はじめに
本連載はOffice 365を実際に自社に導入した管理者観点での記事です。ターゲットは自社のITインフラに不満を持ち新たなサービスを検討している管理者の方や、開発に集中したい開発者の方です。過去連載は次のとおりです。
なお、本連載では細かな部分については言及しません(例えば試用版契約部分など)。そのため大まかな流れでOffice 365を捉えたい方に最適な内容としている点はご了承ください。
今回紹介する移行前の環境について
今回ご紹介するオンプレミス環境からOffice 365環境への移行方法ですが、筆者が実際に実施した内容でご紹介します。第1回にも記載しましたが、著者の所属している企業はOffice 365に移行する前は以下の環境でした。
著者が自社に対して提案した手法
ここで、著者が自社に対して提案した際の手法を一例として紹介します。著者の所属している会社は以下の社内環境でした。
- メールサーバーをオンプレミスで立てている(Exchange Serverではない)
- メールサーバーがPOPのみの対応
- メーラーはOutlook 2007と2010を使用
- 施設設備予約が共有ファイルサーバー上のExcelなどで実施されている
- 情報共有サイトは無償のものをオンプレミスで構築
- Web会議システムをオンプレミスで立てている(Office 365導入一年前に数百万かけて新調済)
- Officeのライセンス管理が煩雑で、最新バージョンがリクエストに対して不足がちで仕方なく旧バージョンを使用してもらう
Office 365移行時に、ユーザーは以下の作業が発生します。
- Office 365 Pro Plusのインストール
- Exchange Onlineへのメールデータの移行
- SharePoint Onlineの利用開始
- Lync Onlineへの接続
実際の移行作業は以下の流れです。
- Office 365へのサインイン
- Office 365 Pro Plusのインストール
- メールボックスのエクスポート
- Exchange Onlineアカウントの作成
- メールボックスのインポート
- Outlook Fix it(パッチ)の適用
今回ご紹介する方法では、ADFS連携はしていない前提で記載している点をご了承ください。それでは実際の移行手順をご紹介します。
Office 365へのサインイン
最初にOffice 365へのサインイン作業です。
管理者側の事前準備
管理者はユーザーに対して、ユーザーとグループメニューからユーザー全員の一時パスワードを発行します。パスワード発行後の連絡方法は企業の方針などにより変わると思いますが、信頼できる企業ならば、ユーザーIDとパスワード一覧を共有フォルダなどに展開するという手もあります(移行時はクラウド側に一切データがないので、漏えいリスクなどはないです)。
ユーザーの作業
ユーザーは管理者からIDとパスワードを入手し、ログインページでサインインします。
サインイン後、パスワード変更を求められるのでパスワード変更してください。
Office 365では既定のパスワードポリシーとして、複雑なパスワードが要求されます。
- 大文字
- 小文字
- 数字
- 記号
上記4種類の文字から最低3種類を使用かつ、8文字以上のパスワードを入力する必要があります。社内環境において複雑なパスワードポリシーを適用していない企業もあるとは思いますが、ログイン画面は"インターネット上"に公開されているため、複雑なパスワードを理解いただき導入することが重要です。
サインインすると以下のページが表示されます。
簡単にポータル画面についてご紹介します。
基本的なメニューはすべて上部のサイドバーに表示され、中央にはメニューの詳細情報が表示されます。各メニューの概要は次のとおりです。
メニュー名 | 配置場所 | 概要 |
---|---|---|
Outlook | 画面上部 |
Outlook Web Access (WebのメーラーでOutlookのメールボックスと同期する) |
予定表 | 画面上部 |
Webの予定表 (Outlookの予定表と同期する) |
People | 画面上部 |
Webのアドレス帳 (Outlookのアドレス帳と同期する) |
ニュース フィード |
画面上部 |
SharePoint Onlineの機能の一つで 企業内ソーシャルネットワークサービス |
SkyDrive | 画面上部 |
SharePoint Onlineの機能の一つで オンラインストレージであるSkyDrive Pro |
サイト | 画面上部 | SharePoint Onlineのサイト |
… | 画面上部 |
契約している場合、Dynamics CRMやOfficeアプリを購入できる Officeストアなどのリンクが表示 |
管理者 | 画面上部 |
管理者のみ表示されるメニュー。 Office 365管理者トップ画面や各サービス設定画面へのリンクが表示される |
オンライン | 画面中央 |
図1で中央に表示されている内容で主にユーザーがOffice 365を 使用するために必要な情報などがまとめて掲載されている |
PCおよびMac | 画面中央 | Office 365 Pro Plusをインストールするためのリンクが表示される |
電話および タブレット |
画面中央 |
Office 365をスマホやタブレット端末で接続するための 情報が記載されている(主にヘルプへのリンク) |
ログインできた段階で1つ目の作業は完了です。この時点で管理者が設定さえしていれば、SharePoint OnlineやExchange Online(Webメーラーとして)は活用できるようになります。Lync Onlineは在籍管理機能とInstant Messaging(IM)機能は利用できますが、次項のOffice 365 Pro Plusをインストールしてからの方が使い勝手がよいです。