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Visual Studio 2008徹底入門(AD)

Visual Studio 2008とASP.NET 3.5で広がったクライアントサイド開発

Visual Studio 2008徹底入門(4)

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Visual Studio 2008ではASP.NETの開発効率が大幅に向上しています。本稿では前回の連載よりも、もう少し踏み込んだ機能強化点についてご紹介していきます。

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はじめに

 Visual Studio 2008(以下、VS2008)ではASP.NETの開発生産性が大幅に向上しています。ASP.NET自身の進化もありますが、IDEの進化はWebデベロッパーにとって大きなインパクトを与えました。どれほど便利になったかは、以下の連載を参考にしていただければ理解が深まるかと思います。

 本稿では、これらの連載では触れられなかった、クライアントサイドのテクノロジーを中心に紹介したいと思います。

これまでの記事

対象読者

  • Visual Studio 2008に興味がある方
  • .NET Framework 3.5に興味がある方
  • ASP.NET 2.0の開発経験がある方

必要な環境と準備

 Visual Studio 2008入門第1回の必要な環境と準備を参考にしてください。

ASP.NET 3.5の新機能(本稿で触れる部分)

  • VS2008のWeb開発用のホットフィックスについて
  • UpdatePanelの機能拡張
  • JavaScriptを使用してWebサービスを呼び出す
  • ASP.NET AJAXのWCFサポート
  • JavaScriptを使用したフォーム認証の利用
  • JavaScriptを使用したロール情報の利用

VS2008のWeb開発用のホットフィックスについて

 ASP.NET開発チーム(現マイクロソフトコーポレーション副社長)のScott Guthrie氏によると、今後VS2008では、報告が多いバグフィックスをまとめてパッチとしてリリースしていくことになるとされています。2月8日には、その第一弾となるVWD 2008(Visual Web Developer 2008)とVS2008のWebシナリオで報告されていたホットフィックスがリリースされました。このホットフィックスでは以下のパフォーマンスが改善されています。

  • HTMLソースビュー
  • デザインビュー
  • Webサイトのビルド時

 また、HTML、JavaScriptエディタ時の機能改善とバグフィックスがされています。RTM段階では正しく動作しなかったjQueryのインテリセンスも有効になりました。jQueryユーザーには非常に嬉しい変更点です。

 肝心のホットフィックスのダウンロードはこちらからできます。なお、このホットフィックスをダウンロードするにはWindows Live IDが必要です。

ホットフィックスのインストール

 Vista環境とXP環境で若干の違いがあるので、ここでは、Vista環境におけるインストール手順を記します。

  1. ダウンロードしたKB946581フォルダ内にある338649_ENU_i386_zip.exeを実行してC:\以外の場所に解凍
  2. 解凍されたVS90-KB946581.exeを実行
  3. ウィザードが起動するので、ウィザードに沿って進めるとインストール完了

UpdatePanelの機能拡張

 ASP.NET 2.0 AJAX Extensionsには目玉とも言えるUpdatePanelコントロールがあります。このUpdatePanelコントロール内では、JavaScriptを利用しているコントロールが正しく動作しませんでした(もちろん、組み方によっては正しく動作するものもありました)。VS2008で利用可能なASP.NET 3.5 AJAX ExtensionsではUpdatePanelコントロール内で正しく動作するコントロールの幅が広がっています。

正しく動作しないコントロール

 早速、違いを見てみたいと思います。まずはASP.NET 2.0 AJAX ExtensionsのUpdatePanelコントロール内で正しく動作しないコントロールです。

  • TreeView/Menuコントロール
  • WebPartsコントロール
  • FileUploadコントロール
  • GridView/DetailsViewコントロール(EnableSortingAndPagingCallbacksプロパティがTrueの時)
  • Login/PasswordRecovery/ChangePassword/CreateUserWizardコントロール(編集可能なテンプレートではない時)
  • Substitutionコントロール
  • 検証コントロール

正しく動作するコントロール

 続いてASP.NET 3.5 AJAX ExtenisonsのUpdatePanelコントロールで制限付きですが、正しく動作するコントロールと、その特徴をピックアップします。

  • WebPartsコントロール
    • WebPartZoneコントロールが複数ある場合は同じUpdatePanelコントロール内に配置する
    • UpdatePanelを入れ子にする場合、WebPartManagerコントロールは親UpdatePanelコントロールに配置する
    • 非同期ポストバックを使用してWebPartsコントロール(.webpartsファイル)のインポート・エクスポートは不可(実行すると通常のポストバックが実行)
    • 非同期ポストバック中にWebPartsコントロールのスタイルの追加・変更は不可(エディタパーツによる設定変更)
  • 検証コントロール
    • 検証対象のコントロールと同一パネル内に配置することを推奨

 以上の点からUpdatePanelコントロールを利用する際には、AJAX Extensionsのバージョンには注意してください。VS2008で開発を行う際はASP.NET 3.5を選択することが多いと思いますが、もしASP.NET 2.0 AJAX Extensionsの開発を行いたい場合は次のコラムを参照してください。

VS2008でASP.NET 2.0 AJAX Extensionsを利用するには
 VS2008インストール後、マルチターゲッティングを利用しASP.NET 2.0 AJAX Extensionsの開発を行おうとすると、web.configの記述が不足しているため実行時エラーが発生します。しかし、ASP.NET 2.0 AJAX Templatesをインストールすることで、ASP.NET 2.0 AJAX Extensionsの開発を行うためのweb.configの記述+WebフォームにScriptManagerコントロールが配置されているテンプレートが利用できるようになります。

JavaScriptとScriptManagerコントロールを使用してWebサービスを呼び出す

 これは、VS2005+ASP.NET 2.0 AJAX Extensionsから利用できた機能ですが、以下の説明にもつながってくる重要な技術なので紹介します。

 ScriptManagerコントロールにはServicesプロパティがあります。このServicesプロパティにアクセスしたいWebサービスを設定すると、SriptManagerコントロールは、JavaScriptを使用したプロキシクラスを自動生成し、Webサービスへのアクセスを可能にします。このWebサービスへのアクセスは自作したWebサービス以外に、メンバシップサービスや、ロール管理サービスなどのアプリケーションサービスにアクセスすることもできます。

ScriptManagerコントロールのServicesプロパティの設定
<asp:ScriptManager ID="ScriptManager1" runat="server">
    <Services>
        <asp:ServiceReference Path="Webサービス.asmx" />
    </Services>
</asp:ScriptManager>

 本稿を理解するために重要なポイントはプロキシクラスの構文です。クライアントサイドからWebサービスを呼び出す場合、基本は以下のようになります。

プロキシクラスの基本構文
クラス名.メソッド名(
  [パラメータ, ……],
  処理成功時のコールバック関数,
  サービス側で例外が発生時のコールバック関数,
  任意のコンテキスト値
)

 動作の流れや仕組みなどは、「[ASP.NET AJAX]XML Webサービスを非同期呼び出しするには?」(@IT)にて詳しく解説されているので、そちらを参考にしてください。

 

ASP.NET AJAXのWCFサポート

 VS2008では「AJAX 対応 WCF サービス」テンプレートが用意されています。これとScriptManagerコントロールを利用すると、WCFサービスをJSON形式でASP.NET AJAXと共に使用できます。WCFに関する基礎知識は「WCF(Windows Communication Foundation)チュートリアル 前編」と「WCF(Windows Communication Foundation)チュートリアル 後編」を参考にしてください。また、「Visual Studio 2008徹底入門」の第7回でもWCFについて扱う予定です。

web.config(構成ファイル)を使用したエンドポイント追加方法

 ここでのサンプルはシンプルにテキストに入力された数字に3をかけた値を返すWCFサービスを作成します(図1~2)。

図1 実行直後の画面
図1 実行直後の画面
図2 WCFサービスを利用した実行結果
図2 WCFサービスを利用した実行結果

 [新しい項目の追加]で「AJAX 対応 WCF サービス」を選択すると(図3)AJAX対応のWCFサービスが作成されます。その時web.configやendpointは自動的に記述されます。

自動追記されたweb.config
<system.serviceModel>
    <behaviors>
        <endpointBehaviors>
            <behavior name="AJAXAspNetAjaxBehavior">
                <enableWebScript />
            </behavior>
        </endpointBehaviors>
    </behaviors>
    <serviceHostingEnvironment aspNetCompatibilityEnabled="true" />
    <services>
        <service name="AJAX">
            <endpoint address="" 
behaviorConfiguration="AJAXAspNetAjaxBehavior"
binding="webHttpBinding" contract="AJAX" />
</service> </services> </system.serviceModel>

 Service name属性とcontract属性にサービス名が、binding属性にはwebHttpBindingが設定されています。webHttpBindingはwebプログラミングでWCFを利用する場合のバインディングです。

 自動追記されたweb.configには、エンドポイントの作成、コントラクトの設定がされているので、このWCFサービスを利用するにはサービスメソッドを記述するだけでOKです。

図3 AJAX 対応 WCF サービスを作成
図3 AJAX 対応 WCF サービスを作成
AJAX 対応 WCFサービスのサービスメソッド例
<ServiceContract(Namespace:="AJAXIAN")> _
<AspNetCompatibilityRequirements(RequirementsMode:=
AspNetCompatibilityRequirementsMode.Allowed)> 
Public Class AJAX

    <OperationContract()> _
    Public Function Math(ByVal item As Integer) As Integer
        Return item * 3
    End Function

End Class

 続いて、ASP.NET AJAX(Webフォーム)側での設定ですが、こちらも簡単でScriptManagerコントロールのServicesプロパティを設定すると、WCFサービスとアクセスすることが可能になります。

ScriptManagerコントロールのServicesプロパティ
<asp:ScriptManager ID="ScriptManager1" runat="server">
    <Services>
        <asp:ServiceReference Path="サービス名.svc" />
    </Services>
</asp:ScriptManager>

 WCFサービスにアクセスできるようになったので、後はASP.NET AJAX(Webフォーム)側でそれを利用するコードを記述するだけです。

JavaScriptを使ったWCFサービスの呼び出し
function Click(){
    var txt = $get("TextBox1").value;
    var service = new AJAXIAN.AJAX();
    service.Math(txt,Finish);
    return false;
}

function Finish(res){
    $get("Label1").innerHTML=res;        
}

web.config(構成ファイル)を使用しないエンドポイント追加方法

 web.configにエンドポイントの追記を行うことなく、WCFを利用する方法もあります。この方法はWCFサービスがIISに配置されていることが必要です。

 また、この方法のメリットは、web.configへの追記を行うことなくWCFを利用できるという点になります(前項の方法を利用すれば、web.configへの自動記述がされるのでなおさら利用機会が少ないかもしれません。個人的見解としては、ASP.NETを使用しない場合にエンドポイント作成を簡略化させるために存在しているという認識です)。

 前項で作成したWebサイトから、web.configのsystem.serviceModel要素の記述をコメントアウトしてIISにWebサイトを配置します。そして、web.configの代わりに@ServiceHostディレクティブのFactory属性に WebScriptServiceHostFactory を指定します。手順はこれだけです。

Service.svc
<%@ ServiceHost Language="VB" _
 Debug="true" Service="名前空間.クラス" _
 CodeBehind="~/App_Code/Service.cs" _
 Factory=System.ServiceModel.Activation.WebScriptServiceHostFactory %>

 このFactory属性を指定することで、本来必要なweb.configに対する設定をFactory属性で指定されたファクトリクラスの中で実施します。これによって、クライアントサイドのJavaScriptからWCFサービスを呼び出すことができます。

ASP.NETを使用しないAJAXエンドポイント追加方法

 WCFは使いたいけど、ASP.NETは使用していないAJAX対応のページを作成する事も考えられます。WCFはこのシナリオにも対応しています。手順は以下のようになっています。

  • AJAXエンドポイントの作成
  • AJAX対応コントラクトの作成
  • WCFへのアクセス

 このうち、「AJAXエンドポイントの作成」については、既に述べている構成ファイルを使用するパターンと、しないパターンの2種類ですので解説は割愛します。

AJAX対応コントラクトの作成

 JSON形式でデータのやり取りをするにはWCFサービス側で、対応のコントラクトを作成する必要があります。クライアントサイドではJSON形式でのデータを送信し、WCFサービス側はJSON形式のデータを受け取るためのコントラクトと、WebGetAttribute属性かWebInvokeAttribute属性を設定する必要があります。GETを使用する場合はWebGetAttribute属性を、POST、PUTなどを利用するときはWebInvokeAttribute属性を使用します。

 サンプルでは、苗字と名前を入力してもらい、結合して返すシンプルなサービスにしています。

JSON表記の例
var name = '{"FirstName":';
name = name + '"' + firstname + '"' + ',"LastName":';
name = name + '"' + lastname + '"' + '}';  
Service.svcの一部
<ServiceContract()> _
Public Interface IService

    <OperationContract()> _
    <WebInvoke(ResponseFormat:=WebMessageFormat.Json, 
       bodystyle:=WebMessageBodyStyle.WrappedRequest)> _
    Function NameCombine(ByVal FirstName As String, 
       ByVal LastName As String) As String

End Interface

Public Class Service
    Implements IService

    Public Function NameCombine(ByVal FirstName As String, 
        ByVal LastName As String) As String _
        Implements IService.NameCombine

        Return "こんにちは " + LastName + " " + FirstName + " さん"

    End Function

End Class

WCFへのアクセス

 WCF AJAXエンドポイントは、JSON/XMLどちらの形式の要求も受け取り可能です。

 ただし、JSONで利用したい場合はXMLHttpRequestのsetRequestHeaderのContent-typeapplication/jsonに設定する必要はあります。もちろんポストするデータはJSON形式で処理したい場合はJSONシリアライズする必要があります。Content-typetext/xmlの場合のPOST要求はXML として処理されます。

HTMLPage.htmのJavaScript
function nameCombine()
{
    var firstname = document.getElementById("firstname").value;
    var lastname = document.getElementById("lastname").value;
    var xmlHttp = new XMLHttpRequest();
         
    // WCFサービスへのURL
    var url = "Service.svc/jsonEndpoint/NameCombine";

    //JSON形式へシリアライズ
    var name = '{"FirstName":';
    name = name + '"' + firstname + '"' + ',"LastName":';
    name = name + '"' + lastname + '"' + '}';   
            
    // WCFサービスへJSON形式でのリクエスト
    xmlHttp.open("POST", url, true);
    xmlHttp.setRequestHeader("Content-type", "application/json");
    xmlHttp.send(name);

    // サービスからの応答処理
    xmlHttp.onreadystatechange = function Status(){
        if (xmlHttp.readyState == 4){ 
            document.getElementById("combinename").innerHTML 
                = xmlHttp.responseText;
        }
    }
}
 

JavaScriptを使用したフォーム認証の利用

 JavaScriptとScriptManagerコントロールの組み合わせで、ASP.NETのフォーム認証サービスを呼び出して利用できます(図4・図5)。

図4 ログイン画面
図4 ログイン画面
図5 リダイレクト先の画面
図5 リダイレクト先の画面

 この機能を利用すると、クライアントサイドからプロファイルサービスや、ロールサービス(次項で解説)を呼び出して活用することができます。この機能はASP.NET 2.0 AJAX Extensionsでも実装可能でしたが次項の理解を深めるために、ここでも解説します。

 なお、この利用方法は、「[ASP.NET AJAX]クライアントサイド・スクリプトからASP.NETの認証機能を利用するには?」にて詳しく解説されています。

 手順としては以下のようになります。

  1. Web サイト管理ツールからユーザーを登録する
  2. web.configに認証サービスの有効化設定をする
  3. Webフォームを作成する
  4. 認証サービスを呼び出すJavaScriptを記述する

Web サイト管理ツールからユーザーを登録する

 メニューバーの[Webサイト]から[ASP.NET 構成]を選択し、Webサイト管理ツールを起動します。その後、ロールの作成(サンプルではAdminとUser)、ユーザーの作成を行います(図6、図7)。

図6 Adminユーザーの作成
図6 Adminユーザーの作成
図7 Userユーザーの作成
図7 Userユーザーの作成

web.configで認証サービスを有効化する

 続いて、認証サービスを利用するためにweb.configに有効化するためにauthenticationService要素のenabled属性をtrueに設定します。

web.configの設定
<system.web.extensions>
    <scripting>
        <webServices>
            <authenticationService enabled="true"/>
        </webServices>
    </scripting>
</system.web.extensions>

 なお、本稿では認証ユーザーのみがアクセス可能なフォルダとしてRoleフォルダを用意しています。ソリューション エクスプローラ上でRoleフォルダを作成し、その直下に以下の記述をしたweb.configを配置します。これで、ログインしたユーザーのみがRoleフォルダ内にアクセスできます。

<authorization>
    <deny users="?"/>
        <allow users="*"/>
</authorization>

Webフォームを作成する

 それでは、実際に利用するWebフォームの作成をします。

Login.aspx内の設定
<asp:ScriptManager ID="ScriptManager1" runat="server">
    <Scripts>
        <asp:ScriptReference Path="~/Authentications.js" />
    </Scripts>
</asp:ScriptManager>
<table>
    <tr>
        <td>ユーザー名</td>
        <td><input type="text" id="username" /></td>
    </tr>
    <tr>
        <td>パスワード</td>
        <td><input type="password" id="password" /></td>
    </tr>
    <tr>
        <td colspan="2" align="center">
        <button onclick="OnClickLogin(); return false;">Login</button>
        </td>
    </tr>
</table>

 ポイントはASP.NETで提供されているログインコントロールを一切利用していない点です。

認証サービスを呼び出すJavaScriptを記述する

 最後に、認証サービスを呼び出すJavaScriptファイルの記述を行います。前項で設定したLoginボタンをクリックされた時に、Microsoft AJAX LibraryのSys.Services.AuthenticationServiceクラスを利用して認証サービスにアクセスします。

Authentication.jsファイルの一部
/// <reference name="MicrosoftAjax.js"/>

var username;
var password;

//  ページロード時に実行される処理
function pageLoad()
{
    username = $get("username");
    password = $get("password");
}            

//  Loginボタンクリック時に実行される処理
function OnClickLogin() 
{   
    //  認証サービスへのアクセス
    //  今回はユーザー名・パスワード・ログイン認証後の
    //リダイレクト先のURLを設定
    Sys.Services.AuthenticationService.login(username.value, 
        password.value,false,null,"Role/Default.aspx",null,null,null);
} 

 以上の設定でJavaScriptを使用したフォーム認証は完成です。実行すると、登録したユーザー・パスワードを入力した時のみ「Role/Default.aspx」へとリダイレクトされます(図4・図5)。

 Sys.Services.AuthenticationService.loginメソッドでは、次のような構文で記述することになっています。実際に設定した内容と照らし合わせて見てください。

loginメソッドの構文
Sys.Services.AuthenticationService.login(
    ユーザー名(必須),
    パスワード。既定値はnull,
    クッキーを永続的に保持するかどうか。既定値はfalse,
    カスタム情報(将来使用するために予約済)。既定値はnull,
    リダイレクト先のURL。既定値はnull,
    処理成功時のコールバック関数。既定値はnull,
    例外発生時のコールバック関数。既定値はnull,
    ユーザー コンテキスト)

 また、同じような手順でクライアントサイドからプロファイルサービスの呼び出しも可能です。こちらについては、「[ASP.NET AJAX]クライアントサイド・スクリプトからASP.NETのプロファイル機能を利用するには?」にて詳しく解説されているので、そちらを参考にしてください。

 

JavaScriptを使用したロール情報の利用

 ASP.NET 3.5ではMicrosoft AJAX LibraryとScriptManagerコントロールを利用して、ASP.NETロールサービスを呼び出して利用することができます。つまり、クライアントサイドでロールベースの制御が可能になりました。

 クライアントサイドでロールを参照できると、ロールによってコントロールの表示やデザインを変更、表示するデータの範囲を絞ることが可能になります(図8・図9)。

図8 Adminユーザーのページ
図8 Adminユーザーのページ
図9 Userユーザーのページ
図9 Userユーザーのページ

 手順としては以下のようになります(前項で作成したWebサイトを利用しています)。

  1. web.configにロールサービスの有効化設定をする
  2. Webフォームを作成する
  3. ロールサービスを呼び出すJavaScriptを記述する

web.configにロールサービスの有効化設定をする

 ロールサービスを利用するためにweb.configに有効化設定を記述します。

web.configの設定
<system.web.extensions>
    <scripting>
        <webServices>
            <authenticationService enabled="true"/>
            <roleService enabled="true"/>
        </webServices>
    </scripting>
</system.web.extensions>

 ロールサービスを利用するために、roleService要素のenabled属性をtrueに設定しています。

Webフォームを作成する

 今回はロールによる外観を変化させるために、認証後リダイレクトされるページ(Role/Default.aspx)Webフォーム上にいくつかのコントロールと、ロールサービスにアクセスするためにScriptManagerコントロールを配置します。

Role/Default.aspxの一部
<form id="form1" runat="server">
    <h1><div id="Role" ></div></h1>
    <asp:ScriptManager ID="ScriptManager1" runat="server">
        <Scripts>
            <asp:ScriptReference Path="Role.js" />
        </Scripts>
    </asp:ScriptManager>
    
    <asp:Calendar ID="Calendar1" runat="server"></asp:Calendar>
    <asp:HyperLink ID="HyperLink1" 
runat="server" NavigateUrl="~/LogIn.aspx">
Login状態保持のままLoginページへ</asp:HyperLink> <asp:Button ID="Button1" runat="server"
Text="Button" OnClientClick="return false;" />
<div id="placeHolder"> <button id="LogOutButton"
onclick="OnClick_LogOut();">
LogOut</button> </div> </form>

 また、外観を変更するためのCSSも記述します。こちらも至ってシンプル。

Role.css
.Admin
{
    background-color: #0000FF;
    color: #FFFFFF;
    font-family: メイリオ;
    font-size: x-large;
}

.User
{
    background-color: #000000;
    color: #FFFFFF;
    font-family: メイリオ;
    font-size: x-large;
}

ロールサービスを呼び出すJavaScriptを記述する

 ロールサービスを呼び出すJavaScriptファイルの記述は以下のようになります。今回はAdminとRoleの2種類、そしてどちらかのロールにしか属していないことからシンプルなコードにしています。

Role/Role.js
/// <reference name="MicrosoftAjax.js"/>

var roleProxy;

        //  ページロード時に実行される処理
        function pageLoad(){
            
            roleProxy = Sys.Services.RoleService;
            roleProxy.load(LoadCompletedCallback);
        }

        //  読み込み処理完了時のコールバック関数
        function LoadCompletedCallback(roles)
        {
            //  roles[0]は認証済みのユーザーのロール
            //  それぞれにロールのテキストを表示
            var roleInfo = "Role: " + roles[0];
            $get("Button1").value = roleInfo;
            $get("Role").innerHTML = roles[0];

            //  Adminロール・Userロールによって表示を切り替え
            //  .classNameにてRoleのクラス名を設定し、CSSを反映            
            if (roles[0] == "Admin"){
                $get("Button1").className = "Admin";
                $get("Role").className = "Admin";
                $get("Calendar1").style.visibility = "visible";
                $get("HyperLink1").style.visibility = "hidden";
            }
            else if(roles[0] == "User")
            {
                $get("Button1").className = "User";    
                $get("Role").className = "User";
                $get("Calendar1").style.visibility = "hidden";
                $get("HyperLink1").style.visibility = "visible";
            }
        }

 以上の設定でJavaScriptを使用したロールサービスの利用は完成です。実際に実行すると、ユーザーのロールによって、「Role/Default.aspx」のページの表示が変わります(図8・図9)。

 Sys.Services.RoleService.loadメソッドでは、以下のような構文で記述することになっています。実際に設定した内容と照らし合わせて見てください。

loadメソッドの構文
Sys.Services. RoleService.load (
    処理成功時のコールバック関数。既定値はnull,
    例外発生時のコールバック関数。既定値はnull,
    ユーザー コンテキスト)

 Sys.Services. RoleServiceは他に以下メンバがあります。

Sys.Services. RoleServiceクラスのメンバ
メンバ 概要
DefaultWebServicePathフィールド ロールサービスへのパスを指定
loadメソッド 認証ユーザーのロールを読み込む
defaultFailedCallbackプロパティ 例外発生時のコールバック関数の取得・設定
defaultLoadCompletedCallbackプロパティ 読み込み完了時のコールバック関数の取得・設定
defaultSucceededCallbackプロパティ 処理成功時のコールバック関数の取得・設定
defaultUserContextプロパティ ユーザーコンテキストの取得・設定
IsUserinRoleプロパティ 認証ユーザーが指定されたロールかチェック
pathプロパティ ロールサービスのパスを取得・設定
roles プロパティ 認証ユーザーのロールを取得
timeoutプロパティ ロールサービスサービスのタイムアウトを取得・設定

まとめ

 今回はASP.NET 3.5周りの変更点をいくつかピックアップして紹介してきました。今回の記事でサーバーサイドからのアプローチ以外に、クライアントサイドからのアプリケーション作成の可能性も感じてもらえたかと思います。今まで、ASP.NET(サーバーサイド)のみでしか利用していなかった方も、少しクライアントサイド開発に目を向けていただけたら幸いです。

 次回は、VS2008を利用することで開発を行いやすくなったWPFです。お楽しみに。

参考資料

  1. ScottGu's Blog
  2. Chica's Blog
  3. Visual Studio 2008 Professional Edition
  4. MSDN ライブラリ
 

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https://codezine.jp/article/detail/2270 2008/08/20 10:42

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