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一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門

データ更新に応じてUI変更を自動実行しよう ―データを非同期でUIに反映できる「LiveData」とは?

一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門 第4回

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MutableLiveDataのデータ更新

 前節のオブザーバ登録で、LiveData内に保持したデータの変更に応じて、自動で画面表示が切り替わるようになりました。次に、そのデータの変更方法を紹介していきます。

データ登録はsetValue()

 リスト1やリスト2で、MainViewModel内にLiveDataオブジェクトとして_cocktailmemoLiveDataが用意できました。ただし、この_cocktailmemoLiveData内のCocktailmemoオブジェクトはnullのままです。この状態で、_cocktailmemoLiveData内のCocktailmemoオブジェクトを利用しようとすると、NullPointerExceptionが発生してしまいます。そこで、MainViewModelの生成と同時に、_cocktailmemoLiveData内に、初期値にあたるCocktailmemoオブジェクトを格納することにします。これは、Javaコードでは、リスト7のようなコードになります。

リスト7:_cocktailmemoLiveData内の初期値の登録(Java版)
public class MainViewModel extends AndroidViewModel {
  :
  public MainViewModel(Application application) {
    :
    Cocktailmemo cocktailmemo = new Cocktailmemo();  // (1)
    cocktailmemo.id = -1;  // (2)
    cocktailmemo.name = "未選択";  // (3)
    cocktailmemo.note = "";  // (4)
    _cocktailmemoLiveData.setValue(cocktailmemo);  // (5)
  }
  :
}

 注目すべきはリスト7の(5)です。MutableLiveDataにデータを格納するメソッドは、setValue()です。このメソッドを実行することで、引数のデータが内部に格納されると同時に、前節で作成したオブザーバが呼び出されます。その際、このsetValue()メソッドで渡されたデータが、オブザーバのonChanged()メソッドの引数として渡されます。

 リスト7では、このsetValue()を実行する前に、あらかじめデータを用意しています。それが(1)〜(4)であり、これを初期値としています。この初期値は、リストからカクテルが全く選択されていない状態とするので、(2)のようにidは-1、(3)のようにカクテル名のnameは「未選択」、感想のnoteは空文字としています。

 Kotlinコードも同様で、リスト8のようになります。

リスト8:cocktailmemoLiveData内の初期値の登録(Kotlin版)
class MainViewModel(application: Application) : AndroidViewModel(application) {
    :
  init {
    :
    val cocktailmemo = Cocktailmemo(-1, "未選択", "")
    cocktailmemoLiveData.value = cocktailmemo
  }
  :
}

非同期でのデータ登録とデータ取得

 前項で紹介したデータ登録であるsetValue()メソッド、および、valueプロパティへの代入は、その処理がUIスレッドで行われる場合のコードです。LiveDataは、非同期でのデータ登録にも対応しています。もしデータ登録処理を、ワーカースレッドで行う場合は、JavaとKotlinともに、postValue()メソッドを利用します。LiveDataはワーカースレッドで行われたデータ登録を検知し、UIスレッド上でオブザーバを自動実行します。

 また、LiveDataに格納されたデータを取得したい場合は、JavaではgetValue()メソッドを、Kotlinではvalueプロパティを利用します。ただし、これまでも述べたように、LiveData内部へのデータ格納は、非同期で行われることが多々あります。そのため、場合によっては、getValue()メソッドやvalueプロパティへアクセスしたタイミングでは、まだ適切にデータが格納されていないことが多々あります。この点には注意しておいてください。

DBから取得したデータの格納(Java版)

 これで、一通り、LiveDataへのデータ格納方法を紹介したことになります。この方法を利用して、前回のリスト10やリスト11で用意したようなprepareCocktailNote()メソッド、すなわち、カクテルリストが選択された際にデータベースから取得したデータを扱うメソッドがどのように変わるかを紹介します。ただし、LiveDataを利用すると、感想欄データだけなく、全てのデータをひとまとめに扱うため、メソッド名をprepareCocktailmemo()とし、Javaコードではリスト9のようになります。

リスト9:prepareCocktailmemo()メソッド(Java版)
public class MainViewModel extends AndroidViewModel {
  :
  public void prepareCocktailmemo(int cocktailId, String cocktailName) {
    Cocktailmemo cocktailmemo = _cocktailmemoRepository.getCocktailmemo(cocktailId);  // (1)
    if(cocktailmemo == null) {  // (2)
      cocktailmemo = new Cocktailmemo();
      cocktailmemo.id = cocktailId;
      cocktailmemo.name = cocktailName;
      cocktailmemo.note = "";
    }
    _cocktailmemoLiveData.setValue(cocktailmemo);  // (3)
  }
  :
}

 リスト9には、特に難しいことはありません。(1)でリポジトリから指定された主キーに該当するCocktailmemoオブジェクトを取得しています。その際、前回のコードではフィールドに保持していた_cocktailIdを、指定主キーとして利用していました。しかし、今回はそのようなフィールドは存在しないので、引数でもらうことにしています。ただし、前回同様、このcocktailmemoはnullの可能性があります。そこで、(2)のifブロック内では、新たなCocktailmemoオブジェクトを生成し、今選択したカクテルのidと名前を引数でもらい、それを格納するようにしています。そのようにして用意したcocktailmemoをLiveDataに格納しているのが、(3)です。

 このようなprepareCocktailmemo()メソッドを用意しておくと、カクテルリストが選択された際のMainActivity側のコードは、リスト10のように、非常にシンプルになります。UI更新処理が全く含まれていないのが特徴です。

リスト10:MainActivityでカクテルリストが選択された時の処理(Java版)
String cocktailName = (String) parent.getItemAtPosition(position);
_mainViewModel.prepareCocktailmemo(position, cocktailName);

DBから取得したデータの格納(Kotlin版)

 Kotlinコードも同様で、prepareCocktailmemo()メソッドは、リスト11のようになります。

リスト11:prepareCocktailmemo()メソッド(Kotlin版)
class MainViewModel(application: Application) : AndroidViewModel(application) {
  :
  fun prepareCocktailmemo(cocktailId: Int, cocktailName: String) {
    viewModelScope.launch {
      var cocktailmemo = _cocktailmemoRepository.getCocktailmemo(cocktailId)
      if(cocktailmemo == null) {
        cocktailmemo = Cocktailmemo(cocktailId, cocktailName, "")
      }
      cocktailmemoLiveData.value = cocktailmemo
    }
  }
  :
}

 ほぼ、リスト10のJavaコードをKotlinコードに置き換えた内容になっています。ただし、リスト11で特徴的なのは、戻り値がなくなっていることです。前回のリスト11ではコルーチンへの対応のため、Jobオブジェクトを戻り値としていましたが、LiveDataを利用すると、その必要がなくなります。MainActivity側のコードは、リスト12のようになり、前回のリスト5で用意していたコルーチンスコープが不要となります。

リスト12:MainActivityでカクテルリストが選択された時の処理(Kotlin版)
val cocktailName = parent.getItemAtPosition(position) as String
_mainViewModel.prepareCocktailmemo(position, cocktailName);

まとめ

 Android Jetpackについて紹介していく本連載の第4回は、いかがでしたでしょうか。

 今回は、データ更新に応じてUI変更を自動実行できるLiveDataを紹介しました。このLiveDataを利用することで、アクティビティやフラグメント内のUI変更処理をオブザーバにまとめることができるようになります。

 実は、このLiveDataを自動生成できる仕組みがRoomにはあります。その仕組みを利用した方が便利な場合もあります。次回は、そのRoomによるLiveDataの自動生成とLiveDataに似た仕組みであるKotlinのFlowを紹介します。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook<個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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