課題と向き合って意思決定をした6年間
プロダクトマネージャー/事業責任者としてのキャリアの後期、小笠原氏の肩書はVPoE(執行役員)に変わっている。VPoEという肩書はついているものの、実際に担っている仕事はプロダクトマネージャーという状態だったのだ。一時期は、VPoEとしての仕事ができていないことに思い悩み、マネジメントのロールを降りることも考えたという。
だが、「さまざまな経験をきっかけに人や組織の課題と向き合うことの大切さに気づき、VPoEとしての仕事をやってみようと決めました」と小笠原氏は言う。そう決心してから、業務内容の主軸はエンジニア採用や評価・査定、1on1や育成などに移っていった。
その後、小笠原氏の肩書は現職のCDOへと変わる。だが、当初は何をすべきか暗中模索だったという。CTOやCDOといった技術系の取締役が担うべき役割は企業のフェーズによって異なり、明快な指針は存在しないからだ。この悩みを解消するきっかけとなったのは、CTO歴の長いある人物との会話だった。その人物に「経営、してますか?」と問われたことが、道筋を切り開くヒントになったという。この言葉はつまり、CTOとは技術者として経営課題に携わる役職であることを意味している。
企業のフェーズによって経営課題は異なる。創業期は、事業の柱となるようなプロダクトが存在しないため、プロダクトを開発することそのものが経営課題だ。そのため、CTOにはテックリード的な働きが求められる。
事業がプロダクトマーケットフィットに到達すると、組織を構成してチームとして開発を進めなければならないため、チームビルディングやKPIマネジメントなどが経営課題になる。その後、事業としてスケールしていけば、課題の内容はさらに変化していくだろう。課題にフォーカスすべきであると気づいてから、小笠原氏は自身がどのような業務を担うべきかが明確になっていったという。
セッション終盤では、「マネジメントをしたくない人」「マネジメントに興味はあるが悩んでいる人」「マネジメントをしたい人」それぞれに向けて、小笠原氏はメッセージを伝えていく。
マネジメントをしたくない人は、無理にやる必要はない。だが、マネージャーの考え方を学ぶことは、自身のキャリアにとって必ずプラスになる。また、マネジメントに興味はあるが悩んでいる人は「ぜひ一度マネジメントを経験してみるべき」と小笠原氏は言う。適性がないとわかればエンジニアに戻ることもできるし、経営・マネジメント視点を持っていることはその後のキャリアにおける強みになる。
さらに、マネジメントをしたい人も技術は徹底的に学んでほしいと小笠原氏は語る。Googleのマネージャーの行動規範のなかでも、チームにアドバイスできるだけの専門性を持つことの重要さが提示されているという。
セッション終盤に、これからマネジメントのキャリアを歩み始める方々に対して、小笠原氏はこう述べた。
「これからマネジメント業務を担う方は、きっと最初は失敗するはずです。しかし、そこから学べることがたくさんあります。それに、若い頃に失敗をすると、周りの人はすごく助けてくれるはず。周りの人たちの力を借りながら成長していきましょう。まさに、今回のデブストのテーマでもある『ひとりじゃない』ということ。ぜひ今後のキャリアにおいて、積極的にチャレンジをしてください」
