日立ソリューションズに学ぶ、Tanzu Application ServiceとAzureによる開発事例
Session4は、株式会社日立ソリューションズ デジタルソリューション創出プラットフォーム部 部長の丸山高志氏とAIプラットフォーム推進グループ グループマネージャの井上正彦氏による「VMware Tanzu Application Serviceで実現するサービスプラットフォームとモダンアプリ開発事例」が展開された。
日立ソリューションズでは、VMware Tanzu Application ServiceとMicrosoft Azureを活用した「デジタルソリューション創出プラットフォーム」を提供している。これは、顧客のDXを支援する取り組みの一つで、自社のサービスや顧客との協創を効率的かつ高品質に生み出していくサービス基盤であり、課題探索やアイデアの創出、検証、アプリケーションのモダン化などをサポートする。
また、すぐに導入できるDevOps環境を提供し、コンテナ技術によりスケーラブルでマイクロサービスの稼働にも適した、アプリケーションのデプロイから実行までの環境も提供している。それに加えて、必要となるミドルウェア、ネットワーク、セキュリティ、負荷分散、可用性などの非機能要件に対応する機能も提供する。こうした環境をベースに、価値創出のための試行錯誤のサイクルや技術者育成を支援していくのだ。
丸山氏は「素早く簡単に繰り返しアプリケーションを開発運用するための体制、サービス基盤プロセスをあらかじめ用意しておりますので、お客様はビジネスとサービス開発、価値創出のみに集中いただくことができます」とメリットを説明した。
続いて井上氏より、このデジタルソリューション創出プラットフォームで開発した、サービスの事例が紹介された。人材サービス事業者のための面談支援AIサービスの協創である。人材サービス事業者に所属する派遣社員のキャリア面談に工数がかかっていたため、AIを使って簡略化する取り組みだ。優秀な面談者の人材評価能力を、面談中の動画からAIに学習させ、面談の質や工数の課題解決に活かした。人材サービス事業者以外にも、人事採用面接や社内1on1およびオンライン教育など、面談以外の幅広い領域に発展させていく構想もある。
2年かけてローンチしたこのサービスの開発について井上氏は「アプリケーションを含めた基盤の開発の時間はなかなかとれません、一方でネットワークやサーバー設定、セキュリティなどの実装要素は多岐にわたります。デジタルソリューション創出プラットフォームではインフラの環境をあらかじめ設計・設定済みですので、もともと3か月以上かかると想定していた検証環境の構築を実質1か月程度で実現できました」とそのスピードをアピールした。加えて、検証環境をそのまま本番環境に移行できるメリットもあるとした。
日立ソリューションズでは、顧客のDXを支援するため上流から開発・運用まで、トータルなサービスを提供している。「日立ソリューションズ DXラボ」では、アイデアの創出から、最初の事業計画書作成までを最短3か月で推進するプログラムを用意している。「モダンアプリケーション開発支援ソリューション」では、コンサルティングや開発支援スタジオの提供、個別ツール・導入支援を通じてリーン開発・アジャイル開発のサポートを行っている。
丸山氏は最後に「弊社は、VMware、Microsoftとの協業によって、モダンアプリケーション開発の効率化にとどまらず、サービス開発の上流から開発・運用までをトータルで支援しております。2025年の崖、サステナビリティの実現など、さまざまな課題を抱える社会環境においてDXを推進するお客様との協創に日立ソリューションズのIT技術をぜひご活用ください」とコメントした。
開発と運用、二つの役割を結びつける「Tanzu Application Platform」
続いては、ヴイエムウェア株式会社 モダンアプリケーションプラットフォーム事業部 シニアプラットフォームアーキテクト 松原祐樹氏による「AKS上のアプリケーションに圧倒的な開発者体験を与えるアプリケーション志向のプラットフォームとは?」。Kubernetesや既存資産のエコシステムを最大化する「Tanzu Application Platform」について、デモなども交えながら紹介された。
Tanzu Application Platformはヴイエムウェアが提供するアプリケーション開発のための二つ目のアプローチとして、今年1月11日に一般提供された。任意のKubernetes上で動作し、1月時点ではAzure Kubernetes Service(AKS)のほか、Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS)やGoogle Kubernetes Engine(GKE)がサポートされている。今後は、ヴイエムウェアが提供するオープンソースやオンプレミス用製品も含め、さらにサポートを拡大していく。
Tanzu Application Platformでは開発からリリースまでの流れを「インナーループ」と「アウターループ」の二つに分けて機能を提供している。インナーループは、開発者が普段の業務で行うコードの実装やテストといった部分を指す。そこから本番環境に至るまでの、運用者が担う部分がアウターループの範囲になる。
例えば、インナーループの機能には以下のようなものがある。
Application Accelerator
開発テンプレートを提供することで、開発を立ち上げる際の時間を大幅に短縮する。組み込み済みのサーバーレスの抽象化によって、マイクロサービスやイベント駆動型といった高度なアプリケーションパターンを容易に実現でき、自動スケーリングやAPIによる接続といった運用上の課題にも対応している。
Live Update
IDEからKubernetes上で稼働しているアプリケーションをデバッグすることができる。コンテナの再構築・再発行、デプロイのステップを排除し、代わりに実行中のコンテナに更新されたコードを直接注入する。これにより、コードの変更を繰り返しながら即座にテストすることが可能になる。Visual Studio Code用の公式IDE拡張機能も用意されている。
API Portal
全てのAPIを一つの管理ポータルにまとめることで、各チームが自分たちのAPIや関連ドキュメントを進化させながら、独自のAPIポータルを展開することが可能。運用者も、さまざまな環境で任意の数のAPIポータルインスタンスを構成し、アクセス管理をすることができる。
App Live View
コードの修正を容易にする機能。診断ツールにより、リソース消費量やトラフィックパターンなど、アプリケーション実行時の特性を把握することはもちろん、実行中のアプリケーションでもログレベルや環境プロパティを変更することができる。
また運用者向けのアウターループについても、開発生産性の向上につながる機能が含まれている。例えば、「サプライチェーンコレオグラファー(SCC)」という機能では、アプリケーションのデプロイメントプロセス全体を自動化することで、開発者がいわゆる「YAMLの壁」に苦しむ必要がなくなる。
これらの機能により役割を明確にし、開発者はコードに専念、運用者はリリースする成果物にガバナンスを効かせた運用を、それぞれ実現することができる。
「Tanzu Application Platformを試したい場合は、インストール手順やバイナリをダウンロードが可能なサイトがあります。ぜひお試しください」として、松原氏はセッションを締めた。