商業出版への第一歩──出版社に声をかけてもらうには?
全国の書店に並ぶ本の執筆を目指して、出版社から声を掛けてもらうにはどうしたら良いのか。商業出版の企画には、出版社主導と著者主導の2つのアプローチがある。
出版社主導の場合、編集者が企画を立てて執筆できそうな著者を探す。この時の著者の探し方としては、過去に執筆を依頼した著者に当たったり、その著者を通じて企画のテーマで書けそうな人を紹介してもらったりすることが多いそうだ。それでも良い著者が見つからないときには、関連する技術同人誌やブログなどを書いている人に声を掛ける。佐々木氏が最初に出版社から声を掛けられたのも、あるテーマで検索するとトップに表示されるブログを書いていたことがきっかけだったと話す。
一方、著者主導の企画では、著者自身が書きたいテーマの企画書や技術同人誌を出版社に持ち寄る。出版社主導と著者主導のどちらのアプローチでも、出版社の編集者は、一冊の本を書ききれる力量を持った著者を探している。そのため、実績としてブログや技術同人誌で積極的にアウトプットをしていることが重要だ。
技術同人誌とは──本づくりのすべての工程を自分で手掛ける楽しみ
一方で技術同人誌は、企画から執筆、編集、組版、校正、そして印刷/製本、販売まで、すべて著者自身が手掛ける本のことを指す。一見工程が多くて難しそうに感じるかもしれないが、適切なツールを使えば比較的簡単に技術書を制作することができる。
特に、前述したオープンソースの「Re:VIEW」は、電子や紙書籍の制作ツールとして技術同人誌の世界ではデファクトスタンダードになっているという。「Re:VIEW」について解説すると、組版処理システム「LaTeX」をオーバーラップするエンジンで、文章をLaTeXに変換して、PDFやEPUBなどの出力フォーマットに変換してくれる。
また、印刷/製本には同人誌出版をバックアップしている印刷会社を利用するのがおすすめだ。例えば技術同人誌イベント「技術書典」のバックアップ印刷所として名前を連ねる「日光企画」は、「Re:VIEW」に同社向けのフォーマットも用意されている。佐々木氏は、「技術同人誌には、自分で印刷部数を考えられる楽しみもある。個人的に、何部刷るかを考えるときが一番好き」と語った。
さらに、技術同人誌の販売には、オンラインショップや「技術書典」「技術書同人誌博覧会」などの頒布会を活用すると良い。これらのイベントやプラットフォームを通じて、多くの読者に自分が書いた本を届けることができる。
新しい著者にも大きなチャンス、AWS本を書いてみよう
最後に、佐々木氏はAWS関連の本への所感を語った。AWSマーケットは非常に大きく、ニッチなテーマでも十分に大きな市場がある。また、技術の進化が速いテーマのため、新しい著者にとっても大きなチャンスがあるテーマだと指摘した。佐々木氏は最後に「本を書くには普段からアウトプットを行う素振りが大事。そしてチャンスが巡ってきたら躊躇せず打席に立とう」と述べ、セッションを締めくくった。