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仕事の「環境」も構築していますか? サラリーマンエンジニアが不確実な時代を生き抜くヒント【デブサミ2019夏】

【A-2】 今後の生き方についてサラリーマンエンジニアが人生半ばにして考えてみた

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2019/07/19 12:00

 日本のエンジニアは、企業に所属する“サラリーマン”として働いている人が多数派だろう。しかし、不確実な時代といわれる今、「これでいいのか」と漠然とした不安をもつ人は少なくない。今回登壇したディライトワークス株式会社の上野 淳氏もかつてはその一人だったという。そんな上野氏が40代後半となった時何を考え、何を決断したのか。変化の激しいゲーム業界に身を置きながら、「普通のサラリーマンエンジニア」として組織への関わり方を考え、エンジニア人生を見直すまでの経緯を紹介した。

目次
ディライトワークス株式会社 技術部テクニカルディレクター 上野淳氏
ディライトワークス株式会社 技術部テクニカルディレクター 上野淳氏

変化の激しい時代、快適な仕事環境を創るのはエンジニア自身

 「環境に流されるエンジニアになってはならない」

 そう冒頭から語り、「伝えたいことは以上」という上野氏は47歳。自身を「ゲーム業界に身を置く普通のサラリーマンエンジニア」と称し、「そんな私がこの半年ほどでさまざまなことを考えたこと、決心し実践してきたことを振り返り、今後の展望についてもお話ししたい。そうすることで、『不確実な時代』といわれる今、エンジニア人生に考えるきっかけを提供できればと考えた。決して転職のススメではない」と語った。

 従来より、エンジニアのキャリアや仕事人生は不確実の連続だ。上野氏がエンジニアとして社会人となった当時は「エンジニア35歳定年説」といわれていたが、今もなお技術の進化は加速し、とりわけゲーム業界は激しい変化にさらされ続けている。その中で仕事の環境づくりにおいては、組織の「マネジメント」が強調されることが多いが、上野氏は「組織をつくるのはエンジニア一人ひとりの選択であるはず」と語る。

 そんな上野氏がコンピュータゲームと出会ったのは小学6年生の頃。ファミコンが発売され、セガのゲーム機を購入したことがきっかけだという。大学では当時1億円以上と高額な「SGI Onyx」を使ってVRやコンピュータグラフィックを学んだが、ある日1回50円というアーケードゲームのグラフィックスのクオリティの高さに衝撃を受けたことで、ゲーム業界を就職先として意識するようになった。

 1996年にセガ・エンタープライゼス(当時)に入社し、ゲームエンジニアとして多くのプロジェクトに携わってきた。アーケードゲームを年に複数リリースしたり、PlayStation 2のタイトルを担当したり、さまざまな経験を経て10年ほど前からプロジェクトのプログラムリーダー、5年前からエンジニアセクションのマネジャーを務めた。そして2019年5月、ディライトワークス株式会社に転職し、技術部テクニカルディレクターを務めて2カ月になる。

 ゲーム業界自体は伸びしろのある業界だ。世界市場としても拡大傾向にあり、2018年で1387億ドル(約14.6兆円)に到達し、2022年まで年率9%の成長を見込んでいる。特にスマートフォンを対象としたゲームの伸び率は高く、特に世界で47.4%を占めるアジア圏での拡大が目覚ましい。中国と米国とがほぼ同じ4兆円の市場規模に対し、日本はその約半分。いずれにしても、まだまだゲーム業界の市場規模は拡大傾向にあるといえる。

 そして、成長しているのは市場だけではない。技術も急速に進化しており、特にスマートフォンを含むゲーム端末の高性能化は目を見張るばかりだ。ストレージの大容量化に加え、画面の高精細化、CPU、GPUなどの高性能化など、ありとあらゆる技術が進化している。初代iPhoneが登場したのは2007年。12年前と比べると進化の速度に改めて驚かされる。

 「その結果、以前なら容量や再現性などでできないことが多かったが、現在はほとんどのことができるようになってきた。そうなってくると、『もっとこうしたい!』と夢を見られるものが多くなり、エンジニアとしてはやるべきことが増え、大変なことになってきた」と上野氏はその功罪について語る。

ゲーム業界の変化とエンジニアの仕事やキャリアに及ぼす影響

 技術の進化速度も向上している上に、開発規模も拡大傾向にある。モバイルゲームも例外ではなく、かつて「ローリスク・ハイリターン」で手軽に作れたものであっても、いまや相当の人員と期間が必要になった。そうしたゲーム業界の環境変化に伴い、どのようなことがゲーム開発の現場で起きているのか。

 上野氏がまず挙げるのが「開発チームの巨大化」だ。開発に関わる人数が増え、タイトルによっては100人以上が携わることも少なくない。チームメンバーが増えると役割が細分化し、デザイナーに次いでエンジニアにも「専門職」が増えた。かつては「ゲームプログラマー」としてさまざまな部分に関わることが多かったが、近年ではインフラエンジニア、グラフィックスエンジニアなど、多様な肩書が見られる。

 「専門化・細分化されると、ノウハウの共有や獲得をチームや社内で行うだけでは十分とはいえない。そうなれば、外に転がっているノウハウを拾いに行くほかない」と上野氏は語る。「近年はブログなどで自分の体験を世の中に提供する人が増えている。そのノウハウや知見を活用させてもらうだけでなく、そこに集まる人がどんな関心や興味をもっているか、組織の壁を越えてネットワークを広げることが望ましい」というわけだ。

 そしてまた、「開発期間の長期化」も近年の特徴だと紹介した。アイデアややりたいことを夢見て「広げる」フェーズ、そこからどの技術を使ってどう実現させていくかを現実的に考える「進める」フェーズ、そして目的に応じた優先順位によって「畳む」フェーズ。大別して3つのフェーズで開発が成り立っているとして、リリースまでおおよそ3年間かかるものも増えてきた。

 以前ならプロジェクトを経験する中で自然にノウハウを体得すればよかったが、開発期間の長期化によって、同じ体験を得ることは難しくなった。1つのプロジェクトに3年かかるとすれば、3回で約10年もかかる。知見やノウハウを体験だけから得るのはもう限界といえるだろう。この解決策としても、やはり外に体験談を聞きに行くのがベストだという。中でも、上野氏が勧めるのは「質問して、自分の疑問に対して答えをもらう」という行動だ。

 さらに上野氏はもう1つ、「ゲームエンジンの寡占化も特徴的な変化」と指摘する。Unityなどはゲームの主要な処理を代行し効率化するための動力源であり、あくまで「目的を果たすための手段」だ。よいエンジンを使ったからといって面白いゲームになるとは限らない。なぜエンジンを使うのかといえば、浮いた時間で理論化できない「ゲームの面白さ」を試行錯誤できるからだという。


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