なぜ目標設定に対して苦手意識が生まれてしまうのか
エンジニアによって好き嫌いが分かれやすい目標設定。講演は、目標設定の意義を解説することからスタートした。小田中氏は目標がもたらすものとして、「明確な方向性とゴールへの集中」「モチベーション向上とパフォーマンス発揮」の2種類のメリットを挙げた。
ビジョン達成に至るまでには多くの選択肢から最善を選ばなければならないが、選択肢が多すぎると進むべき道を見失ってしまう。これが「明確な方向性とゴールへの集中」であり、小田中氏は目標設定を「ビジョンへの道のりを見極め、自分たちの手札を見極め、それで解決する課題を定める」ことだと定義した。
「モチベーション向上とパフォーマンス発揮」に関しては、Edwin LockeとGary Lathamの目標設定理論を引用。この理論によれば、「少し背伸びをした」程度の難易度かつ、強く達成したいと思える目標が、最もパフォーマンスを引き出し、成長を促すという。
目標設定の利点について説明したところで、小田中氏は会場のエンジニアに「目標設定は好きですか?」と問いかけた。多くのエンジニアは好きだと反応を示したものの、「そうでもない」「大嫌い」という意見も散見された。
こうした苦手意識が生まれる理由については、「納得感のない目標」と「目標達成率と評価の直結」の2点が挙げられた。まず前者について、小田中氏は「なぜこの目標を目指すのか」が見えなければモチベーションが上がらないとしたうえで、そうした目標のもとで困難に直面すると「まあしょうがないよね」となってしまい、最終的に目標未達に終わると示した。
後者に関しては、目標を達成できないことがすなわち低評価につながってしまうと、チャレンジングな目標を避けるようになるという。そして保守的なラインに留まることが続くと、「ワクワク感が薄れ、組織が目指す理想像への道のりも遠のいてしまう」のだ。
小田中氏によれば、組織の理想像と個人のモチベーションを結びつけるには、「目標が具体的かつ明確であること」「自分を含めたチーム全体がミッションに共感し、この目標を目指したいと思えること」の2点が重要だという。このうえで目標と評価を切り離し、メンバー同士の相互理解がある環境を整えることで、大きな成果を生み出せる目標を設定できるわけだ。