電子書籍への期待とつくってみた感想
私たちが活動を始めた2011年は、まだKindle日本版も登場していないころで、電子書籍が普及するのかよくわからないときでした。そのようななか、コミュニティ活動を通じて知り合った私たちは、「何かやれそうじゃないか」「これから来る波を感じたい」「楽しいコミュニティ活動の中、ただ勉強するだけじゃなくおもしろいことがしたい」「本を書いてみたい」「自分の周りのエンジニアの声を届けたい!」という想いが高まってきました。その想いが形となって、2011年夏に『DevLOVE HangerFlight Experiences』をコミックマーケットで頒布しました。
その後も継続的に「自分たちで自分たちの技術書を作る」なかで、次のような気づきがありました。
責任の重さを味わえる!
技術系コンテンツはブログでも発信できますが、書籍という形態を取っているゆえ、一度発行すると訂正版を届けるのが容易ではありません。一号毎に完結した文章とする必要があるため、不明な点を調べて書く習慣がつきます。また、読み手に伝わる文章を意識して書けるようになります。
フィードバックがうれしい!
まず、頒布数という明確な数字が出ます。さらに感想をもらえることもあります。イベントでの対面頒布により読者と直接やりとりすることも可能です。イベントのセッションや懇親会などでの話のネタにもなります。
ひたすら楽しい!
自分の好きなテーマを追求できるため、創作の楽しさはもちろんのこと、書き上げた時の達成感はひとしおです。コミックマーケットや技術系のイベントに頒布側として参加できる、という楽しみもあります。
「自分たちで自分たちの技術書を作る」ことの価値
「では、自分たちで自分たちの技術書を作ることで、どのような価値が得られるのですか?」と聞きたくなった読者もいるでしょう。
私たちがDevLOVE Pubとして活動を継続しているのは、下記の2つの価値を感じているからです。
技術書を執筆する価値
技術書を執筆するには、業界内の著名なエンジニアたちが持つハイレベルなスキルが要求されるものと思われてきました。実際そういった人たちが書く書籍は非常に有用であり、クオリティも高いです。年々技術水準が高度化する中で、その価値はますます大きくなっています。
一方、多様化する現場ごとに重ねた実体験や、普段の開発で得たノウハウの重要さも増してきており、伝えるべき技術情報の裾野も幅広くなってきました。ですが、こうした体験やノウハウは、その有用さにも関わらず意外と知る機会がありません。だからこそ、こうしたノウハウを広く伝えることに、大きな価値がある、と私たちは思うのです。
また、わかりやすいキャリアパスもロールモデルも、技術と働き方の価値観が多様化するなかで失われてしまいました。このような時代に、自分たちが今行っていること一つ一つを書き記すことは、自分自身の整理になるだけでなく、自分の周りにいる同じようなエンジニアへの道しるべとなることでしょう。
技術書を出版・頒布する価値
今日、自分の書いた技術情報を読み手に届けるチャネルはたくさんあります。ブログやSNS、雑誌への寄稿、メルマガ、同人誌など様々です。その中で、DevLOVE Pubは電子書籍というかたちでパッケージングしたものを即売会で手売りしたのちに、Webで頒布するという手段をとってきました。そのなかで、次のようなノウハウを得ることができました。
- 同人誌的企画設計とイベント駆動型スケジューリング
- 電子書籍出版に必要な技術
- 社外勉強会コミュニティを元にしたリモート執筆に必要な技術
- 執筆におけるイラストレーションの存在と、イラストに必要な技術
この連載では、これら技術書を出版・頒布するノウハウを読者のみなさんにお伝えしていきたいと考えています。読者のみなさんがこの連載を通して「俺たちの現場の知見も、同人誌として出そう!」とActionを起こしてくれるのを期待しています。
技術書を出版・頒布するためのノウハウ
私たちが技術書を「書く」行為は、「同人誌」「電子書籍」「社外勉強会」「リモートでの協業環境の進化」の4つの要素によって身近なものになりました。
それらをベースに、DevLOVE Pubでの電子書籍の執筆・出版・頒布活動を支える技術について、次回以降、具体的に解説をしていきます。
同人誌的企画設計とイベント駆動型スケジューリング
「よし! 俺たちもコミケで同人誌を出そう!」「でも、どうやって作っていくの?」「どうやるんだろうね……」
想いはあっても、やり方が分からなくてできずじまいということ、多いですよね。ここではコミケで同人誌を販売するまでの流れを、プロジェクトに見たてて解説していきます。同人誌の制作は、イベント駆動でサイクルを回すとうまくいきます。では、どうやってサイクルを回すのか。とある時期のコミケに向かい制作を進める流れについて、スケジュール感とタスクを元にお伝えします。これを読めば、あなたも同人誌の書き手としてサークル参加できます!
電子書籍出版に必要な技術
紙と鉛筆とホッチキスがあれば文章は書けて冊子にできます。コミケでは「コピー誌」と呼ばれる、コピー機から印刷してホッチキス止めした冊子もあります。では、電子書籍を作るためには何が必要でしょうか。
この回では、複数人が協力しあいながら一冊の技術書を作成するために必要なコラボレーションツールと、個々人が書いた原稿を電子書籍に仕立てるためのオーサリングツールについて解説します。
社外勉強会コミュニティを元にしたリモート執筆に必要な技術
「社外勉強会コミュニティに行ってみた」「技術話聞くの楽しい!」「えっ? LT(ライトニングトーク)するの?」
このような形で社外で出会った人たちと、あなたは何をしていきたいですか。飲み会をする? バーベキューする? それとも、本書いてみる?
「そもそも勉強のために集まったのだから、INPUTするのは分かる。けれど、OUTPUTするためにイベントに参加しているわけじゃないし、「本を作ろう!」なんて言ったら笑われそう……。なんかハードル高そうだし。」そんなあなたに仲間に「電子出版やろうぜ!」といえる勇気を出してほしい。
この回では、コミュニティで1つのものを一緒に作る楽しさとプロセスについて書いて行きます。この回を読み終えたら「もう不安も気になる点もないからやっぱり『電子出版しようぜ!』と言っちゃうだろうな」となること間違いなし。
執筆におけるイラストレーションの存在と、イラストに必要な技術
一緒に書く仲間が集まった。書きたい話題も決まった。しかし、何かが足りない。「そうだ!萌え絵が足りないんだ……」
そんなことはありません。萌え絵のない同人誌だってたくさんあります。サークルカットだって文字だけのものもあります。ですが、表紙に絵がある、自分たちの作り上げるものに絵があるというのは、それだけでテンションがあがるものです。
「なかなか絵を描ける人と知り合えないんだよね。」という話も聞きますが、それは横に置いておきます。絵を描ける人と知り合った後、どうやって企画から表紙絵に作りあげていくか。わたしたちが出した同人誌を企画した時の案と、実際に表紙になるまでのプロセスを、イラストレーターの視点と、プランナーの視点でお伝えします。
最後にチェックリスト
さて、ここまで読んでくれたあなた。以下の中からいくつ当てはまるかチェックしてみてください。
3つ以上当てはまったなら、それは電子書籍で本を出してみるサインかもしれません。
| ✓ | 項目 |
|---|---|
| ちょっと周りの人に伝えたいことがある | |
| 最近、電子書籍も身近になってきたなと思っている | |
| Gitの使い方ならネットでみたよ | |
| 自己紹介で「本を書いてます」って言ってみたいかも | |
| お小遣いを稼ぐための力をつけたい | |
| いっしょにやるなら、独りより、みんながいいよね | |
| 本の書き方がわからないから本気出してないだけ | |
| 自己紹介で名刺代わりに……って本を出してみたいね | |
| 放課後の部活動のトキメキを取り戻したい | |
| 実はサインの練習をしたことがある | |
| コミケのブースでドヤ顔したいけど、絵が描けない | |
| あなたの書いたものを読んでみたいんだ……って思う人がいる | |
| 知り合いの文才を見い出したい |
さぁ3つ以上当てはまったあなた! 電子書籍で同人誌をつくってみませんか?
来たる2月19日(木)20日(金)のデブサミ 2015に、DevLOVE Pubも参加します。コミュニティブースで同人誌を頒布をしますので、興味を持った方はぜひ遊びに来てください。オープンジャム、コミュニティLTもやります。ふらっと覗きに来てください。
