はじめに
Yahoo!は、米国時間9月29日に「Yahoo! User Interface Library Ver.3」(YUI3)をリリースしました。YUI3はJavaScriptやCSS(Cascading Style Sheet)で書かれた、Ajaxライブラリーです。
Yahoo!は今まで、インターネットによる情報提供のためのさまざまなツールを作成してきました。開発したツールの中でも、Webのページを作成するのに汎用的に使えるツールを公開ライブラリーとしてまとめています。これがYUIです。今回は、バージョン3をリリースしました。
YUI3はオープンソースで無償で提供され誰でも使用することができます。アニメーション効果やドラッグ&ドロップ、データ取得やイベントの応答など、多岐にわたる機能がサポートされています。
今回の連載はYUI3の全体像の説明から入り、各コンポーネントの使い方の説明へと移っていきたいと思います。
対象読者
Webアプリケーションに興味があり、Yahoo! User Interface Libraryに注目している人。HTMLとJavaScriptを使える人を対象にしています。
必要な環境
HTMLとJavaScriptが作成でき、インターネットにつながっているパソコンであれば、例題の作成、確認ができます。
YUIとは
YUIとは、Yahoo!で使われている公開ライブラリーを使いやすくするためにYahoo!が作成した、ユーザーインターフェイス構築のためのコンポーネント集です。JavaScriptで書かれており、Webアプリケーション開発者にとって親しみやすいものとなっています。
JavaScriptやCSSは同じ書き方をしてもブラウザにより微妙に動作が違うことがあります。開発者は意図した動きをさせるため大変苦労していますが、YUIはそれらの違いをある程度吸収してくれます。
YUI3でどう変わったか
YUIは高機能なAjaxライブラリーで、Ver2.4でXMLデータ処理やJSON形式のサポートを追加したり、Ver2.8でFlashに対応したりと、バージョンを上げるごとに新機能を追加してきました。機能が増え、使用できるユーティリティは増えていきましたが、機能が多くて分かりづらいという声も聞かれるようになってきました。
Yahoo!はユーザーからのフィードバックをもとに以下の目標をたて、コアといわれる中心部分の書き直しを行い、バージョン3を作りました。
- 設定に必要なルーチンの軽量化
- 処理の高速化
- ユーザーインターフェイスの書き方の統一
- ユーザーアプリからの容易な利用
- それぞれのブラウザでの統一した動きのサポート など
バージョン3で抜本的な改造が行われ、バージョン2との互換性はほとんどありません。バージョン2をバージョン3へ書き換えるには、全面的な変更が必要になります。しかし、バージョン2で作成したオブジェクトとバージョン3で作成したオブジェクトは同一ページ上で共存できるので、新しく追加するものだけバージョン3で作成するということもできると思います。
以前のバージョンに比べ、必ず読み込まなければいけないファイルの軽量化、読み込みの高速化がなされており、セキュリティも高くなっています。後述のシードファイルさえロードしておけば、ビルドインローダーにより自動的に使用するモジュールがロードされる仕組みになっていて、スクリプトの作成も容易です。
またYahoo!は、ウィジェットの機能の追加にも取り組んでおり、今回のバージョンでBeta版が付加されています。ウィジェット(Widget)とはJavaScriptで書かれた小さなプログラムのことで、パソコンに常駐し、天気予報やニュースなどインターネット上の知りたい情報を教えてくれるプログラムです。
またイベント処理の窓口を1つのクラスに集約する「Facadeパターン」の導入も注目されます。FacadeパターンとはGOF(Gang of Four)と呼ばれる4人の開発者によって定義されたコンピュータソフトウエアのデザインパターンの一つです。Facade(ファサード)は、建物の正面を意味する言葉で、イベント処理など関連するクラス群を使用するための手続きの窓口を一つにし、冗長性をなくすことを目的としたものです。