セキュリティとプログラミングの融合はまだまだこれから?
セキュリティとプログラミングの交流を目指して今年度より新しく生まれ変わった「セキュリティ&プログラミングキャンプ2008」。今回、セキュリティコースとプログラミングコースはまったくカリキュラムが別となっており、唯一の交流の場として設けられたBOFにおいても、セキュリティとプログラミング、それぞれに分かれてしまっていたようだ。ぶつかりもせず、交わりもせず、といった印象を受けた。一言で言えば、セキュリティとプログラミングの「文化」の違いを改めて感じさせられた。例えば「ハッカー」という言葉に対する解釈の違い。プログラミングの世界でハッカーと言えば、「かっこいいプログラムをガンガン書く奴」。セキュリティの世界でいえば、「コンピューターに精通しているが、悪いことはしない奴(≠クラッカー)」。プログラミングが何かを「創る」のに対し、セキュリティは何かを「守る」―根本的な存在意義の違いかもしれない。
もっとも、BOFの前の交流会、あるいは食事の時間などの講義時間外では参加者同士で積極的に交流しようと努めていた者もいたようだ。
実行委員長の三輪氏は、「これまで、セキュリティとプログラミングは相容れないと言われてきた。事実、企業内では両者はバラバラというのが現状。今年は初めての試みで講師も生徒も交流が少なかったが、あきらめずに続けていきたい」と語る。今後の展開としては「キャンプの最大の特徴であるチューター制度」を利用した交流を挙げる。「今回、プログラミングコースのチューターを務めたのはセキュリティコースの卒業生。このあたりに今後のヒントがあるのではないか。来年からはセキュリティとプログラミングのチューター交換制度なども考えている」(三輪氏)。
「チューター」がつなぐキャンプの輪
最後に、三輪氏が「セキュリティとプログラミングをつなぐ懸け橋」と期待するチューター制度について紹介しよう。このキャンプでは、毎年、キャンプ卒業生が「チューター」として各学生のグループにつき、指導や相談にあたることになっている。とはいえ、卒業生の誰もがチューターになれるわけではない。ここでも選抜が行われる。ただでさえ狭き門のセキュリティ&プログラミングキャンプの卒業生の中から、さらに選ばれた生え抜きのチューターたちが集まる。
セキュリティキャンプの卒業生で、2008年度のチューターを務めた石森大貴君は、まだ高校3年生だ。受験勉強の合間を縫ってキャンプに参加した。現在は、卒業生でチューター仲間の周礼贊君と共に、無料レンタルサーバーサービスを提供する「AbelProject」を運営している。石森君が中学2年生の時に一人で立ち上げたというこのサービス、キャンプで石森君と周君が出会い、AbelProjectとして2007年4月より正式運用をスタートさせたという。「キャンプで出会った仲間が刺激を与えてくれたし、自分も刺激を与えていきたい」と石森君は語る。
彼らは皆、セキュリティキャンプ卒業生だが、中には、今回プログラミングコースのチューターを立派に務めている者もいる。大人の世界にあるセキュリティとプログラミングの壁を彼らはどのように捉えたのだろうか?
今回セキュリティコース卒業生でありながら、プログラミングコースのサポートにあたったチューターのひとりは、「セキュリティコースは、楽しみながらセキュリティをやる、だけど楽しいだけじゃないよね、といった感じです。プログラミングコースは、もうちょっと創造的かもしれないですね」と語るものの、それほど大きな違いは感じていないという。
セキュリティとプログラミングの間にある壁を打ち破るのは、彼ら、若きITエリートたちなのかもしれない。