最初は自分向けサービスだった
どんなきっかけで開発しようと思ったのですか?
doodle自体は昨年末あたりから本格的な開発をしたのですが、元々前身となるシステムがありました。私はずっとPHSユーザだったのですが、今から1年半ほど前、もともと私が1人で使っていたツールで、基地局の緯度経度情報をもとに、その地点のいろいろな情報検索ができ、さらにGoogleマップとを連動させた便利ツールを作っていたのです。
もちろんユーザは私1人だけの、自分向けサービスでしたが、近い将来、ケータイの世界も繋ぎ放題になって緯度経度が取れるようになれば、これまでにはできない新たなリサーチビジネスが可能になるなという構想はありました。ただ、何人かに話してはみたんですが、皆ピンと来ないらしく、そのときは「ふーん」て感じでしたね。
ただ、社長の小山だけは違って、「これは何とかして早く世に出さねば!」と感じたんでしょうね。その仕組みを見せてから数日後、突然「いたずら書きをしよう!」と言い出したんです。しかも名前は「doodle」。
私自身も最初は、そんなどこかの有名検索エンジンをもじった名前なんて……、と思ったんですが、調べてみたらちゃんとした英単語なんです。まさに「ビビっ」ときてしまいまして……。
goo辞典(三省堂提供「EXCEED 英和辞典」より)
そこから本格的な開発が始まったんですね
ちょうど年末休みでスタッフがそれぞれの地方へ帰省していたとき、先ほどの自分向けサービスを改造し、彼らがドゥドゥった位置を掲示板形式でGoogleマップにマーカー表示させ、共有する仕組みを作ってみたんです。すると、これがなかなか面白い。
そうするうちに、「じゃあ、写真も送れるようにしたいね」とか、「レストランの検索とかできない?」とか、いろいろ要望が出てきて、「ひとつ、やってみるか」と仕様を片っ端から調べ、要望を実現していったんです。写真の中のExifフォーマットの中から緯度経度を取り出せることに気づいたときには興奮しましたね。「この情報は使える!」と。
そんなさなかにMash up Award 2ndがあり、コンテストに応募したというわけです。もし、あのまま私1人のツールでしたら、WILLCOM以外対応する気なんてサラサラなかったでしょうし、自分でケータイも買わなかったと思います。コンテストの応募さえしてないでしょう。
ちなみにMash up Award授賞式では、当日まで何賞かはわからなかったので、正直、参加賞覚悟でいたんです。可能性を大いに評価してもらい優秀賞を頂けたことを本当に嬉しく思いました。
Webマイナス2.0の大切さ
doodleは今自分が足で立っている(リアルな)地点にいることそのものを価値と捉え、そこにある(バーチャルな)掲示板に落書き感覚でメッセージを残すことができるのがコンセプトなんですね。ですのでよくある地図系サイトのように、まず(バーチャルな)地図ありきで、誰でもどこでも、それこそ地球の裏側でもワンクリックでアクセスできて、何でも書き込めて、共有できて……という発想とは逆なんです。
世の中がどんどん便利になり、ネットにさえ繋がっていれば大抵の用事は済ませられる。もしかしたら一歩も動かずに何でもできてしまうように思えてしまう時代です。それがWeb 2.0時代では当たり前の事なのかもしれませんが、だからこそ逆に部屋に閉じこもってないで、「doodle持って街へ出ようよ」というコンセプトなんです。
百式さん主催のモバイルセミナーで聞いたのですが、ケータイ地図サービスではパイオニアのNAVITIMEさんも、「我々のルート最適化検索は、Web 2.0的な最先端の技術が売りではなく、むしろWebマイナス2.0的な泥臭さ、実際に現地に足を運んで計測してみることだ」と仰っていました。もし机上だけで考えていたら交通機関に混ざって「徒歩」をレコメンドするなんてありえないと思うんですね。
我々はまだまだですが、とても大きな先人に見習うべきことはたくさんあるなと感じました。