現場から変革するための「5つのヒント」
こうした取り組みは少しずつ実を結びつつあり、関電システムズでのアジャイル開発件数は着実に増加している。マインド面でも大きな変化が見られ、当初見られた「アジャイルは自分たちには合わない」という思い込みが消え、「どうやったらできるようになるか」という考えのうえでCoEへ積極的に相談する場面が増えてきたという。
アジャイルが浸透し、変革の中にある関電システムズ。西内氏は「現場目線での変え方のヒント」として、以下5点を挙げた。
- 「べきである」と「そうである」ことは違うこと
- 小さな一歩でも継続すること
- 生き延びさせること
- 仲間を見つけること
- 自分の「想い」を大切にすること
1.は目の前の現実から目を背けず、会社の仕組みや文化がそうさせている背景まで理解することが必要だという点だ。西内氏はこの点について、「そのエンジニアが持つ背景が"合理的判断”をさせていると理解して、その背景事実に対して目を向けていく」ことが重要だと指摘する。
2.は変革したい対象が大きいほど越えなければならないハードルは高いが、それでも手を変え品を変え、状況に応じた施策や取り組みを打ち続けなければならないという点だ。
3.は組織の中で何かに取り組み続けるための予算を確保しなければならないため、計画予算を作って施策を生き残らせるという点だ。また、ここの点には自らの生存も含まれる。「無理をせず、自分が続けられる範囲でやっていくことはすごく大事」なのだ。
4.は社内外を問わず仲間を作ることで、自分が孤独になることを防ぐという点だ。先進的な取り組みは孤独になりがちで、孤独になってしまうと施策も続かないのだ。西内氏は、勉強会コミュニティなどを通じて仲間を作ることの重要性を改めて強調した。
5.は西内氏自身が4年間結果を出せずにいた中で、「この取り組みを続けることで実現したいビジョンがあった」からこそ、耐えられたという経験に即する。西内氏は「新しい取り組みにチャレンジするときは、『なぜそれをやらなければならないのか』を明確にすべき」と指摘する。
「アジャイル開発の推進において、必ずしも"すごい人"は必要ない」と語る西内氏。変革の主役は現場にいる普通のエンジニアであり、自分たちができる方法で着実に一歩一歩前に進んでいくことが重要。そして、その過程で見出した「想い」を大切にし続けることが、長期的な変革の成功につながっていくのだ。