FPTが目指す次世代のAIアプリ開発
FPTは、IT領域で多角的な事業を展開する、ベトナム最大級のデジタルコングロマリット。世界30か国に85のオフィスを抱え、日本法人はFPT ジャパンホールディングスとして2005年に設立された。

同社は先進テクノロジーを活用したコンサルティングソリューションを提供するほか、AWSやSAP、マイクロソフト、NVIDIAなどの大手企業とパートナー提携し製品を提供している。また、現在は「AIファースト戦略」を掲げ、AI人材の強化、およびさまざまなAIソリューションの提供に力を入れている。
同社エバンジェリストの鈴木氏は、新ソリューション「FPT AI Factory」および「CodeVista」を紹介。これらを活用することで、次世代のAIアプリ開発をどのように実現できるのか解説した。

FPT AI Factory
「FPT AI Factory」は、NVIDIAの最新GPUを搭載したクラウドプラットフォーム。現在先行予約が開始されている新製品だ。NVIDIAのエンタープライズ向けのAIソフトウェア群を中心に、複数のレイヤーでさまざまな機能を実装している。

AIアプリケーションからインフラまで、包括的なスタックを提供するのがこのFPT AI Factoryである。
製品のコンセプトとしては「AIジャーニーの成功を加速する」を掲げている。NVIDIAのGPUを搭載した最新のAIインフラが特徴だ。また、鈴木氏は「生成AIだけでなく、デジタルツインやレンダリングなど幅広く使っていただきたい」と話し、手ごろな価格設定にこだわっていることを強調した。エンタープライズレベルのセキュリティとコンプライアンスが確保されている点も安心だ。
AI インフラストラクチャ
AI Factoryが提供するソリューションのコアは大きく4つ。「FPT AIインフラストラクチャ」「FPT AI スタジオ」「FPT AI 推論」「FPT AIエージェント」である。
FPT AIインフラストラクチャは、メタルクラウドやGPUマネージドクラスター、GPUコンテナを組み合わせて使う。ニーズに合わせてシームレスに拡張できる点が強みだ。
鈴木氏は、FPT AIインフラストラクチャのソリューションとして、ベアメタルGPUサーバーとGPUクラスターのデモを紹介した。
ベアメタルGPUサーバーでは、最初にGPUの性能(H100・H200)とOSを選び、イメージバージョンを選択。認証に必要なSSHキーを選択し、最後に「作成」ボタンをクリックすればサーバーが作成される。「一つのインスタンスを立ち上げるだけで、非常に簡単にデプロイができるようになっている」と鈴木氏。モニタリング画面では、メトリクスやログを監視することも可能だ。
GPUクラスターは、CPUとGPUを両方立ち上げる必要があり、Worker Group 1でCPUノード、Worker Group 2でGPUを選択する。GPUタイプはNVIDIA Tesla A30を選択。すべてテンプレートになっているので、選択して設定していくだけでNVIDIA GPUクラスターの構築を開始できる。
鈴木氏いわく「パブリッククラウドでクラスタを立ち上げたことがある方なら、簡単に使いこなせるはず」だという。
FPT AI スタジオのデモ
続いて紹介された「AI スタジオ」は、AI/MLの開発、評価、展開のためのインテリジェントなツールの包括的なセット。AIモデルの構築、事前トレーニング、ファインチューニングを実現するほか、モデルのライフサイクルを管理し、共同作業するための「モデルHub」を提供する。
鈴木氏はモデルHubのデモを行った。オープンソースの大規模言語モデルのLLaMAを例に、テキスト分類タスク向けにファインチューニングするデモだ。
FPT AI StudioのModel HubからベースとなるLLaMA 3.2 1Bモデルを選び、Fine-tuningをクリック。テンプレート選択画面でBlankを選んで独自のパイプラインを構築し、学習データと評価データをアップロードする。ここで重要なのは、学習の設定でNVIDIA NeMo Trainerを選択すること。その後、GPUインスタンスを指定してSubmitすればファインチューニングが行われる。
「コマンドだけでは難しい部分はモデルの微調整も可能」だと鈴木氏は補足した。
FPT AI推論
3つ目のコアであるAI推論として、「モデル・サービング」機能と「モデル・アズ・ア・サービス」が提供されている。モデル・サービング機能では、プライベートかパブリックかにかかわらずすべてのモデルを管理できる統一されたインターフェイスを提供する。
鈴木氏は、モデル・サービングのデモを見せながら利用方法を紹介。ポイントとして「リソースタイプで『Custom』を選ぶことで、vCPUやRAM、GPUの数を細かく設定できるので、NVIDIA GPUの性能を最大限に発揮できる」と推奨した。
デプロイされたAIモデルは、APIゲートウェイ経由で簡単に使えるようになる予定だという。
鈴木氏は、このモデルを使ってRAGを実装し、DeepSeekのR1の論文を読み込ませたデモも紹介した。Ollamaのインストールと起動から、ドキュメントの読み込みまでよどみなく進行。論文を読ませると、概要のまとめなど指示通りの答えが返ってくる様子が示された。
今回紹介されたFPT AI Factoryは、3月に正式オープンする予定。先行登録すると割引などのベネフィットを受けることができる。
AI駆動の開発をアシストする「CodeVista」
セッションの後半では、AI搭載のコーディングアシストツール「CodeVista」を使った、AI駆動開発について解説された。
GitHub Copilotの普及をはじめ、AI駆動開発への関心はますます高まっている。その中で、FPTは開発にAIのサポートを組み込んだソリューション「Vistaシリーズ」を提供している。
このシリーズには、要件定義や設計書制作を支援する「BaVista」やテスト自動化の「TestVista」などが含まれている。今回紹介された「CodeVista」もその一つだ。
CodeVistaは、生成AIを搭載したIDE内のアシスタントで、コーディングに関する質問に答え、コーディングタスクを支援してくれる。コード補完やデバッグのサポートなどを行う、いわゆるAIエージェントだ。
特徴は、プロンプトライブラリやドメイン特化対応、インターネット検索が可能であること。また、対応しているプログラミング言語が幅広い点も強みだ。鈴木氏は「COBOLもカバーしていて、エンタープライズからの引き合いが多い。昔のコードをモダン化していくために、CodeVistaを活用いただいている」と語った。IDEも、VS CodeからIntelliJ IDEA、Android Studioまで幅広く対応している。
「AIモデルは、OpenAIやClaudeといった多様なモデルを呼び出せる。対応モデルは『今後も増えていく予定』」と鈴木氏。
また、クラウドだけではなくオンプレミスの展開にも対応していることもポイント。セキュリティ対策にも力を入れており、Trust Layerによって機密情報を保護する。
CodeVistaが支援する作業とアプローチは下図の通りだ。開発者のタスクをチェックして要件を読み取り、ソースコードの作成をサポートする。その後の、ユニットテストの作成・実行やバグの修正、レビューコメントもCodeVistaが効率化してくれる。

鈴木氏は、CodeVistaのデモを紹介。COBOLで書かれたコードを読み込ませ「ソースコード全体を日本語で解説してください」と指示すると、概要を返してくれる様子が示された。開発者が知らない言語で書かれたコードでも、こうした解説を出力することで、このコードをJavaにするべきか、C#にするべきかといった判断ができる。
「CodeVistaでユニットテストなども効率化することで、皆さんの時間を他のところに使っていただける。生産性を上げていただけるツールになっています」(鈴木氏)
最後に、FPTのマルチAIエージェントを活用したビジネス効率化の例として、伊藤忠商事の事例が紹介された。Ivy ChatとCodeVistaを使った取り組みだ。
同社は、アジリティとスケーラビリティを追求するAI戦略を掲げており、その実現のためにFPTのソリューションを活用してコアAIプラットフォームを構築した。わずか数か月で完成したという。
マルチAIエージェントであるIvy Chatを活用することで、ビジネスチームはプレゼンテーションを瞬時に多言語に翻訳できるようになったほか、開発チームにおけるCodeVistaの活用も進んでいる。
鈴木氏は「この事例に限らず、さまざまな企業でAIソリューションの活用が進んでいる。公開しているものもあるので、参考にしていただけたら」と語り、FPTのAIソリューションの活用可能性の広さを訴えた。