SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

キーパーソンインタビュー(AD)

Gmailの新ガイドラインで知っておくべき影響と対策、メール技術のスペシャリストが語るメールのあり方とは?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 Gmailは、セキュリティやユーザー体験を向上させ、受信者を保護することを目的とし、メール送信者向けガイドラインを厳格化した。具体的には、送信メールを認証すること、未承諾のメールや迷惑メールを送信しないこと、受信者がメールの配信登録を容易に解除できるようにすることが送信者に求められる。これらは2024年2月から段階的に適用が開始されている。Gmailの方針のほか、現在のメールを取り巻く状況や事業者への影響について、メール配信サービス「Twilio SendGrid」を提供する株式会社構造計画研究所の専門役員でメール技術のスペシャリストの中井 勘介氏に聞いた。

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Gmailの新たな規制、その目的と開発者への影響とは?

 中井氏は、18年前に新卒で構造計画研究所にエンジニアとして入社して、システム開発に従事していた。クラウド技術が注目され始めた10年ほど前、新技術への関心から自ら情報収集やコミュニティ活動に積極的に参加していた。その頃、会社ではクラウド型メール配信サービス「SendGrid」の事業立ち上げプロジェクトが始まり、中井氏が担当者として選ばれた。

 その後構造計画研究所は、2013年12月から日本でSendGridのリセラーパートナーとしてセールス、マーケティング、サポートを一手に担っており、中井氏はエバンジェリストとしても活動している。現在ではチームのマネジメントに注力しているが、技術的な背景を活かし、Gmailの新ガイドラインに関するセミナーで登壇するなどしている。

 中井氏は、Gmailの新たなメール送信者向けガイドラインが定められた背景に、メール送信が依然として増加していることがあると指摘する。

 メールアドレスは世界で最も普及しているデジタルIDであり、個人間のコミュニケーションはもとより、マーケティングツールとしての重要性が年々増している。その結果、スパムメールや標的型攻撃、ビジネスメール詐欺などの問題が深刻化し、今回のガイドラインが制定された。

 「受信者を守るため、SPF、DKIM、DMARCなどの送信ドメイン認証の技術が進化してきました。Gmailのガイドラインの変更によって、日本でもこれらの技術の普及が進んでいるようです。また、日本ではまだあまり見られませんが正当な送信者からのメールには分かりやすくロゴを表示する「BIMI(Brand Indicators for Message Identification)」という仕組みもあり、業界全体でのセキュリティ強化の動きを感じています」(中井氏)

 中井氏は、Googleのような影響力のあるプラットフォーマーが「対応しなければメールを受け取らない」という厳しい規制を行ったことを歓迎している。以前は、業界でのメール認証強化が「できればやった方がいい」という努力目標に過ぎなかったため、ユーザー保護の技術が普及せず、被害が拡大していた。

 Gmailのガイドラインは、ただメールが届けば良いというわけではなく、「相手が望むメールのみを送るべき」という考えが元になっている。たとえそのメールが形式上適切であっても、望まれていないものは送ってはならない。送信事業者は迷惑メール率を0.1%以下に抑えるように努め、受信者による配信停止が容易にできる方法を用意する必要がある。

 「送信者は明確なオプトインの取得に加え、その後も継続的に受信者の意向をウォッチしていく必要があります。たとえば、イベントに参加すると、スポンサーからのメールが頻繁に送られることがありますが、関心がない人や、関心がなくなってしまった人にも送られることも多いと思います。今後はそのようなメールは推奨されなくなるでしょう」

 中井氏によると、最近のGmailなどのメールサービスでは、ユーザーが全く読まないメールが自動的に迷惑メールフォルダに分類されるようになっているという。

 例えば、開封もせず、クリックもしないプロモーション目的などのメールは、最終的には迷惑メールフォルダに分類されてしまう。もちろん受信者が迷惑メール報告をした場合も同様である。そのため、受信者のエンゲージメントや迷惑メール率をモニターしていくことが重要だ。

 Gmailの場合は、Google Postmaster Toolsを使って迷惑メール率を確認することが推奨されている。Yahoo!、Outlook、AOLなど一部のメールプロバイダには、送信したメールが迷惑メールとして報告されたことを通知してくれる「フィードバックループ」という仕組みがある。迷惑メールとの報告を受けた場合はその宛先への送信を停止しなければならない。

 配信停止方法も分かりやすくする必要がある。配信停止にログインが必要だったり、「配信停止」という件名のメールを送信しなければならなかったりと複雑な手続きを要する場合、迷惑メール報告されるリスクが高まるからだ。新ガイドラインでは、そのような行為を避け、ワンクリックで容易に停止できることが求められている。

 具体的にはRFC8058に従うことが求められており、設定することで受信者はGmailのインターフェースからワンクリックで解除要求ができるようになる。

次のページ
「届いて当たり前」から「適切に届ける」への転換

関連リンク

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
キーパーソンインタビュー連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井山 敬博(イヤマ タカヒロ)

 STUDIO RONDINOのカメラマン。 東京綜合写真専門学校を卒業後、photographer 西尾豊司氏に師事。2008年に独立し、フリーを経て2012年からSTUDIO RONDINOに参加。 STUDIO RONDINO Works

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社構造計画研究所

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/19414 2024/05/23 12:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング