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Rust言語で作るWebバイナリファイル「WebAssembly」入門

Rustでわかる! WebAssemblyのメリット~処理速度の違いを、サンプルを作りながら体験しよう

Rust言語で作るWebバイナリファイル「WebAssembly」入門 第3回

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RustのクレートをWebAssemblyに取り込む

 前回記事で、Rustにさまざまな機能を提供するライブラリー「クレート」を紹介しました。そこでクレートをWebAssemblyに取り込んで利用する例を、入力文字列のSHA-2(SHA-256)ハッシュを求める図4のサンプルで説明します。

図4 クレートを利用してSHA-2ハッシュを求めるサンプル(p003-use-crate-web)

 Rustのプロジェクト(p003-use-crate)を生成後、プロジェクト設定ファイルCargo.tomlにリスト13の通りクレートを指定します。このサンプルでは、SHA-2ハッシュを求める「sha2」と、16進数文字列を求める「base16」の、2つのクレートを利用します。

[リスト13]クレートを追加する記述(p003-use-crate/Cargo.toml)
[dependencies]
wasm-bindgen = "0.2.63" # 元からあるもの
sha2 = "0.10.2"         # 追加
base16 = "0.2.1"        # 追加

 Rustの実装はリスト14の通りです。

[リスト14]Rustで実装したSHA-2ハッシュ処理(p003-use-crate/src/lib.rs)
use wasm_bindgen::prelude::*;
use sha2::{Sha256, Digest}; // sha2クレート ...(1)
use base16;                 // base16クレート ...(2)
(略)
// SHA-2の計算処理 ...(3)
#[wasm_bindgen]
pub fn sha2(input: String) -> String {
    // SHA-2処理オブジェクトを生成 ...(4)
    let mut hasher = Sha256::new();
    // ハッシュ計算 ...(5)
    hasher.update(input);
    // 計算結果を出力 ...(6)
    let hash = hasher.finalize();
    // 計算結果を16進文字列に変換 ...(7)
    let encoded = base16::encode_lower(&hash);
    // 16進文字列を返却
    return encoded;
}

 まず(1)と(2)で、使用するクレートを記述します。SHA-2の計算処理(3)では、(4)のSha256::newメソッドでSHA-2(SHA-256)を計算するオブジェクトhasherを生成し、(5)でupdateメソッドに入力文字列inputを与えてハッシュを計算します。計算結果を(6)のfinalizeメソッドで取得後、(7)のbase16::encode_lowerメソッドで小文字の16進文字列に変換して返却します。

 一方、Webページのプロジェクト(p003-use-crate-web)では、WebAssemblyの処理を実行する処理をindex.jsにリスト15の通り実装します。

[リスト15]WebAssemblyを実行してSHA-2ハッシュを求める実装(p003-use-crate-web/index.js)
// WASMをインポート ...(1)
import * as wasm from 'p003-use-crate';
// WASMによるSHA-2の処理 ...(2)
document.getElementById('sha2-input')
  .addEventListener('input', e => {
    // 入力値を取得 ...(3)
    const input = e.target.value
    // SHA-2を計算 ...(4)
    const hash = wasm.sha2(input);
    // 計算結果を表示 ...(5)
    document.getElementById('sha2-result').textContent = hash;
  });

 リスト14をビルドして作成したパッケージを(1)でインポートします。テキストボックス入力時のイベント処理(2)では、(3)で入力値を取得し、(4)でSHA-2を計算、(5)で計算結果を表示します。

まとめ

 本記事では、RustでWebAssemblyを実装する方法を説明しました。加えて、ライプニッツの公式を利用した円周率の計算を例に、WebAssemblyとJavaScriptの速度比較を行いました。また、RustのクレートをWebAssemblyに組み込む方法も説明しました。

 今回利用したWebAssemblyでは、JavaScriptとやり取りするデータは数値や文字列といった単純なものでした。より実践的にWebAssemblyを利用するには、WebAssemblyとJavaScriptとの間でさまざまなデータをやり取りする必要があります。そこで次回は、JavaScriptとRustでデータをやり取りする方法を、より詳細に説明していきます。

参考資料

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この記事の著者

WINGSプロジェクト  吉川 英一(ヨシカワ エイイチ)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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