クロスプラットフォームのゲームエンジン「Godot」の開発チームは、最新バージョン「Godot 4.0」の正式版の提供を3月1日(現地時間)に開始した。GodotはMITライセンスで公開しているオープンソース・ソフトウェア。
Godot 4.0は、3年以上かけてゼロから作り直したという。今回の正式版公開までに、アルファ版を17回、ベータ版を17回、製品候補版(RC:Release Candidate)を6回公開し、ようやく完成にこぎ着けた。
Godot 4.0では、3D動画、2D動画、物理エンジン、ユーザー・インターフェイス、音声、アニメーションなど、さまざまな分野に多くの新機能が加わっている。ここでは、コーディングに関する新機能の一部を紹介する。
まず、Godot独自のスクリプト言語である「GDScript」で、型付き配列が使えるようになった。これにより、Godotのエンジンが配列の各要素の型を検証できるようになり、実行時の最適化がやりやすくなるという。
そして、ラムダ式を使えるようにもなった。あまり使う場面がない関数を扱うときに、いちいちクラスを作らずに済むため、コード記述量が減少する。また、アノテーションを取り入れたことで、コードを明確にかつ簡潔に記述できるようになった。
Godotでは、C#でもコードを記述できるが、C#に関係する部分も大きく変わった。まず、従来はオープンソースの.NET互換環境である「Mono」を使用していたが、Godot 4.0では.NETを使用するようになった。対応するバージョンは.NET 6であり、C#10の機能をすべて使える。
また、従来はエンジンとのやり取りにリフレクションを使用していたが、今回の新バージョンからMicrosoftが提供している「Source Generators」を使うことになった。開発チームはその理由として、Source Generatorsが生成したコードが大体の場合、リフレクションを使ったコードよりも早く動作することと、実行ファイルのサイズが小さくなることなどを挙げている。現在のところ、C#対応のGodot 4.0は、GDScript対応のものと別のビルドになっているが、将来は単一のビルドでどちらの言語にも対応する予定だとしている。
現在のところ、Godotの開発チームはGDScriptを中間言語に変換する部分の改良に取り組んでいるという。これが実現すれば、より最適化を進めたコードの出力が可能になるという。それが実現したら、仮想マシンを改良して、静的型付けで記述したコードの処理速度を大幅に高めるとしている。
開発チームはGodot 4.0をようやく公開したが、まだバグが残っており、処理性能向上の余地もまだあると考えているという。そのため、改善したバージョンを速いペースで続々と公開していくとしている。そして、2023年後半に予定しているGodot 4.1では、大規模な改良と新機能追加を予定しているそうだ。
そして、Godot 3.xの開発も続けるという。今後はGodot 4.0の機能をGodot 3.xに取り入れていく予定だともしている。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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