SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2024 セッションレポート

ソフトウェアテストは「段階」ではなく「活動」である──ブロッコリー氏が問う、プロダクトに求められる品質とは何か

【16-C-7】テストの完了をゴールにしない!~仮説検証を繰り返し、開発・QA・ユーザーが交流しながら開発することで見えてくる理想の姿~

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「プロダクトに求められる品質」を自分たちで定義する意味

 最後の事例として、ブロッコリー氏は「ユーザーと協力して、実際にオペレーションが問題なく進行できるか確認する」を挙げた。これは実際の開発の中で、ピッキングに関する大きな新機能のリリースを行った際に、パートナーの実店舗に持ち込んで試験するという取り組みだ。

 この新機能は3回に分割してリリースを行い、1回目のリリースでは、実店舗に開発したアプリを持ち込んで10Xの社員が擬似的にピッキングを実行することで、オペレーションができることを確認した。2回目のリリースではスタッフ研修に同席し、パートナー側に新機能を試してもらい、習得性や操作性に問題なく運用できるかという確度を高めていった。この2回のリリースを経て、3回目に正式リリースを行ったという流れだ。

分割リリースでは観点を明確にしたことで目的意識が高まった
分割リリースでは観点を明確にしたことで目的意識が高まった

 テストにおいては、先方とのやり取りの中で「2回目のリリースまでは、たとえば計算ミスがあったとしても目をつぶってもらい、ちゃんと業務フローが回るのかを見てほしいと要望した」と回顧する。結果的に、リリースを分けたことでフィードバックをもらいながら調整でき、「この状態だと使いづらい」といったポイントを3回目の正式リリースまでに調整できたという。

 ブロッコリー氏は、研修などを通じてスタッフ側の新機能に対する理解度も上げられたことも収穫として挙げる。「こうした取り組みの結果、障害も発生せず、問い合わせも数件程度と追加コストをかけずに運用できている」というから、その有効性はかなりのものだ。

 ここでブロッコリー氏は、品質についても補足した。今回の分割リリースにおいては、各段階ごとに「業務遂行性」や「習得性」、「運用操作性」を満たすべき品質として定義した。ここで重要なのは、こうした定義は単に既存のモデル(品質特性や狩野モデル、当たり前品質)から引用したわけではないことである。

 「プロダクトに求められる品質は何なのかを自分たちで定義できないと、結局のところ使い物にならないプロダクトになりがちだ。そのため10Xでは品質について、経営層も含めた全社で議論を行っている」とブロッコリー氏は胸を張る。

 講演の締めくくりとして、再び「継続的テストモデル」へと立ち返ったブロッコリー氏は、「テストの完了をゴールとせず、さまざまな場面で仮説検証を繰り返しながら、QAやユーザーと共に開発を進めることが重要」と、今回の公演を総括する。DevOpsを実践するには、「リリースして見つかったフィードバックを次に活かすというループを意識して、テスト活動をやっていく」ことが求められると語り、講演は終了した。

DevOpsのサイクルの中で随所にテストを行うことで多くの意義が生まれる
DevOpsのサイクルの中で随所にテストを行うことで多くの意義が生まれる

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Developers Summit 2024 セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/19774 2024/11/28 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング