込まれている

 サウンドやストーリー、ゲームシステム、インターフェース。それら複数の要素を洗練させ、組み合わせることで、ゲームはユーザーが迷わずに使えてワクワクできるものへと昇華されている。そして世の中にある多種多様なサービスにも、おもてなしの要素が必要であり、それを実現してくれるのがゲーミフィケーション理論なのだという。

ゲームデザインの技術を、サービス開発に応用する

 ゲーミフィケーションとは、課題の解決やサービス品質の向上にゲームデザインの技術を応用する手法だ。この手法では、ユーザーをひきつけるために「課題」「報酬」「交流」の3要素が重要だと提唱されている。

 「ロールプレイングゲームを例にするとわかりやすいと思います。モンスターが出てきました。倒しましょう。ミッションをクリアすると報酬がもらえます。仲間と交流して対戦や協力をしましょう、など……こうした要素があるとユーザーは定着しやすいとされています。これ以外にも、多種多様なサービスに『課題』『報酬』『交流』の3要素は用いられています」

 ナノコネクトではさらに研究を深掘りし、ゲーミフィケーションに必要な要素を以下の10個に細分化している。

ゲーミフィケーション10の要素
ゲーミフィケーション10の要素

 仲氏は、その中でも特に重要な2大要素である「平均ユーザーレベル」と「ファーストキャッチ」について解説した。

 「『平均ユーザーレベル』とは、『ターゲットユーザーの知識レベルや習熟度などを踏まえた具体的なペルソナを設定し、サービス内の伝え方や機能調整の判断を行うことで多数のユーザー満足につながる』という概念です。つまり、誰に対して提供するサービスなのかをしっかりと定義したうえで、適切に難易度などの調整を行うということ。逆に言うと、ユーザーの属性を正確に定義しなければ、ちぐはぐなサービスができてしまうことになります」

 例えば、子ども向けのサービスなのに漢字がたくさん使われているのは問題だ。また、チュートリアルが長すぎるゲームもかえってイライラしてしまう。懇切丁寧すぎても良くないということだ。

 では、どうすればサービスの平均ユーザーレベルを明確にできるのだろうか。その具体的手法として、「知識レベルとITリテラシーという2つの観点から、習熟度の平均レベルを定義すればいいのです」と仲氏は語る。

 「知識レベルは、一般知識と分野知識に大別できます。一般知識というのは年齢が上がるにつれて身につく知識のことで、分野知識は特定領域についての専門的な知識を指します。それとは別に、ITリテラシーも重要な軸です。これは、用語とアイコン(非言語的表現)に大別できます。こうした観点に基づいて想定ユーザーのペルソナを定義し、プロジェクトメンバー全員に共有していきます」

 もうひとつの要素であるファーストキャッチについても仲氏は解説する。これは、初回訪問ユーザーに対し、いかにしてサービスの魅力を伝えるかという概念だ。

 「サービスを始める前のユーザーの状態をダブルゼロ状態と呼びます。使い方と魅力の両方(ダブル)がわからない(ゼロ)という意味合いです。この状態のユーザーに対し、基本的な使い方を教えてサービスの魅力を理解してもらい、利用を継続してもらうことが重要となります。そして、ファーストキャッチのタイムリミットは『サービス開始から160秒以内』なのです」

 ここで仲氏は冒頭パートのネタばらしをした。投影した3つのスライドに関する部分は、およそ160秒に収まるように作っていたという。

 「ファーストキャッチに成功したかアンケートをやりたいのですが、あの話を聞いてその先も聞きたくなりましたか?――良かった、大半のみなさんがそう思ってくださったようです。ありがとうございます。ファーストキャッチに成功していました(笑)」

 さらに仲氏は、「この160秒間で、サービスの基本的な使い方や魅力をしっかりと体験してもらうことが重要」と続ける。体験型チュートリアルなどは、その考え方に基づいている。

 「さらにファーストキャッチの最後に『ここで終わるのはもったいない』とユーザーに思ってもらえるような仕掛けをちょっと入れておくのがコツです。サービスに愛着を持ってもらう必要があるので、サービスを続けるうえで重要な情報やアイテムなどを最後にユーザーへと渡してあげると、非常に効果が高いです」

 私たちが普段なにげなく楽しんでいるゲーム。そのデザイン手法の中には、サービス開発に応用できるノウハウが数多くある。ゲーミフィケーションを上手に取り入れていくことで、ユーザーを「おもてなし」し、使い続けてもらえるようなサービスを生み出せるのだ。そう総括し、終始なごやかに進行した本セッションは終了した。

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 株式会社ナノコネクト

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著者プロフィール

  • CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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