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CodeZineスーパー対談

受託開発は「納品」をなくせばうまくいく? なくさなくてもうまくいく?
ソニックガーデン倉貫義人氏、グロースエクスパートナーズ鈴木雄介氏対談

CodeZine スーパー対談 シリーズ 第3回


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リモート開発で「お客さんとの信頼関係」をどう築いているのか

橋本 ► 倉貫さんと(鈴木)雄介さんの会社は、案件の規模やお付き合いするお客様の客層も異なりますが、リモートワークを積極的に活用しながらも、お客様との信頼関係も非常に大事にされている点で共通していると思います。このような共通点を踏まえて、雄介さんから倉貫さんに質問していただくところから対談を始めさせてください。

鈴木 ► リモート開発は、社内のリソースを調整しやすく、プロジェクトのメンバーが他の社員とコミュニケーションをとりやすいので、すごく良いと思っています。一方で、リモート開発ではお客さんと距離があります。対面で話してこそ伝わることもあると思うのですが、リモート開発のみで対面を一切しないでもうまくいくのでしょうか?

倉貫 ► エンジニアは100%リモート開発で、お客さんとは会いません。半年に1回は弊社合宿のために東京に集まるので、そのときにお客さんと実際に会って打ち合わせをします。ずっと仕事をしてきてそこで初めて会う場合もありますが、お客さん側は「思ったより背が大きいね」くらいで、あまり気にしていません。

 最初に案件のお問い合わせをいただいてから実際の仕事がスタートするまでは、僕や副社長がお客さんと会います。1か月間ほどの無料相談の中で我々のやり方を理解してもらい、お客さんがこの先何をしていきたいかがある程度見えてきたら、途中からエンジニアを入れてあとは任せていきます。

鈴木 ► お客さんへの対応や信頼関係の構築などもエンジニアの裁量に任せるのですか。エンジニアはかなり責任重大ですね。

倉貫 ► そうです。たまに、お客さんと飲みにいかないで信頼関係を築けますかときかれますが、これは大いなる誤解だと思っています。飲み屋で仲良くしていても、仕事でうまくいかなければ信頼関係は築けません。仕事での信頼は、仕事でしか得られないんです。

 では、仕事でどのように信頼関係を築くかといえば、すごく簡単で、毎週約束を守る。約束を守ることでしか信頼関係は築けない。ただし、半年分を約束して半年後に見せるのでは、信頼も何もありません。僕らは毎週打ち合わせをして毎週成果を見せることで、ちょっとずつ信頼していただくというやり方をしています。

倉貫義人(くらぬきよしひと):1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。「アジャイル開発」を日本に広める活動を続ける。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2011年自ら立ち上げた社内ベンチャーをMBOにより買収して、株式会社ソニックガーデン創業。現在、同社代表取締役社長CEO。
倉貫義人(くらぬきよしひと):1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。「アジャイル開発」を日本に広める活動を続ける。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2011年自ら立ち上げた社内ベンチャーをMBOにより買収して、株式会社ソニックガーデン創業。現在、同社代表取締役社長CEO。[ブログFacebookTwitter

 

橋本 ► 雄介さんもリモート開発にこだわられていますが、東京商工リサーチさんとリモート開発をしようと思った理由は? また、お客さんとの信頼関係を築くのは誰ですか?

鈴木 ► リモート開発にしたのは、中国へのオフショア開発を含め、自分たちの手の内を見せずに自由に調整したかったというのが一番大きな理由です。うちの会社は若いエンジニアがすごく多く、若手に成長の機会を与えたいので、お客さんに余計な心配をさせないためにも外に見せないようにしています

 お客さんとの信頼関係は、フロントにいるアカウント担当やプロジェクトマネージャがすべてを把握できるように任せます。東京商工リサーチさんの案件では、現場のリーダーである和智という人間が一番信頼を獲得しています。とはいえ、お客さん側にもたくさん人がいるので、たまに自分も対応します。チームで信頼性を調整する感じです。

橋本 ► 倉貫さんのところは個人、雄介さんのところはチームでお客さんに対応するということですね。

倉貫 ► 僕らもチームで対応しています。顧問として担当はつきますが、打ち合わせには2人参加し、作業によってそのエキスパートが入ります。そのため、お客さんからは、ソニックガーデン全部が仕事をしているように見えると思います。個人個人に作業を頼むのではなく、担当に言えば、その担当が苦手な作業も含め、すべてをソニックガーデンがやってくれるという感じです。

鈴木 ► 1人のエンジニアが完璧にすべてを理解することは難しいので、チームで対応するという点は同じだと思います。

人月ベースでの見積もりはフェアじゃない?

倉貫 ► 僕らは実は、望んでリモート開発という形をとっているわけではありません。働く場所を問わないので、在宅勤務や海外放浪中のエンジニアもいますが、その姿をお客さんに見せたくないからではなく、お客さんとの契約内容が「成果」なので、リモート開発でもかまわないでしょうということなんです。グロースエクスパートナーズでは、リモート開発の見積もりは人月ベースですか?

鈴木 ► はい、人月ベースでの見積もりです。

倉貫 ► 人月ベースでは、ある人が1人月という契約になるので、その人がちゃんと1人月分いないと契約違反のように感じます。業界の裏の事情も、人月はそもそも金額の単位であることも知っている上で言いますが、人月でと言う以上、その契約での人物が担当すべきです。実状を見せず代わりに3人の若手が働いているけど、成果を上げているので問題ないというなら、最初の見積もりは何だったのかと思ってしまいます。

 僕がSIerで一番嫌だったことの1つは、人月ベースなのに、常駐せずに自社に持ち帰り、契約とは異なるマネジメントをしていることでした。であれば、最初から人月で契約しなければいい。

鈴木 ► 人月は単位にすぎません。見積もりの基準となるのは仮想的なエンジニアの能力です。実際には、スーパーエンジニアだったらその半分で済むかもしれないし、若手なら3人がかりになるかもしれない。エンジニアが10人いれば、エンジニアごとに人月の見積もりが違ってきますが、それをプロジェクトマネージャが調整し、誰がやっても同じくらいになるように見積もりを決定します。

倉貫 ► そのやり方を否定しているのではなく、お客さんがお金を出して成立すればそれでいいのですが、その表には見えない感じがフェアじゃないと思ってしまいます。

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お客さんの懐具合でプロジェクトの評価が決まる?

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この記事の著者

坂井 直美(サカイ ナオミ)

SE、通信教育講座の編集、IT系出版社の書籍編集を経てフリーランスへ。IT分野で原稿を書いたり編集したり翻訳したり。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/8030 2014/09/24 18:33

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