業務とITの橋渡し役として、地道な姿勢と関係づくりが重要
一方で、コンサルタントとして活動するポイントとして、惠氏は「立場の難しさ」を挙げる。コンサルタントになることで警戒されてしまい、エンジニアとして開発側にいた際は得られていた情報が得にくくなった。特に新しく着任した代表によるトップダウンでのプロジェクトでは、そこに紐付いたコンサルタントとして反発されるなど、社内的な軋轢にも苦しんだという。
「情報を得るための関係構築をしっかり図る必要があることを実感した。そのためには、言葉遣いについても専門用語を使わないように留意するなど、細やかな配慮が求められた。意見や見方が異なる中でさまざまな方面から情報を得つつ、本当のところを見極めることも難しかった」と惠氏は振り返る。
多くの苦労がありつつも、惠氏が「やりがいある仕事」と言い切るのは、経営課題だけでなく現場の課題解決にも貢献でき、大きな充足感が得られるからだという。
その1つとして惠氏は、キャッシュレスのシステムインフラの再建を担った事例を紹介した。当初は監視・運用業務だけを依頼され、改善活動をしなくてよいという前提で参画したが、ビジネスの伸長にも関わらず会社と組織の対応が追いついていない状況で、問題が顕在化していた。そこで、監視の外注化という改善提案を行い、クレームの多かった監視レベルの向上、担当者の業務負荷の軽減などを実現。サービス品質の向上に加えて、労働環境の改善による離職率低下にもつながり、経営だけでなく現場の課題解決を実現できた達成感があったという。
こうした惠氏の経験を踏まえ、倉田氏は「エンジニアからITコンサルタントになるために必要なこと」として、次の3つをあげた。
- 情報のインプットが大事、信頼関係の構築がベースに
- 複雑な問題を整理するには、目が行き届かない領域にも目を向けて対応していく
- 地味で泥臭いことでも、地道にコツコツ最後までやること
そして、「派手な提案をするという仕事ではなく、どうすれば解決できるのかの小さな要素を地道に見つけて整理していくことが大切。コンサルタントだからというだけでなく、これらの基本的な姿勢をもって取り組んでいくことが重要」と評した。
そして、最後に惠氏は、「いきなりITコンサルタントになって大きなプロジェクトを任されているわけではない。エンジニアのときから小さな問題を解決し、コツコツと積み重ねていくことで、大きな成果を得られるようになってきた」と語り、「これからITコンサルタントを目指す方は、ぜひ小さな課題解決からチャレンジしてみてほしい」とメッセージを送った。