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Women Developers Summit 2022 セッションレポート

円周率計算世界記録! でも数学は苦手だった? Google岩尾エマはるか氏が語る、好きなことをキャリアにつなげる方法

【A-1】好きなことをキャリアにつなげる

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好きでも嫌いでもない英語でも、好きな方法でなら続けられる

 なお、海外はもちろん、この業界で仕事をする上で英語は切っても切り離せないものだが、岩尾氏自身は「好きでも嫌いでもない、ほどほどのお付き合いでいい存在」であり、さらには「必ずしも必須ではない」という実感があるという。そして、中学時代に書いたプログラムを見せて、英語が完全にわからなくてもプログラミングは書けることを示した。

プログラミングの様子
プログラミングの様子

 しかし、岩尾氏自身は「英語ができたからこそ道が広がった」とも語る。円周率の計算についての取材で、BBCラジオやNPRへの出演がかない、会社のイベントでの基調講演や有名YouTuberの番組への出演などにも自分の言葉で話すことができた。もちろんネイティブになれるわけではなく、人によってもゴールは違うとはいえ、「それでもできることは無数にある」と言う。そして、「自分の興味と英語の交差するところを考えてみてほしい」と語った。

 たとえば、岩尾氏は中学時代はオンラインゲームのチャットに始まり、高校時代にはゲームニュースの翻訳サイト、オンラインゲーム、英語の技術文章、ハリー・ポッターも原書で読んでいたという。さらに大学では英語の翻訳アルバイトをしたり、働くようになってからは学校とSkypeで英会話を学び、ゲームや技術文章、YouTubeやNetflix、本やニュースを読んだり、オーディオブックでシャドウイングをしたりすることもあるという。テキストで勉強するのは苦手とはいえ、さまざまな方法で英語に親しみ勉強していることが伺える。さらに、現在は中国語に挑戦中だ。

さまざまなロールモデルに共通点を見出しインスピレーションをもらう

 「いずれにしても、やりたいことを言うことが大事」と岩尾氏は語る。大学時代にコンピュータに関わりたいと話したことが転部につながったり、転職や異動、アメリカで働くこと、円周率を計算することも全て口にしたからだ。そして今はSREの仕事をしたいと手を上げて、それがかなったところだという。岩尾氏は「リーダーもチームメンバーが何をしたいのか、知りたがっている。『これがやりたい』『これが好き』と前向きに伝えることで『任せてみよう』となるはず」と述べ、「反対に『困っていること』についても『助けて』と伝えることが大事」と語った。

 そんな岩尾氏にとって、ロールモデルとは「こんな人になりたい」という一人ではなく、「こんな可能性もある」「こんなやり方で成功している」と気づかせてくれる存在だという。そういう目で広く見ると、歴史上でも現在でも参考になる人は多く、インスピレーションを与えてくれる。その中でも、同級生や同僚、社内で活躍する先輩など、共通点が多いとより参考になり、たとえ有名人でも共通点が見いだせれば、インスピレーションを貰えるはずだ。

 岩尾氏は、「そんな人に会ったら、ぜひ話しかけてみてほしい。メンターになってくれるかもしれないし、話すことで気づきもあるかもしれない。そうした人は周りの人をどう引っ張っていくかを考えていることが多く、なにかのきっかけで機会を与えてくれる可能性もある」と語った。

 そして、岩尾氏が歴史上で刺激をもらったというトピックスとして、まず1946年にアメリカのペンシルバニア大学で開発された電子計算機エニアック(ENIAC)を紹介。ハードは難しく男性の仕事と思われていた時代に、実際にワイヤーを抜き差ししてソフトウェアを担当していたのが女性だったことを思い出し、「スキルや能力に性差はない」と改めて思うようにしているという。

 さらに、COBOLの開発リーダーだったグレース・ホッパー氏、アポロ計画のフライトシステムソフトウェアを開発したマーガレット・ハミルトン氏の名前も上げた。そして、eスポーツの世界で10年以上に渡って若手を引っ張るベテラン選手やコーチ、複数言語を駆使するインタビューアー、選手から実況に転じて人気が出た人など、さまざまなキャリアのあり方に刺激を得ているという。

 岩尾氏は、心に留めている言葉として「The Best Time Is Now(今が残りの人生で一番いい時期)」をあげ、「何かをするのに遅すぎる時期はない。もちろん現実的な目標は必要だが、 『いまさら?』という人は無視して、やりたいと思うなら挑戦していきたい」と力強く語った。実際、アメリカへの引っ越しも34歳からで、36歳から中国語を勉強し、今年、SREの見習いもはじめたところだ。

 そして、自分から「これに興味がある」「これがしたい」と言うことの大切さを改めて強調し、「やりたいことを実現するためには努力もやっぱり必要。だけど、楽しければ努力と感じずに自然に達成できることも多い」と語った。そして、「それでもチャンスは突然降ってくるので、不安に負けずに動くことが大切。技術や能力があっても、努力をしたとしても、時期や条件が違えば成果が出ないこともある。だからといって卑屈にならず、それまでに楽しみながらスキルや知識を高め、来たるべき時期を待とう」とメッセージを送り、セッションのまとめの言葉とした。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

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