自分のやりたいことを明確にし、「右往左往しながら」進むことでゴールへたどり着く
ここまで、何度か「軸を決める」ことの重要さを強調してきた曽根氏だが、キャリアにおいては、「キャリアアンカー」と「キャリアドリフト」をもとに軸を定めることを推奨する。
「キャリアアンカー」とは、自らのキャリア形成において「譲れない価値観」を決めるものだ。心理学者のエドガー・シャイン氏が提唱した概念で、専門・職能や経営管理、独創性など、7つの主要な価値観からなる。
曽根氏は、「必ずしもこれらの項目に縛られる必要はない」としつつ、「今は、誰もゴールを設定してくれない時代。しかも、"能力が伸びなければ自己責任"という風潮もある。仕事に際してさまざまなものを取捨選択せざるを得ない環境において、自分自身が何を選択するか、その軸は明確にしておくべき」と説く。
もう1つの手掛かりとなる「キャリアドリフト」は、ゴールまでまっすぐ進むのではなく、状況に応じて右往左往しながら進んでいくことを許容する考え方だ。たとえば、データベースエンジニアからマネージャーへの転身を求められた場合、一見すると直線的なキャリアコースから外れたように見えるかもしれない。しかし、キャリアの軸にあるのが「問題解決がしたい」であれば、実際にはゴールに近づいていると捉えることもできる。
ちなみに、「問題解決がしたい」という思いは曽根氏がデータベースエンジニアを目指した本質的な理由であり、マネージャーやCTOなどさまざまな職種選択をする際に重要視してきた軸でもある。「自分なりのゴールに向かって進んでいれば、道のりは右往左往してもよい。予期せぬ機会も受け入れながら、目の前にある必要なことに1つずつ取り組むのも立派な戦略だ」と、最短距離にこだわる必要がないことを示した。