コンピュータ熱が収まらず文系から理系に編入
「人生で好きなことを集中的に突き詰めてきた結果、なんとなく『これが自分の道かな』と感じるようになってきた」と語る岩尾氏。もともと物事の「仕組み」を考えたり、知ったりするのが好きだという。デベロッパーとして取り組むGoogleのクラウドサービスは「仕組み」を凝縮したものと考えれば、まさに適職といえるだろう。
Google Cloudは、何億もの人が使う検索やYouTubeなどのサービスを支え、何十万台、何百万台ものサーバーを効率よく管理する技術がもとになっている。さらに一台のサーバーにもさまざまな工夫が詰まっており、システム、ボード、スペック、ソフトウェアなどその範囲も広い。岩尾氏自身は特にCPUやGPU、NICなどに興味があり、どの段階を見ても「技術の積み重ね」があり、勉強していても楽しいという。
それではなぜ、岩尾氏が『仕組み』を考えることが好きになったのか。
「昔から機械が好きで、洗濯機が動いているのをずっと眺めているような子どもだった。気になることがあれば触らずにはいられず、コンセントにヘアピンを突っ込んで感電したり、タイプライターに指を挟まれたり、失敗も多かった。無意識ながら、実は当時から『仕組みがどうなっているのか』に興味があったのではないか」と岩尾氏は振り返る。
公務員の両親のもと大阪で生まれ育ち、11歳でプログラミングに出会い、円周率計算プログラミングなどを遊びで書いていたが、数学が苦手で高校では文系選択を勧められ、素直に文系に進んだ。「今でいえばおかしな話ながら、理系は男の子という風潮もあり、周囲にソフトウェアエンジニアもいなかったので、職業としても意識しなかった」と語る。そして、大学は偏差値やセンター試験の点数を鑑みて”なんとなく”選び、「AIをやるには人の心理を学んでおいたほうがいいのでは」という半ばこじつけの理由で、教育・心理学系の学類に入学した。
しかし、そこで一つの転機が訪れる。コンピュータ熱は収まらず、「そこまでコンピュータが得意で好きなら転学したら」と担当教授に勧められ、2年次から情報系の学類に編入し、コンピュータサイエンスの修士まで取得することになった。岩尾氏はその顛末を振り返り、「結果として大学6年間、好きなことをして、さらに仕事についても役に立った。人生で最もよかったと思える決心の一つ」と語る。