苦手意識を乗り越え、「良い目標」を設定するには?
ここで小田中氏は良い目標設定の3要素として、チームビルディング・SMARTな目標設定・OKRを提示した。
まずチームビルディングについて、「いきなりゴールを立てるのではなく、『同じバスに乗る』ところから始めるのが非常に重要」と語る小田中氏。異なるバックグラウンドや経験を持つメンバーの価値観を把握し、共通認識を形成することから始めるべしと語った。
共通認識を作るためには相互理解が不可欠だ。その具体的な手法としては、インセプションデッキを用いてチームのミッションやビジョンなどを明確にする手法が挙げられた。特にチームの存在意義を形作るエレベーターピッチの部分については、全員で話し合うことが望ましいという。
加えて、ディスカッション時にメンバーに求められるマインドセットとして「Disagree and Commit」の概念も挙げられた。これは押し付けや妥協なく互いの意見を主張し議論を尽くした上で、チーム全体として1つの結論を選択することで共通認識が生まれるという考え方だ。
さらに小田中氏は、相互理解を深めるために「ジョハリの窓」という概念も紹介。これは、「自分も、他人も知っている領域」を示す「解放の窓」を広げることで相互に自己開示を進め、理解を進めるというものだ。
SMARTな目標については、掲げた目標が以下の5点に沿っているか点検することが求められるとした。
- Specific:改善的な目標を具体的に定めている
- Measurable:定量的であるか、進捗を示す指標がある
- Assignable:誰が取り組むのかを明確にする
- Realistic:達成が現実的であることを示す
- Time-Related:いつ結果が達成できるのか明らかにする
最後の要点はOKRだ。OKRとは、O(Objectives・目標)とKR(Key Results・主要成果)が対になっている目標管理の手法である。このとき、KRには定量的な達成指標を設定することで、目標達成の度合いを確認することが一般的だ。
小田中氏はその実例として、「このセッションに参加したエンジニアが、目標達成に向けて前向きに活動する状態」をOとした場合を挙げる。「このOを達成するには、『公演の満足度が高かった』状態を目指すことになる。そして、その達成度を測るには、『小田中がベストスピーカー賞を受賞する』『書籍ブースで小田中の著書が売り切れる』などが定量目標になり得るだろう。ここでは分かりやすく私の願望を挙げたが(笑)、考え方としてはこのようなものだ」。
一方で、OKRは従業員評価のためのツールではないという点には注意が必要だと小田中氏は補足する。例えば、A氏には10億円の年間売上目標が課せられ、実績として2億円を達成。同じ職位のB氏には100万円の目標が課せられ、200万円を達成したとする。この場合、より事業売上に貢献したのはA氏であるにもかかわらず、目標率ベースで評価するとB氏のほうが評価が高くなってしまう。
さらに言えば、A氏は高い目標を設定したからこそ、予想外と言える売上を積み上げた(B氏も、より高い目標を設定していれば、さらに高い実績を出せた可能性がある)ともいえる。
「このように、完全には達成できなくても、そのすごい高い目標を目指すことで、予想外の成果を上げていく。それがOKRの強み」。小田中氏は、OKRの効能をそう示した。