テストは増え続ける、でもボトルネックにはできない
今、あらゆることが爆速で進む。飛行機は、生まれてからユーザー数が5000万人に到達するまで68年かかった。自動車は62年。電話は50年。テレビは22年。インターネットは7年。ここから情報の伝達が早くなり、YouTubeは4年、Facebookは3年。そしてPokémon GOになるとわずか19日。朱峰氏はこうした状況を鑑みて「超爆速な時代」と評する。
となると、時間をかけてはいられない。どんなに素晴らしいアイデアでも開発や準備に何年もかけていると、誰かに先を越されてしまうかもしれない。さらに市場のニーズも変わる。時間をかけるほど、リスクは高まる。
満を持して完ぺきなものをリリースしたとしても、市場に受けいれられるか分からない。朱峰氏は「アジャイルは成功を保証するものではないと考えていますが、失敗のリスクを少しでも少なくするプロセスです。こまめに出して軌道修正していくのがアジャイルの本質」と話す。アジャイル開発は不確実な時代においてITビジネスリスクを低減させるシステム開発のスタイルと言える。
いまはあらゆるソフトウェアやプロダクトが継続的に進化する時代である。そうなるとテストも継続的に追随する必要がある。これは大変なことだ。朱峰氏はこの理由について「回帰テストがつきまとうからです」と説明する。手を入れていないところへの影響も確認しなくてはならないので、テスト頻度が増加すればするほどテストが津波のように押し寄せる。
さらに大規模アジャイルについて考えると、大きく分けてエンタープライズ企業の事業トランスフォーメーションのパターンと小さく始まった事業がスケールするパターンがある。スタート地点が異なるのでいろいろと差異はあるものの、朱峰氏は「基本的にはどちらも分割と統合」と言う。ただし分割の仕方がいろいろと進化している。
どんな形にしても分業や分割をすると、全体感がつかみにくくなる。さらに、先述したような回帰テストの問題も顕著になってくる。そのため大規模アジャイル実践では、分業や階層化に起因して全体的な統一感が無くなることに歯止めをかけることや、統合テストがボトルネックにならないようにテスト活動を効率化することに気を配ることが求められる。