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AWSリージョン間通信向上と今後のエコシステム

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 中国リージョンの開設アナウンスが記憶に新しいAWSですが、新規リージョンが増加することによってグローバルのインフラ展開、例えばマルチリージョンでのHA(高可用性)構成やDR(ディザスタリカバリ)サイトの構築で、より活用できる機会が広がったといえるのではないでしょうか。こうしたシステムを構築する場合、リージョンの選択肢が多いのは大きなアドバンテージとなり、クラウドの利便性からすぐに扱えるiDCがその分増えたということになるかと思います。

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 一方で、複数のリージョンでシステムを構築・運用する場合、リージョン間はファイル転送など何らかのデータのやり取り(DRサイトであればバックアップデータなど)が必要です。そのため、リージョン間転送における遅延などのコネクティビティ面に懸念があり、この部分に関しては、広帯域なプライベートグローバルネットワークを要するSoftLayerなどに優位性がある状況が続いていました。それは以下の記事でも顕著に表されています。

 もちろん、グローバル展開の拡大に向け、依然として大規模なインフラ投資を続けるAWSでもこの問題は既知であり、すでに対策を講じていることは想像に難くありません。そこで、現状について検証を実施してみました。

 検証の目的は現在のコネクティビティ品質を知ること、そしてエコシステムとしての高速転送プロトコルの有用性などの実証です。これらの比較を、後述するリージョンでそれぞれ実施しました。

高速転送プロトコルについて

 この言葉になじみがない方もいると思いますので、検証する前に簡単な紹介をします。

 従来のTCP通信は、通信距離が長くなるとACKを待つことにより遅延が発生したり、低品質回線ではパケットロスによって転送レートが下がってしまうという問題がありました。高速転送プロトコルはプロダクトごとに実装は異なりますが、UDPをベースに再送制御をするなどして上記の問題を解決し、通信速度を高速化しています。

 そして近年では、ビッグデータで代表されるようにデータ容量はますます増加しています。また、映像業界では4Kコンテンツの対応が迫られているとも耳にします。

 従来であれば、こうしたデータのやり取りにはFTPが多く使用されてきたと思います。しかし昨今はデータが肥大化してきており、FTPでのデータ授受は速度面から考えると、実用的とはいえない状況になりつつあります。高速転送プロトコルは、こうした背景をうけて注目されている技術です。

 AWSユーザーにとって身近な事例では、「Obama for America」のシステムがあります。去年のAWS Summitでも触れられていたので、ご存知の方も多いことでしょう。このプロジェクトでは、アメリカの東海岸から西海岸に環境を移すために、「Tsunami UDP Protocol」という高速転送のオープンソースソフトウェアを使用しています。

 クラウドの登場により、グローバルでインフラを展開するのが容易になった現在では、FTPの代替だけでなく、クラウドへのコネクティビティを向上させるエコシステムとしても注目されつつあります。

実施内容

 試験内容は一般的なSCPでのファイル転送と、UDPベースの高速ファイル転送プロトコル「Skeed SilverBullet Protocol(以下、SSBP)」を実装した当社サービス「CLOUD CONNECT」による同一条件下でのファイル転送を実施しました。

  1. AWSサンパウロとシドニーリージョンのEC2間における転送速度比較
  2. オンプレミス環境を想定し、東京のiDCと各リージョン間における転送速度比較

 上記2パターンでの転送速度を測定しました。

 EC2インスタンスは各リージョン共通でm1.mediumを採用し、転送するファイルは下記の4つのパターンを作成し、アップロード/ダウンロードを4xずつ実施し、その平均速度を算出します。

  1. 100MByte × 1ファイル
  2. 1GByte × 1ファイル
  3. 1MByte × 100ファイル
  4. 1MByte × 1,000ファイル
※1

 CLOUD CONNECTで実装しているSSBPの通信プロトコルとの速度差異を確認するために、暗号化されているTCP通信としてSCPを比較対象とし、テストを実施しています。

サンパウロリージョンとシドニーリージョンのEC2間のファイル転送速度

 前述の記事内にあるリージョン間の性能格差に着目して、AWSサンパウロリージョンとシドニーリージョン間のファイル転送速度結果を公開します。

サンパウロtoシドニーリージョン間のファイルアップロード
サンパウロtoシドニーリージョン間のファイルアップロード
シドニーtoサンパウロリージョンへのファイルアップロード
シドニーtoサンパウロリージョンへのファイルアップロード

 この結果から、記事掲載時と比較してリージョン間のコネクティビティ性能が大幅に向上していることが分かります。

 シドニー(オーストラリア)からサンパウロ(ブラジル)という長距離で遅延が発生する環境にもかかわらず、容量が大きいファイルを1つ転送する場合では、CLOUD CONNECT(UDP)よりも、SCP(TCP)で転送したほうが早いという結果となりました。

当社データセンター(東京)とAWS各リージョンのEC2間のファイル転送速度

 実際のファイル転送の利用シーンとしては、AWSリージョン間の転送だけでなくオンプレミス環境とAWS間の通信も多いと想定されますので、この検証についても実施します。

 オンプレミス環境としては下記の構成です。

  • 試験場所:東京iDC
  • ネットワーク速度:100Mbps(ベストエフォート)
  • ネットワーク構成:クライアント-L2スイッチ-ルータ-インターネット
  • クライアント端末:lenovo T430s(CPU:Intel Core i7-3520M、メモリ:8GB、Windows 7)

 また、転送先のリージョンは、シドニー、サンパウロ、オレゴン、アイルランドの4か所として、試験結果を公開します。

次のページ
EC2とEBSのネットワーク仕様について

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この記事の著者

岩渕昇(株式会社データホテル)(イワブチ ノボル)

株式会社データホテル ネットワークソリューションプロダクトに所属。公共、エンタープライズ系ネットワーク設計構築、情報システム担当などを経て、2010年11月に株式会社データホテル(旧:株式会社ライブドア)へ入社。回線サービスの「BUSINESS CONNECT」、ネットワーク構築、ISP事業などに従...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

中筋丈人(株式会社データホテル)(ナカスジ タケト)

株式会社データホテル ネットワークソリューションプロダクトに所属。エンタープライズ系システム設計構築、ロジスティクスの無線LAN設計構築などを経て、2013年10月に株式会社データホテルへ入社。「CLOUD CONNECT」や教育機関のICT化を支援する教育機関向けクラウドサービス「Campus4」をはじめ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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