PMとUXリサーチャーの役割、人材不足は仕組みで解決していく
このようにメルペイでは、OKRで優先度が高い案件においては、専門家がUXリサーチを行い、プロダクトマネージャーとの協業が進みつつある。とはいえ、日本ではUXリサーチャーを置いている企業はまだまだ少ない。現状の日本企業ではどのようにUXリサーチを実施し、プロダクトマネジメントに組み込んでいけばいいのか。
草野氏は、プロダクトマネジメントが年々難しくなってきているという。これには、VUCA(ブーカ:変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が高い)の時代を迎えていることが背景にある。「リサーチを含め何でもできるスター級のプロダクトマネージャーがいればなんとかなるかもしれません。しかし、そんなスター級の人材は少ないですし、その人材頼みの組織運営は健全ではないでしょう。なので、各専門家が協業しやすい組織体制の構築が重要になると思います。またフルタイムでリサーチャーを雇用するのが難しければ、パートタイムでお願いできるようにするなど、柔軟な働き方を受け入れられる環境があると良いと思います」と進言した。
次に重要になるのが、「UXリサーチに対する意識を変えること」と草野氏は指摘する。草野氏の仕事ぶりからもわかるとおり、UXリサーチャーの仕事は多岐にわたる。一方、まだまだ世間的には「UXリサーチ=ユーザビリティテストを実施する人」などと、狭くUXリサーチャーの役割を捉える人もいるからだ。
さらにもう一つ、課題となるのが評価である。UXリサーチャーの仕事が、そのままプロダクトとしてアウトプットされる訳ではない。「組織としてリサーチのインパクトを追跡できる仕組みを整えていくことが大事になる」ことも指摘した。
草野氏も言うように、国内にUXリサーチャーはまだまだ少ない。おそらく多くの企業では、プロダクトマネージャやデザイナーなどの職種が兼務でUXリサーチを実施することになる。ではその際に、どんなことに留意すれば良いのか。
「お客さまを実験体のように捉えていると良い結果は出にくいと思います。お客さまを尊敬し、興味を持って話を聞くことは大前提です。この姿勢を持った上で、目的に合わせて多様なリサーチ手段があることを理解することが重要です。
その上で、定量的・定性的リサーチの特性の違いを理解しておけると良いと思います。両方を使いこなせれば理想ですが、なかなか手が回らないかもしれません。理解したうえで『実践するときは専門家に相談しながらにしよう』ぐらいの姿勢が良いと思います。
自分ができなかったとしても、他にも方法があると知っていれば、誰に力を借りれば実施できるかと考えを巡らせることができます。これは、リサーチを広く柔軟に活用するうえで大事な姿勢になると思います」(草野氏)
UXリサーチが広く柔軟であることを学ぶ手段としては、ユーザーインタビューやユーザビリティ、UXデザインに関する本を、何冊か目を通してみることだという。「それぞれの本を読むと、根本は同じことをいっていても、活用シーンや、使っている方法が色々あることが見えてくると思います。全部をじっくり読むのではなく、サラッと目を通すだけでも効果があると思います」とアドバイスした。
メルカリグループではUXリサーチの活用は進んでいるとは言え、「もっと体制は強化できると思います。やりたい人が始められるよう、質の高いリサーチが実践できる仕組みを作りたいと思います」と草野氏。さらに草野氏にはもう一つ、大きな展望がある。それは業界全体でUXリサーチャーを育んでいくことだ。
「UXデザインやUXリサーチは、研究テーマとしても活発に議論され、日々進歩しています。業界の発展のためにも、実践と研究の両輪を回していきたい。そしてその両輪が融合するよう、サポートしていきたい。方法論は組織の枠を越えて、共有できるはず。UXリサーチの業界を育てて、UXリサーチャーの仕事に関心を持ってもらいたいと思います」(草野氏)
