アカマイがクラウド市場に参入した技術的背景とは?
先述したとおり、クラウドコンピューティング市場は、ハイパースケーラー3社で多くのシェアが占められている。そんな市場になぜ、アカマイは参入したのか。その技術的な利点はどこにあるのか。それについてジェンキンス氏は、「ワークロードとアプリケーションを分散できること。分散型クラウドサービス、それが当社の最大の強みです」と言い切る。
Akamai Connected Cloudは、コアサイト、分散型サイト、エッジサイトで構成される。コアサイトは同社が用意しているクラウド・コンピューティングサービス一式を提供する。一般的なパブリッククラウドのリージョンに相当するサイトである。現在ワールドワイドで11カ所に設置されており、23年度中に24カ所まで拡大することを計画している。日本では東京に設置されており、大阪にも設置される予定となっている。
分散型サイトはKubernetesやコンテナなど、基本的なコンピューティング機能を提供する軽量クラウド基盤。この分散型サイトの設置が、アカマイの特徴と言える。分散型サイトはまだ稼働はしていないが、今年度中にワールドワイドで50カ所ほどの設置が計画されているという。
エッジサイトはアカマイが25年にわたりCDNサービスの提供に使ってきたサイトである。「できるだけユーザーに近いところにクラウド・コンピューティングサービスを増やしてきた」とジェンキンス氏が語るように、現在、4000以上の場所に設けられている。もちろん、ユーザーはこれらのサイトを組み合わせて利用することができるため、コンピューティングと合わせて、CDNサービスやセキュリティサービスなども活用できるというわけだ。
加えて、PoP(Point of Presence)の多さも強みである。PoPの多さにより、より近い場所、分散した場所でアプリケーションを動かせるため、より信頼性の高いコンピューティングも期待できる。
「私たちが提供する分散型のクラウドサービスであれば、今までどんどんクラウドに移行してきたものを、データとプロセスをエンドユーザーにより近いところで活用できるようになる。このような仕組みにより、クラウド活用の最適化に貢献できると思います」(ジェンキンス氏)
その一例としてジェンキンス氏が紹介したのが、BFF(Backends for Frontends)としての活用事例だ。BFFはフロントエンドとバックエンドの中間で、双方の複雑な処理を緩和する役割を担うアーキテクチャ設計パターン。Webアプリケーションとその他エンドユーザー向けアプリケーションなどで、一般的に用いられている。BFFがAPIの呼び出しのバッチ処理、データのキャッシュなどを行うことで、フロントエンドでの処理が簡略化され、負荷が軽減できるのである。
「ユーザーにとってはエクスペリエンスが向上し、レイテンシーも下げることができます。BFFとしての活用は、すでにさまざまなクラウドネイティブアプリケーションで実行されています」(ジェンキンス氏)
そのほか、ゲームのマッチメイキングでの活用やコネクテッドカーなど、ユーザーに近いところでコンピューティングが必要になるアプリケーションで有用に活用できるという。
また、クラウド利用コストの削減が可能になるよう、安価な価格を実現している。「当社のサービスは1GBあたりのエグレス料金(クラウドストレージからデータを取り出す際にかかるコスト)は0.5セントと、他のサービスプロバイダより価格を抑えたサービスとなっています」(ジェンキンス氏)
クラウド最適化時代に求められる、ユーザー視点の身に付け方
いろいろなユースケースが考えられるAkamai Connected Cloud。このサービスをうまくアプリケーション開発者が活用するには、ユーザーが何を考えているのかを想像することが大事になるという。「まずはエンドユーザーにとって大事なこととは何かを考えること、つまりエンドユーザーの視点を持つことです。例えばユーザーエクスペリエンスを向上させたいが、コンピューティングのロケーションが一つのデータセンターに縛られていたとしましょう。Akamai Connected Cloudならそういう制限事項が解消できる。そこからAkamai Connected Cloudの活用を始めてもよいと思います」(ジェンキンス氏)
エンドユーザーと触れ合う機会があまりないアプリケーション開発者にとって、エンドユーザーの視点を持つことは容易いことではない。どうやってその視点を身につければ良いのか。
「ユーザーストーリーを作成することをお勧めします。この機能を開発するのは、何のためなのか、“Why”を追求することを忘れないようにするためです。実際、私も開発者だった頃、ユーザーストーリーを作成しました」(ジェンキンス氏)
ユーザーストーリーのテンプレートは、「誰(Who)が何(What)を達成したい。その理由(Why)」で構成される。ジェンキンス氏はより具体的にするため、ペルソナにスーザンなど具体的な名前を付け、なぜ、その機能を開発するのか、その機能を開発することでスーザンは何を達成できるのか、他にアイデアはないのか、自身に問いかけ、ユーザーストーリーを作成したという。このように常に自分自身になぜと問いかけることで、ユーザーエクスペリエンスの高いアイデアが浮かぶようになるという。
私たちを取り巻く環境は、非常なスピードで変化している。テクノロジーは日々進化し、ユーザーニーズもどんどん変化していく。「昨日不可能だったことが、明日可能になるかも知れない時代。開発者は進化や変化を常にウォッチし、ユーザーがその変化に対応してくための、よりよきアドバイザーになってほしいと思います。私たちのソリューションは、急速なユーザーニーズの変化にも対応できる、アジャイルでポータブル性に優れたアプリケーション、運用に貢献できると思います」(ジェンキンス氏)

