開発現場に浸透するAI活用、一方でテストはどうか?
続いて和田氏は、会場に向けて「ChatGPTやGitHub Copilot、GitHub Copilot
chatなど、AIによる開発支援ツールを使っている人、手をあげてください」と問うた。手を挙げたのは3割程度。和田氏によれば、前週広島で行われた開発者カンファレンスでは9割もの人が手を挙げたという。「日本でも、何らかのAI開発支援ツールやサービスを使いながら開発することが、現場レベルでかなり浸透してきたという肌感覚を持っている」と和田氏は話すが、海外ではどうなのだろうか。
川口氏は「海外でも似たような感じ」と語る。「テクノロジーの本物感が半端ないから、ちょっと試してみようということになっている。ただ、みんなまだ試行錯誤の段階で、どういうふうに定着していくのかは、まだまだこれからという印象を受ける」。近澤氏も「AIを活用して次の絵をどう描くかについては、世界的に模索中ではないか」と続けた。
Autifyのように、ソフトウェアテストにAIを活用する事例は増えてきている。「テストだけでなく他のサービスでも、普通にAIが機能の一部として使われるようになってきた」と近澤氏は語る。「テストの人たちは、LLM(大規模言語モデル)ではなくOCR(光学的文字認識)や回帰分析のような、もっとマシンラーニングみたいな文脈で昔からAIを部品として使っていたから、ある意味で先行している例になっている」と川口氏も同調した。
一方で、川口氏は「QAの守備範囲が非常に広い。テスト対象も、部品単位のテストもあれば結合テストもある。使うツールもレイヤによって変わってくる。一人がすべてを見なければならない状況がある。QAではみんながフルスタック・エンジニアだ」とも指摘する。「システムと外部世界との接点がQAではいつも苦労するところだ。このファジーで曖昧な部分にAIを活用できる余地があるはずだ」と川口氏。
また昨今、ソフトウェアを作る側にもAIが組み込まれているため、却ってテストの難易度が上がっているのは大きな課題だ。「既存のソフトウェアテストの生産性はかなり上がっているが、対象のソフトウェアの複雑性、不確実性が上がった結果、テスト自体は自動化の度合いが退化している」と和田氏は指摘する。近澤氏も「LLMや生成AIは同じインプットに対して同じアウトプットが出ることがないので、そこをどうやって担保するか各社が模索中だ。出てきたアウトプットをまたLLMで評価するなどの新しい観点が必要になるだろう」と付け加えた。