企業が持つデータセンターの問題点
これらのデータセンターを企業が保有する場合、多額の建設費用がかかるだけでなく、維持管理にも莫大な費用が必要です。
例えば、サーバや空調を動かすための電気代、ネットワークの通信料、サーバの保守費用、インフラ/運用エンジニアの人件費などです。これらの多くは、システム利用の多い少ないにかかわらず、決まった額の費用(固定費)がかかり、企業にとって、経営を圧迫する要因の一つにもなります。
また企業の多くは、データセンターに設置したサーバのリソースをフル活用できているわけではありません。
具体的に説明するため、銀行でお金の預け入れを行うシステムを例に考えてみましょう。多くの一般企業では、五十日(ごとおび)と呼ばれる、5で割り切れる日および月末日に決済を行います。そのため、30日は多くの企業の給料日が重なるのでATMが長蛇の列で混雑しますが、28日や29日は、比較的空いています。
銀行にとって基幹業務システムであるATMの停止は、大変なダメージになります。そのため、たとえリソースに無駄な日があっても、ピーク時の負荷に耐えうるシステム基盤を用意する必要があります。
このように、企業はシステムを「保有」する形で長年運用してきましたが、経営者の多くは、もっと効率よくシステムを「利用」できないかと考えるようになりました。
クラウドシステムって?
システムを「保有」するのではなく、必要に応じてシステムの「利用」ができないかという要望に応じて出てきたシステムの利用形態の一つが「クラウド」です。
クラウドの概要
クラウドとは、ネットワーク上にあるさまざまなサービスを、必要に応じて利用するシステム形態のことを指します。ここで、企業システムのシステム構成を理解するうえで、重要な3つの形態について整理します。
オンプレミス(on-premises)
企業システムでこれまで多く採用されてきた、自社でデータセンターを保有してシステム構築から運用までを行う形態を「オンプレミス」と呼びます。メインフレームの時代からWebシステムに至るまで、数多くの企業で採用されてきた形態です。
パブリッククラウド(public cloud)
インターネットを介して不特定多数に提供されるクラウドサービスです。データセンターを保有しないので、初期投資が不要です。利用したいサービスを選んで、利用した分だけ料金を支払うシステム形態をとります。提供するサービスによって、IaaS/PaaS/SaaSなどがあります。
プライベートクラウド(private cloud)
特定の企業グループのみに提供されるクラウドサービスです。例えば、グループ企業内などでデータセンターを共同保有するようなイメージです。パブリッククラウドが不特定多数に対して提供されているのに対し、利用者を限定できるのでセキュリティが担保しやすかったり、独自の機能やサービスを追加しやすかったりします。オンプレミスとバブリッククラウドの中間にあるような位置づけです。