Material DesignをReactコンポーネントとして使う
さて、Material Designには仕様が明確であるという特性があるため、これを多くのエンジニアがUIライブラリとして実装しました。Google公式のライブラリもあれば、サードパーティのものもあります。ブラウザ向けにCSSとして再現されたもののほかに、コンポーネントの形にまとめられたものもあります。
ご多分に漏れず、React Native向けにもMaterial DesignのUI部品を定義した、Reactコンポーネント集がライブラリとして提供されています。それが今回解説するReact Native Paperです(図3)。
「Paper」という名前は、Material Designが「紙とインク」といった私たちもよく知る物体(マテリアル)の振る舞いを模倣して作られたデザイン仕様であることに由来しています。
開発をしているcallstack社は、React Native本体の開発コミュニティでコアメンバーを務める人が何名かおり、React Native Paperも品質に期待が持てるプロダクトです。
React Native Paperに用意されたコンポーネント
本記事では、React Native Paperが提供する、すべてのコンポーネントの使い方について解説することは、残念ながらできません。そこで、雰囲気をつかんでもらうために、コンポーネントの一覧を紹介します(表1)。
コンポーネント | 概要 |
---|---|
ActivityIndicator | 円状のUIで読み込み中を示す。React Native本家のものとほぼ同等。 |
Appbar | ヘッダーを表示する。(フッターにもできる) |
Avatar | アイコンを表示する。 |
Badge | 任意のビューの右上にバッジを表示する。 |
Banner | 画面上部から現れるメッセージエリアを表示する。 |
BottomNavigation | 下タブメニューを表示する。 |
Button | ボタンを表示する。 |
Card | カードを表示する。 |
Chip | ツールチップを表示する。 |
DataTable | 表を表示する。 |
Dialog | ダイアログを表示する。 |
Divider | 分割線を表示する。 |
Drawer | ドロワー内のメニューを表示する。(左端への出し入れは実装しない) |
FAB | Floating Action Button(右下の丸ボタン)を表示する。 |
HelperText | 主にTextInputと併用して、入力欄の下にエラーメッセージ等を表示する。 |
IconButton | アイコンだけのボタンを表示する。 |
TouchableRipple | タップ時の波紋が広がる演出(リップルエフェクト)を表示する。 |
List | リストを表示する。 |
Menu | メニューを表示する。 |
Modal | 画面にオーバーレイする領域を表示する。(Dialogの要素技術) |
Portal | 本来のビューツリーとは違う場所にビューを表示する。(Modalの要素技術) |
ProgressBar | 横棒のUIで処理待ちを示す。 |
Searchbar | 検索欄を表示する。 |
Snackbar | 下からポップアップするメッセージを表示する。 |
Surface | Material Designが定義する「紙」の概念を再現する。(浮いているUIの要素技術) |
Switch | スイッチを表示する。 |
TextInput | テキスト入力欄を表示する。 |
ToggleButton | トグル(切り替え)できるボタンを表示する。 |
かなり豊富なコンポーネントが用意されていますね。これらとは別に、テキストについても触れておきましょう。Material Designでは、テキストの役割に応じて、フォントサイズやウェイトが細かく指定されています。
テキストの詳細は、公式ドキュメントを参照してください。
次の表2でもわかるように、このTypography仕様についても、React Native Paperは可能な範囲でサポートしています。
コンポーネント | 概要 |
---|---|
Text | テキストを表示する。React Native本家のものとほぼ同等。 |
Subheading | 小見出しを表示する。 |
Title | タイトルを表示する。 |
Paragraph | 段落を表示する。 |
Headline | 見出しを表示する。 |
Caption | 注釈を表示する。 |
これらのコンポーネントを駆使することで、美しいUIを組み立てていくことができるでしょう。
React Native Paperをセットアップする
では、実際の使い方について解説します。おおむね公式ドキュメントに沿う形で解説します。
React Native Paperのインストールと初期設定
まずは、サンプルプロジェクトを作りましょう。リスト1のようにexpo init
コマンドで、ブランクプロジェクトを選択します。
$ expo init paper-sample --template blank
次に、React Native Paperをインストールします。
$ npm install react-native-paper
もし、素のReact Nativeで開発をする場合には、ここでreact-native-vector-icons
をインストール必要がありますが、今回利用するExpo環境ではすでにインストールされているため、割愛します。
インストールが終わったら、babel.config.jsを修正します。リスト3の形になるよう、env
キーにオブジェクトを追記してください。
module.exports = function(api) { api.cache(true); return { presets: ['babel-preset-expo'], env: { production: { // (1) plugins: ['react-native-paper/babel'], }, }, }; };
(1)にproduction
とある通り、リリースビルドを実施するときだけ有効になる設定です。厳密には、今回の記事で動作確認をするだけであれば不要ですが、将来リリースするためのアプリを作る際には、ぜひ設定していただきたいので言及します。
ソースコード側の初期設定
さて、これで環境は整いましたので、ソースコード側の初期設定も済ませましょう。これまで、本連載ではプロジェクトフォルダのトップレベルにあるApp.js
を編集してサンプルを作ってきましたが、今回はsrc
フォルダを作成し、アプリケーション本体をそちらに配置します。というのも、App.js
のようなエントリーポイントと呼ばれるファイルには、アプリ起動時の初期設定を書き込むことになるため、通常のアプリの実装とは分けておきたいのです。というわけで、今回は図4のようにsrc/Main.js
を作成しましょう。
App.js
とsrc/Main.js
の実装は、リスト4を参照してください。
// App.js import React from 'react'; import { Provider as PaperProvider } from 'react-native-paper'; import { Main } from './src/Main'; export default function App() { return ( <PaperProvider>{/* (1) */} <Main /> </PaperProvider> ); } // src/Main.js import React from 'react'; import { SafeAreaView, ScrollView } from 'react-native'; export const Main = () => { return ( <SafeAreaView> <ScrollView> {/* これから実装する */} </ScrollView> </SafeAreaView> ); };
(1)のPaperProvider
を外側にかぶせることで、内側に配置されたコンポーネントにテーマを適用できるほか、別のオーバーレイするUIを表示できるようになります。ライブラリを導入していく中で、App.js
にXxxProvider
を追加する機会は少しずつ増えていきます。そういった場合に、ファイル分けをしておくと便利です。
さあ、これでReact Native Paperを使う準備はできました!