マーケティング業務を刷新するプロダクト開発とは?
北川:続いては、弊社の広告マーケティング業務とは何なのかについて少しお話したいと思います。主には、クライアント様から依頼を受け、マーケティング戦略を立案してコミュニケーション戦略に落とし込み、メディアプランニングにつなげていく流れが一般的です。
複数の職種をまたぐリレー形式の業務になりやすく、近年は一層専門性が高まってきたので、縦割りが進み、分断しがちになるところも出てきています。

期待されているのは、一気通貫したプランニングの実現です。ただ私も広告業界が長いため感じるのですが、個々のプランナーの独自のマインドが強く反映されるため、体系化や標準化が難しい現状があります。

クライアントに提案する際は、課題に合わせた個別最適化が求められます。他のプラナーとの差別化された違う企画提案が必要とされ、社内の競争も活発です。そうなると、オリジナリティをどんどん高めないといけません。
クライアント情報の高い機密性により、知見の共有には制限がありますが、個人やチーム内に蓄積される暗黙知を形式知として整理していく必要があります。さらに、この形式知を標準化し、「継承知」としてシステム化することで、組織全体で活用できる仕組みを構築していきたいと考えています。

そのときの企画提案における着想力、想像力は再現性が難しいと考えていますが、なるべく仕組み化してプランニング業務の効率化・高度化をやってきたと思っています。
効率化観点では、業務プロセスを型化して生産性を高めることも重要となります。高度化の観点では、ハイクオリティな分析などをよりハイレベルにしていく発想もあれば、一定レベルの分析アプローチなどを平準化する場合もあります。
そういう観点で何を優先的に開発するのかを相談しながらやっています。

クリエイティビティとテクノロジーの融合とは?
北川:クリエイティビティとテクノロジーの融合は、プラナーやクリエイターの業務、そしてマーケティングプランにおいて、予想以上の成果を上げています。ただし、個人のセンスをどこまでシステム化して再現できるかが課題となっています。

アイデアの言語化や、効果的な伝達方法において、一定のルールやパターンといった“型”が生まれます。言語化するときも、話法や構文など型化し得る技法を取り入れているところがあります。
現在コンセプトメイキングとして、商品やブランドのコアになるような発想をサポートしてくれるプロダクトを開発しています。具体的には、生活者インサイトの導出や競合との差別化をAIとの対話を通して実現するプロダクトを作っています。

AIの役割とは?ヒトとAIの共創について
北川:まさに人とAIの共創というか、AIは人に取って代わるものじゃなくて、伴走者的な役割だと考えています。
大﨑:我々は今いろいろ試行錯誤している中で、こういうところに使えそうだなというアイデアをプロダクトに組み込む作業を行っています。AIとの共創における取り組みの一つが、今回のコンセプトメイキングです。
何かサービスを作るときに、ChatGPTなどのAIサービスから提案されるアイデアや商品のコンセプトをそのまま採用することは、ほとんどありません。やはり人が考え抜いたコンセプトで進めていくわけで、そこに人の価値があると思っていますし、プレゼンスがあると考えています。
毎回社内の各領域における第一人者やスペシャリストと壁打ちをしながら、一つの仕事を完成させることができたらクオリティが上がりますが、それをやり続けることもできません。
そこで、その人たちがやっているパターンや発想方法を型化して、エージェントとして学習させた機能を活用することを考えています。社内のスペシャリストをAIエージェント化することで、業務の効率化、高度化を図っていくというわけです。
