国際コンペも受賞!高性能な音声認識を備えたAI議事録サービス
──まずはAiNoteが誕生した背景を教えてください。
2023年4月にLINE WORKS(当時ワークスモバイルジャパン)が、LINEのAI事業を統合したのを機に、社内でAIを活用した新規事業の創出に向けた動きが加速していきました。そのとき私が提案したのが、既存のCLOVA Noteβを法人向け製品として進化させた「LINE WORKS AiNote」でした。
──AI議事録サービスにはビジネス需要があると踏んでのことですか?
そうですね。CLOVA Noteβは2022年5月にリリースしたコンシューマー向け製品だったのですが、2023年の夏頃から急速にユーザーが増えており、AI議事録市場が啓発期に入っているのではないかと市場調査をしてみたんです。すると、世界的な生成AIブームの追い風を受け、AI議事録サービスへの興味・関心が急速に高まっていることが明らかとなりました。
加えて、CLOVA Noteβのユーザー登録数100万のうち、半数は「会議に使用している」というデータもありました。また、そうしたビジネス利用をされているユーザーから「法人版はないのか」とご要望をいただいておりました。LINE WORKSも「LINEを仕事に使いたい」というユーザーの声から生まれた製品だったので、同じ道を辿っているような感じですね。

──なるほど。では、AiNoteの基本的な機能や使い方について教えてください。
「会議を録音する」「録音したデータを文字起こしする」「文字起こしをAIで要約して議事録を作成する」という3つが主な機能です。自社開発のAIを活用した高精度の「音声認識技術」を搭載しており、2024年8月に実施した独自性能評価において、文字正解率および数字認識率ともにNo.1の結果が出ました。
また、ユーザーの満足度が最も高いのは「話者分離技術」です。複数人が会話している音声データの中から、声色によって話者を識別し、それぞれの発言を区切る技術のことですね。こちらは国際コンペティション「DIHARD3(2021年)」で世界3位の性能評価成績を獲得しています。
サービスによっては、物理的にマイクを分けて識別したり、事前に登録しておいた声紋で識別したりしていますが、オフラインに弱い点が課題となっています。なぜなら、前者の場合、オフラインの会議は複数人が同じ場所にいますから、物理的にマイクを分けるのは難しいですし、後者の場合、社外の方とリアルで打ち合わせする際に、「会議の前に声紋を登録させてください」とお願いする必要があり、現実的な使い方とは言えません。
しかしAiNoteなら、オフラインの場で1つのマイクに対して複数人が話しかけても対応できます。コロナ禍が収束して、昨今はオフラインの会議や、オンラインとオフラインのハイブリッド型の会議が増えていますので、AiNoteの話者分離技術が活きる場面も増えているのではないでしょうか。
企業が安心して利用できる!AiNoteの高度なセキュリティ
──AiNoteのセキュリティについて教えてください。
ビジネスチャットの「LINE WORKS」では、すでに多数の国際認証(ISOやIECなど)を取得しており、AiNoteはそのLINE WORKSと同じインフラ環境で運用しています。そのため、中小企業から大企業まで、幅広いビジネスシーンで安心してご利用いただけます。
具体的には、以下のようなセキュリティ機能があります。
- PASS/ログインポリシー
- 2段階認証、携帯番号
- 管理者権限
- ネットワーク管理
- 組織図の閲覧制限
- シングルサインオン(SSO)
──LINE WORKSと同じインフラ環境ということは、LINE WORKSを導入している企業は、メンバーや組織のデータをAiNoteに連携することもできますか?
LINE WORKSとAiNoteの認証基盤は統合できますので、1つの管理画面でメンバーや組織を管理していただけます。そのため、管理者がいずれかの製品で「アカウント削除」や「一時停止」を行えば、そのアカウントは無効となり、退職者が過去のデータへアクセスすることはできなくなります。
──ガバナンス面でも安心して利用できますね。
そうですね。ノートの閲覧や共有リンクの作成履歴などもすべてログが残りますし、メンバー単位や所属単位などによってアクセス権を管理できるなど、充実した管理機能で大企業でもご利用いただきやすい設計にしています。
──AiNoteの特徴として、高精度な音声認識技術と、企業向けの管理機能やセキュリティの強化を実現している点について伺いました。それ以外に、他社製品と比較した強みはありますか。
AI議事録サービスの利用にあたり一番課題として聞くのは、文字起こしの単価が高いということですね。AiNoteでは音声認識AIを自社開発することにより低価格を実現しています。企業向けのチームプランだと、月100時間までの利用で月額費用19,800円。時間あたりに換算すると、わずか198円です。
このような料金体系にしているのは、事前調査で「AI議事録サービスの品質には満足しているが、価格が高すぎて経営会議など限られた場面でしか使えない」といった声が多く寄せられたためです。
しかし、議事録はすべての会議で残すことに価値があります。「この会議は録音していいの?」と毎回迷うのは面倒ですし、「あの会議、もしかして録音してなかったかも……」と後で気づいて困ることだってあるかもしれません。1時間あたり200円以下であれば、社内のあらゆる会議で気兼ねなくご利用いただけるのではないでしょうか。
──UI/UX面で工夫しているところはありますか?
AiNoteは、ビジネスチャットの「LINE WORKS」と同様にUI/UXにはこだわりを持っており、「どのような方でも直感的に使える」をコンセプトにデザインしています。AI議事録サービスのような法人向け製品は「利用率が上がらない」という課題も多々あり、直感的なUI/UXがこうした課題の解決に寄与できると考えています。
デザイン面で私が特に推しているポイントは、文字起こしの結果と要約が1つの画面に表示されるところです。要約から実際にどのような会話がされているのか確認したいと思ったら、その部分にすぐ遷移できますし、さらに文字起こしのパートをクリックすると、実際の音声を聞くことができます。また文字起こしの修正も容易に行えます。
これにより、要約で気になったキーワードが、どのような文脈で、誰によって語られたのかをピンポイントで即座に確認・再生できます。ログを遡る手間がありません。

会議の質が向上!あらゆる対話で活用できる「AiNote」の実力
──LINE WORKSではAiNoteをどのように活用されていますか。
現在、AI議事録サービスを導入している企業は、もともと会議で議事録を必ず取るルールがあるところが多いんですね。しかし、実はLINE WORKSでは、綿密な議事録を取る文化がそこまでなかったのです。そのような企業でAiNoteを使うと何が起きるのか、今まさに実験しているところです。
すでに感じているメリットとしては、「言った・言わない問題を回避できる」、会議に参加していない人に対して「次の動きを説明しやすくなった」、会議の内容は知っておくべきだけど「必ずしも自分が参加しなくても良い会議に参加しなくて済むようになった」といったことが挙げられますね。大幅な業務効率化や生産性の向上を実感している最中です。
──ただ録音するだけで、あとはAiNoteが自動で議事録の作成までしてくれるのであれば、負担なく議事録作成が始められますね。ちなみに、開発現場でのAiNoteの導入事例はありますか。
IT情報通信企業でエンジニア向けにAiNoteを展開するという話もいただいています。クライアントとの打ち合わせを録音してAiNoteで議事録を作成しておけば、仕様変更や追加要望などの内容やタイミングが明確に残るので、トラブル発生時の原因究明にも役立ちますし、責任の所在を明確にすることができ、訴訟リスクへの備えにもなります。
特にエンジニアは、生産性向上のために便利なツールを積極的に試す文化がありますが、そこに機密情報である顧客との会議内容やソースコードに関する議論を入力してしまうと、重大な情報漏洩に繋がりかねません。AiNoteは、LINE WORKS譲りの強固なセキュリティ基盤の上で、エンジニアが求める高い利便性を提供することで、このジレンマを解消します。昨今、シャドーITが問題になっていますが、内部統制の観点からも、企業としてAI議事録サービスを導入するのがおすすめです。
──顧客とのミーティング以外にも、開発現場での利用シーンとしてはどのようなものが考えられますか?
AiNoteは1時間あたり200円以下でご利用いただけるので、日常的な部署の会議や、定例会議などでも利用いただきたいですし、1on1でも利用できるのではないかと思います。
会話だけでは流れてしまいがちなことも、ちゃんと言語化されたものを見て振り返れば、互いに理解が深まります。AiNoteを使うようになってから、発散と収束を効率よく繰り返せるようになったので、「コンセンサスが取りやすくなった」というのは、感じているところですね。
さらに、会議でふりかえりを行った際にも、文字起こしや要約があれば、PDCAサイクルがさらに早められるのではないかと思っています。私たちもAiNoteを活用しながら日々実験しているところですね。
──ログが取りづらい領域で前回からどれだけよくなったかなど、明文化しづらいところでの可視化、改善にも役立ちそうですね。プロジェクト管理ツールとも連携できると、さらに便利になりそうです。
はい。現時点では、AiNoteで生成した要約や、共有リンクをプロジェクト管理ツールに貼り付ける運用になりますが、今後はAPI連携や他ツールとの統合を検討しています。
──では最後に、AiNoteの今後の展望をお聞かせください。
日本語に対応しているAI議事録サービスは30種類以上あり、どれがデファクトスタンダードになるのか、みなさん迷われているのではないかと思います。そのような方には、ぜひ一度フリープランでAiNoteの音声認識や話者分離の精度を体感していただきたい。実際に使っていただければ、他社製品との違いをご理解いただけるはずです。
AiNoteはAPI連携も含め、今後もどんどん進化して、より便利なものになっていきますので、どうぞご期待ください。