CodeZine(コードジン)

特集ページ一覧

Office 365は導入価値あるサービスか?【増補改訂版】

Office 365入門

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2015/01/26 14:00

 クラウド版グループウェアサービスであるOffice 365、それは何なのか? 2015年1月に値上げされた今でも会社に導入価値があるサービスなのかどうかを、実際にOffice 365を導入した管理者観点でご紹介します。

Office 365概要~どんなサービスなのか?~

 Office 365の広告が多く打ち出されるようになり、時間も経ちましたので、Office 365というキーワードを目にしたことがある読者が増えた頃だと思います。しかし、実際にOffice 365とは何か、そこまでご存知の方はまだ多くないのではないでしょうか。本記事ではキーワードが先行しかねないOffice 365を、実際に使用している著者が詳細に解説していきます。

 では、最初にOffice 365が何で構成されているかご紹介します。

Officeと各種グループウェア製品の混合ソリューション

 Office 365はズバリ、以下の5つから成り立つソリューションです。

  • Exchange Online(メールサーバー・施設設備予約機能も内包)
  • SharePoint Online(情報共有サイト兼、企業内SNS)
  • OneDrive for Business(個人用クラウドストレージ)
  • Lync Online(Web会議システム・IMならびにプレゼンス管理)
  • Office 365 ProPlus(Word、ExcelなどのOfficeスイート)

 これらのサービスはそれぞれ単体でも契約できますし、パッケージプランも契約できます。単体でそれぞれ全てを契約すると若干割高になるので、著者はパッケージプランの方をお勧めします(本稿では、単体のプランについては掲載しません)。

Office 365のオプションプラン

 Office 365は、2015年現在多くのプランが提供されています。

プロジェクト管理
  • Project Pro for Office 365
  • Project Online
  • Project Online with Project Pro for Office 365
図表作成ツール
  • Visio Pro for Office 365
コンテンツ権限管理
  • Azure Rights Management

 その他に、Windowsのデバイス管理となるMicrosoft Intune、顧客管理システムのMicrosoft Dynamics CRMなどもあります。

 オプションプランに関しては、コアとなるOffice 365を先に導入した後で必要な物を検討して導入するのがおススメです。

 契約プランは下記の通りです。

一般法人向けOffice 365の契約プラン
規模 小中規模向け(1-300名) 大規模向け/すべての規模向け
プラン名 Business Business Essentials Business Premium E1 E3 E4
推奨利用ユーザー数 1-300名 1-300名 1-300名 あらゆる規模向け あらゆる規模向け あらゆる規模向け
最大ユーザー数 300名 300名 300名 無制限 無制限 無制限
契約形態 年間契約、または月額契約 年間契約、または月額契約 年間契約、または月額契約 年間契約、または月額契約 年間契約、または月額契約 年間契約、または月額契約
月額費用(税抜) 900円 540円 1,360円 870円 2,180円 2,390円
年額費用(税抜) 10,800円 6,480円 16,320円 10,440円 26,160円 28,680円

 ここでは細かなプランの解説はしませんが、簡単に記載すると以下のように分類できます。

  • Businessファミリーは300名以下の小規模向け
  • Enterpriseファミリーは柔軟な対応が可能な中規模以上の企業向け

 小規模向けとなるBusiness~Business Premiumまでの、Businessファミリーのプランの違いはざっくりと書くと以下の通りです。

  • Business:Office 365 Business/OneDrive for Businessのみのプラン
  • Business Essentials:Exchange Online/SharePoint Online/OneDrive for Business/Lync Onlineのみのプラン
  • Business Premium:Business+Business Essentialsで、それぞれ契約するよりも価格が若干安い

 Officeパッケージだけ買いたい場合はBusiness、それ以外のクラウドで提供されているメールサーバー、情報共有サイト、個人用クラウドストレージ、Web会議システムを利用したい場合はBusiness Essentialsを契約するイメージです。

 企業の事情にあわせて選択可能です。どちらかを先に導入し、今後の展開としてもう片方、ひいてはBusiness Premiumと展開することもできます。ただし、たいていの場合はBusiness Premiumを契約する方が、よりOffice 365を導入する効果が出やすくなるでしょう。

 EnterpriseファミリーのE1/E3/E4の違いはざっくりと書くと以下の通りです。

  • E1プランはEプランにおけるBusiness Essentialsプラン
  • E3プランはEプランにおけるBusiness Premiumプラン
  • E4プランはE3プランに加えてLync Server 2013のエッジサーバーやIP対応のPBXと連携する事でスマホ向けLyncに対して機能強化ができるプラン

 Business/Enterpriseファミリーの中から規模に応じたプランを選択する事が月額費用を削減するポイントとなります。

 ちなみに、Office 365はMicrosoftから直接購入ができますが、販売会社さん経由で購入しても料金は変わりありません。Office 365の導入や購入先に迷ったら、Facebookや情報サイトで最新の情報提供を行っており、Office 365の専任のスタッフが運営する「Office 365 相談センター」に相談してみるのも良いでしょう。

Office 365とGoogle Appsの違い

 さて、ここまで記載してお気づきの方も出てくるとは思いますが、Office 365はGoogle社が提供しているGoogle Appsと競合するソリューションです。本稿はあくまでOffice 365にフォーカスを当てていますが、Office 365とGoogle Apps両者の違いを簡単ではありますが比較してみたいと思います(今回は、クラウドストレージが無制限のプランで算出します)。

 まずはOffice 365 E1、E3プランと、Google Apps for Business with unlimited storage and Vault(以下、Google Appsと記載)の比較表をご覧ください。

Office 365 E1、E3プランとGoogle Apps for Business with unlimited storage and Vaultの簡易比較表
ソリューション名 Office 365 E1 Office 365 E3 Google Apps for Business with unlimited storage and Vault
メール・カレンダー機能 Exchange Online Exchange Online Gmail/Google Calendar
情報共有サイト機能 SharePoint Online/Office Online SharePoint Online/Office Online Google Sites/Google Docs/Google Drive
個人用クラウドストレージ OneDrive for Business(無制限) OneDrive for Business(無制限) Google Drive(無制限)
企業内SNS Yammer Enterprise Yammer Enterprise Google+ for Work
在席管理、IM、Web会議機能 Lync Online Lync Online Google Hangout
Office 365 ProPlus PCやモバイルデバイスの合計15台までインストール可能 ※1
Office for iPad/Office for iPhoneでの商用利用に必要なライセンス 閲覧のみ 閲覧・文書の作成・編集・プレミアム機能の利用 閲覧のみ
周辺オプションプラン プロジェクト管理や図表作成ツールなど豊富 プロジェクト管理や図表作成ツールなど豊富
訴訟+コンプライアンス対策 Exchange Online Archiving/SharePoint Online 電子情報開示(eDiscovery) Vault
Active Directoryを用いたSSO(シングルサインオン) Active Directory Federation Services(以下、ADFS) ADFS ADFSなど
SLA 99.9% 99.9% 99.9%
価格(税抜) 月額870円/ユーザー、年額10,440円/ユーザー 月額2,180円/ユーザー、年額26,160円/ユーザー 月額1,200円/ユーザー、年額14,400円/ユーザー
データセンターのロケーション 日本またはシンガポール/香港 ※2 日本またはシンガポール/香港 ※2 日本以外のデータセンター
準拠法 日本法 日本法 カリフォルニア州法
サポート 専用の問い合わせ窓口有 専用の問い合わせ窓口有 専用の問い合わせ窓口有
註釈

※1 後述する「合計15台まで利用できる!Office 365 ProPlusのライセンス」を参照ください。

※2 新規にOffice 365を契約する場合は、すでに日本データセンターでのサービス提供となりますが、2014年12月15日以前からOffice 365を契約している場合は、2015年6月より順次日本データセンターへ移行します。

 表を見ていただくとわかると思いますが、Office 365とGoogle Appsは基本的にできることに変わりはありません。どちらも同じようなことが実現できます。また、どちらのソリューションにもいえることですが、オンプレミスのサーバー上で各機能を構築するのと異なり、保存できるデータファイル容量の大きさ、データの堅牢性、冗長構成やSLA、バックアップを意識しなくても良い点などを考えると、どちらのソリューションも非常に魅力的です。

 ただし、今回比較したOffice 365(E1、E3プラン)とGoogle Apps(Google Apps for Business with unlimited storage and Vault)では、それぞれ特筆すべきポイントがあります。

  • Office 365もGoogle Appsも無制限のストレージが利用できる
  • Office 365はE3プランの場合Office 365 ProPlusが付属する
  • Office 365はE3プランの場合Office for iPad/iPhoneにてフル機能を利用できるが、E1プランとGoogle Appsは商用利用の場合に閲覧しか許可されていない
  • Google Appsはブラウザ上だけでOfficeファイルの作成、編集をやり取りする場合、コストが安い
  • Office 365はオプションプランが豊富、Google AppsではGoogle Sites/Drive等で実現できなくもない(ただし、著者の感覚であれば、2015年現在Office 365のオプションプランは利用企業が多いわけではない)
  • Office 365は日本国内のデータセンターにて稼働されている
  • Office 365のSSOはADFSに限定されるが、Google Appsはサードベンダー製のSSO製品にも対応
  • 準拠法がOffice 365は日本法で、Google Appsはカリフォルニア州法

 あくまで著者の感覚ではありますが、ビジネスにおいてMicrosoftのOfficeを利用している企業は非常に多いはずです。では、Officeはどのように入手しているのでしょうか? たいていの場合、次のどちらかの方法で入手していると思います。

  • 端末購入時のOEM版で購入
  • 会社でまとめてボリュームライセンスを購入

 会社としてOffice 365 E3を契約している場合、中途採用者、新入社員が増えた際にはE3ライセンスを追加することになるでしょう。Office 365 E3のライセンスはOffice 365 ProPlusも付属しているので、別途Officeのパッケージライセンスやボリュームライセンスを購入する必要はなくなります。最近ではOffice開発もOpen XML対応していれば、バージョン依存も回避できます。このように考えると、Office 365 E3プランは比較的魅力的なサービスなのではないでしょうか。

 さらに、著者の所属している企業でOffice 365を導入する決め手となった理由の一つに、Office 365のテクニカルサポートの質の高さがあげられます。Office 365は利用料金さえ支払えばメール並びに電話でのテクニカルサポートを得られます。追加費用は発生しません。このテクニカルサポートは何件利用しても無償であるためIT管理者にとって非常に心強い味方となるでしょう。

 また、Office 365のデータセンターが日本国内にできたことはやはり大きなインパクトがあります。

 社会的責任が大きい金融、医療や官公庁、地方自治体や大企業などでは、重要なデータを国外のデータセンターに配置することを敬遠していたため、今までOffice 365やGoogle Appsは魅力的ではあっても選択肢として出てくることはほぼありませんでした。今回、Office 365が日本国内のデータセンターより提供されるようになったことで、利用要件の一つである「日本国内にデータセンターがあること」が満たされ、これらの領域でもOffice 365の利用は促進されることが考えられます。

 また、Office 365の日本データセンターは東西に2か所あり、仮にどちらかが災害で停止してしまっても、保存されているデータは東西間でバックアップしているため、SLAを満たす体制が整っています。そのため、BPC対策としてもOffice 365を導入する選択肢が出てくるでしょう。

コスト面でのメリット/デメリット

 ここからは、Office 365を導入しようと選択した場合、次に何を注意するべきかについて述べていきます。最初に、中小企業にありがちな状態をいくつか列挙してみます。

  • メールサーバーをオンプレミスで立てていて一人一人のメールサーバー要領に制限がある
  • メールサーバーがPOPのみの対応
  • 施設設備予約が共有ファイルサーバー上のExcelなどで実施されている
  • 情報共有サイトが一切ない
  • Web会議システムや在籍情報管理ツールが無い
  • Officeのライセンス管理ができていない、または管理が煩雑である
  • BCPのためのDisaster Recovery対策がしっかりと取れていない

 上記すべてに当てはまる場合はOffice 365のE3プラン。いくつかの項目が当てはまる場合は該当する項目のOffice 365の個別プランを検討してみるとよいでしょう。

 ただし、Office 365を新規に導入する際に注意する点は、以下のどちらかになるかと思います。

  • 置き換え費用
  • 追加費用

 すでに社内にてExchange ServerやSharePoint Server、Lync ServerやOffice ProPlusが導入されている場合、会社に提案するのは不可能ではありませんが、少し困難です。また、Web会議システムや情報共有サイトを保有していない会社の場合、今まで計上されていない費用が追加で計上されることになります。こちらも追加のコストを支払う価値があるソリューションであるかどうかを正確に見極めて資料を用意し、経営層に訴えることが重要です。

著者が自社に対して提案した手法

 ここで、著者が自社に対して提案した際の手法を一例として紹介します。著者の所属している会社は以下のような社内環境でした。

  • メールサーバーをオンプレミスで立てている(Exchange Serverではない)
  • メールサーバーがPOPのみの対応
  • 施設設備予約が共有ファイルサーバー上のExcelなどで実施されている
  • 情報共有サイトは無償のものをオンプレミスで構築
  • Web会議システムをオンプレミスで立てている(Office 365導入1年前に数百万かけて新調済)
  • Officeのライセンス管理が煩雑で、最新バージョンがリクエストに対して不足がちで仕方なく旧バージョンを使用してもらう

 この環境の場合、以下のようなデメリットが考えられます。

  • メールサーバーのバックアップを取らずにいたため、社員一人一人がメールデータのバックアップを取る必要がある。バックアップが無い場合、端末破損時にすべてのメールデータが消える
  • 施設設備予約は共有フォルダ上のExcelファイルで実施していたため、排他ロックがかかり予約がスムーズにできない
  • 導入したWeb会議システムの仕様は、Web会議システム用のIDを予約する必要があり、多用するほど施設設備予約が使われ、排他ロックが多くなりストレスがたまる
  • ファイルサーバーにある重要なデータのバックアップとリストアを強く意識する必要がある
  • Officeが全社的に見て複数バージョンが混在し、(ソフトウェア資産管理ソフトを導入はしていますが、それでも)バージョンをまたぐライセンス管理が非常に煩雑

 幸いにして自社では、Exchange Server、SharePoint Server、Lync Serverはありませんでした。また、Officeは新バージョンが出るたびにボリュームライセンスを社員の1/5程の数を購入し、業務上必要な社員にのみ提供しているということで、社内のOffice環境はバージョンの統一も取れず管理が煩雑な状況でした。

 このような状況を打開するため、上記すべての状況を丸ごと解消できるOffice 365の導入を考え、提案しました。提案時に見るべきは、オンプレミス構築をした場合の10年程のコスト算出と、Office 365の導入によるコスト比較です。オンプレミス構築した際は冗長構成のサーバー代、バックアップのNAS代、UPS代の他に年々増加する社員分のライセンス上乗せ、Exchange Serverなどのライセンスがかかります。ライセンスは単品がいいのか最新バージョンにバージョンアップできるSoftware Assurance(SA)がいいのかなど、実際に金額を調べてグラフ化してみると説得力が増しやすいです。実際に著者が作成したExcelグラフは図1になります。

図1 オンプレミスと環境とOffice 365の費用比較例
図1 オンプレミスと環境とOffice 365の費用比較例

 オンプレミス環境の場合、電気代や管理費用、サーバーを設置する場所代など目には見えづらいコストも上乗せされます。図の特徴として、一時的に出る費用がずば抜けて高いか、契約中は他のクラウドサービス同様に一定のコストが計上されるかの違いが一目で分かります。また、よく話題に上がることですが、オンプレミスの場合は資産となり、減価償却計算なども必要となってきます。そのため、必要なだけ契約して社内にモノが存在しないクラウドサービスは、経費としてのみ考えることになる点も説明が必要でしょう。

 この辺りを一通りクリアすると、大抵の中小企業の場合ではOffice 365の方が導入コストを削減できるというデータが出てくるはずです。

合計15台まで利用できる! Office 365 ProPlusのライセンス

 なお、著者個人の感覚ではありますが、Office 365はエンドユーザーはもちろんですが、本記事を読まれるようなIT企業こそ入れるべきだと強く感じています。一番大きな理由としては、Office 365 ProPlus(またはBusiness)のインストール数です。通常ボリュームライセンスで購入した場合、Officeは1ライセンスで、メイン端末(デスクトップとノート端末問わず)と、ライセンス付与者が使用するノート端末(2台目はノート端末限定)の計2台インストールして使用することができます。このボリュームライセンスはダウングレード権もついてはいますが、IT企業において仮想環境も含めて複数台端末を保有している社員がいるのは、特に珍しいことではないでしょう。ボリュームライセンスの2台制限(2台目はノート端末限定)ではOfficeライセンスが足りないという状況もありえない話ではありません。また、ボリュームライセンスの考え方はソフトウェア資産管理ソフトで反映されないため、最終的にはIT管理者が端末管理台帳などと照会しながらラインセンス管理をすることになります。この照会はIT企業であれば端末台数が非常に多く、中々いい時間を奪われます。

 Office 365のOffice 365 ProPlusは、前述のとおり基本的に最新版のOffice限定ですが、一人当たり合計15台までデバイスにライセンスが付与されます。内訳は下記の通りです。

  • PC or Mac:5台
  • スマートフォン:5台
  • タブレット:5台

 一部のギークの方は、上記ライセンス数でも不足しているというかもしれませんが、普通に業務を行う中では十分すぎるライセンス数が提供されています。

 Office 365 ProPlusのインストールは、Office 365のポータルからEXEをダウンロードして実行しますが、5ライセンスの管理は個々人で行われ、5台を超えてOfficeをインストールしようとした場合、既にインストールしている5台の端末名が表示され、使用しない端末をユーザー自身が選択します。つまり、Officeに関してはIT管理者が資産管理をする必要がなくなります。ユーザーも自由にOfficeをインストールできるようになるので、双方にとって非常に有益です。

 なお著者の会社では、MacでWord/Excel/PowerPointだけ使用したい、という要望もありました。その場合は、冒頭で説明したプランであるOffice 365 Businessがおススメです。Office 365 BusinessはOffice 365 Pro PlusからAccess/Lyncやグループポリシー、BI等、より高度なアプリや機能をそぎ落としているため、実務でそこまでを求めない場合のコスト削減に有効となります。

Office for iPadについて

  昨年末にリリースされたOffice for iPadとOffice for iPhoneは既にご利用でしょうか。今まではOfficeファイルを正式にサポートしているアプリが無く、互換性のあるアプリを利用して、閲覧や一部の編集、作成等を実施してきたと思いますが、Microsoftが提供するOffice for iPad/Office for iPhoneを利用すれば、閲覧、作成、編集もiOSのデバイスから実施できます。

 利用の手順は簡単。ストアからダウンロードするだけです。ただし、注意点があります。それは商用利用かどうかという点です。 商用利用の場合、閲覧は無料で出来ますが、作成、編集という作業に関しては下記のOffice 365ライセンスが必要となります。

  • Office 365 Small Business Premium
  • Midsize Business
  • Office 365 Business
  • Office 365 Business Premium
  • Office 365 Enterprise E3 もしくは E4
  • Office 365 Education E3 もしくは E4
  • Office 365 ProPlus

 個人利用の場合は、Microsoftアカウントがあれば作成、編集ができますが、これはあくまで個人利用のみのライセンスです。会社のドキュメントを個人のOneDrive上に保存し、作成、編集するような商用利用は、明確なライセンス違反となります(コンプライアンスやISMS上も大問題です)。

 繰り返しになりますが、商用利用する場合は適切なOffice 365プランを契約し、利用しましょう

 なお、著者もOffice for iPad/Office for iPhoneを愛用していますが、通勤やお客様先に移動中、PC等を持ち運ぶ機会がグッと減りました。Outlook Web AccessやメールでOfficeファイルを受信しても、その場でOneDrive for Businessに保存し、すぐにExcel/Word/PowerPointなどの閲覧、編集ができるからです。 ビジネスをより円滑に進めることができるようになったOffice for iPad/Office for iPhoneは、Office 365を利用するうえで非常に魅力的なポイントと言えるでしょう。

IT管理者から見るメリット/デメリット

 前項でも少し触れましたが、Office 365導入はIT管理者の仕事を削減します。ただし、IT管理者の仕事自体はなくなりません。DNS設定から各クラウドサービスの初期設定、定期的に発生するメンテナンス作業など、やることは多くありますが、PowerShellを用いた管理が中心となり、スクリプトをまとめて用意しておくことができるので、従来よりも管理工数を削減できるでしょう。

 IT管理者から見た場合のOffice 365導入メリットを簡単にまとめます。

  • 利用者に応じたサーバーのサイジング計画やサーバーリプレース計画や作業が不要
  • サーバー自体のメンテナンス不要
  • SLA99.9%(オンプレミスでこれを担保するには冗長性などを考慮して構成する必要があり管理工数も高くなる)
  • 各サービスのバックアップ不要
  • Office製品のライセンス管理不要
  • 高品質のサービスリクエストが利用可能

 主に物理サーバー周りの管理はIT管理者の悩みの種になりがちだと思います。各クラウドサービスの設定のみ意識すればいいというのは嬉しい点ではないでしょうか。

ISO27001維持、更新も問題ない!

 著者の所属している会社でも、業務効率化やセキュリティ対策、ISO27001(ISMS)の継続維持のために、オンプレミスがいいのか、クラウドがいいのかと検討が進みました。クラウドの導入がISO27001取得や維持できるかどうかということに対して、いまだ懐疑的な企業もあるとは思いますが、Office 365が実際に運用されているデータセンターでは定期的にISO27001の審査を受けています。そのため、Office 365が自社のISO27001取得の弊害となることはありません。むしろ、自社でサーバーを管理するよりもよほどデータの堅牢性や完全性、可用性が担保されるといえます。

Active Directoryがあれば、なお管理しやすい仕組み

 Office 365はクラウドサービスのため、ブラウザからアプリを利用する際にはサインインが必要です。通常のWebサービス同様に、メールアドレスとパスワードを入力して利用することになります(図3)。

図3 Office 365のサインイン画面
図3 Office 365のサインイン画面

 Office 365の強みの一つとして、シングルサインオンの1つ前の段階が提供されています。それはズバリActive Directoryの同期です。IT企業であれば、大抵はActive Directoryが導入されているのではないでしょうか。Office 365は、オンプレミスのActive DirectoryとAzure Active Directoryに連動しています。Azure Active Directory側にデータを送るだけで、Azure Active Directory側の設定はオンプレミスのActive Directoryには反映されません。ユーザーとグループの管理同期であれば5分程度で同期がとれるため、一元管理も容易です。

 逆に、オンプレミスにActive Directoryを用意していないエンドユーザー企業では、Azure Active Directory上にユーザーやグループを作成できます。一つ一つ手で入力することもできますし、CSVで一括登録もできます。あくまで、オンプレミスのActive Directoryがある場合は、より楽に管理ができると考えておくとよいでしょう。

 2015年現在、Office 365利用時のシングルサインオンはより構築しやすくなりました。オンプレミスのActive Directoryを、サイト間VPNを利用し、Microsoft Azure上の仮想環境と繋ぐハイブリッド環境を構築することができます。

 Microsoft Azure上では下記サービスを展開することで、冗長化なども取れます。

  • レプリケーションとなるActive Directory
  • ディレクトリ同期サービス
  • Active Directory Federation
  • Web Application Proxy

 一昔前まではかなり気を使う環境構築でしたが、2015年現在はMicrosoftのダウンロードセンターから実際構築するための自習書もリリースされているため、これからOffice 365を導入検討している企業では、合わせてシングルサインオンの環境構築も検討してみると、より日常的な活用がしやすくなるでしょう。

あえて挙げるOffice 365のIT管理者から見たデメリット

 ここまで、メリットばかりを記載しましたが、あえてOffice 365のデメリットを記載します。著者が考えるデメリットは以下の3点です。

  • オンプレミスにバックアップが取れない
  • 各サービスのバージョンアップの遅延はできるが回避はできない
  • アップデート速度が速く、微細修正が随時入るため、ナレッジとなるドキュメント更新などが小まめに必要

 ISO27001など会社のセキュリティポリシー次第では、『クラウドサービスでも念のためバックアップを取得すること』などの要件が策定されていることもあると思います。しかし、Office 365の各サービスはあくまでSaaSの一種なので、各サービスをオンプレミスにバックアップすることはできません。

 つづいて、バージョンアップについてです。日本の企業ではバージョンを固定してガリガリカスタマイズする傾向が強いと思います。Office 365はメリットで記載したように、サーバー周りでの細かな管理は不要です。逆に言うと、ユーザーが現行バージョンを維持したいと考えていても、自動でバージョンアップされます。遅延自体はアップグレード通知が来てから最大60日程延長できますが、アップグレードは回避できません。IT管理者はその事を理解したうえで、カスタマイズ(SharePoint Onlineのみですが)を進めるといいでしょう。

 また、Office 365はアップデートが非常に速いです。アップデートにより機能が追加され、メニューなどのUIが随時変更される、使い勝手が微妙に変わる(アップデート内容次第ではドラスティックなUIの変更や機能追加もある)など、管理者としてはオンプレミスサーバーの更新や管理の手間は省けるものの、ナレッジとなるドキュメント等を社内に周知徹底することに時間が割かれてしまいます。

 例えば、近年ドラスティックに変更された点を、3点程列挙します。

  • この1年間でOffice 365 ProPlusのライセンスが5つのPC or Macのライセンスのみだった、AndroidやiOS向けにスマートデバイス向けにOfficeアプリがリリースされたことで、合計15デバイスに変更された
  • 個人用のクラウドストレージであるOneDrive for Businessは、2014年初頭では25GBであったが、7月には1TB、そして2015年1月にはついに容量無制限に拡張された
  • Office 365のメニューバーのUIがこの1年で2回程、大規模変更されている

 リリース時点で作成していたドキュメントが古くなるため、随時更新が必要になります。社内ドキュメントは版数管理を厳密に実施している企業が多いと思いますが、Office 365を活用し始めると版数が小まめに増えてしまいます。著者の企業では、全てではありませんが、随時更新するドキュメントに関してはWord/Excel/PowerPointから、OneNoteで全体共有をかけ、気づいた社員が随時更新できる仕組みへと変更しました。これにより属人性を可能な限り排除し、ドキュメントを最新に維持しつつも、全体で知識の底上げも実現できるようになりました。

 OneNoteを社内ドキュメントの共有ツールとしてOffice 365と連携させることで、Office 365自体のデメリットを、業務改革というメリットに転換できるのでおススメです。

 なお、Office 365の更新について、英語のみではありますがOffice 365 Roadmapにて、下記のステータスで公開されています。

  • LAUNCHED(全ユーザーにリリースされている最新サービス)
  • ROLLING OUT(先行ユーザーに提供されているサービス)
  • IN DEVELOPMENT(開発中のサービス)
  • CANCELD(開発中止となったサービス)
  • PREVIOUS RELEASES(既にリリースされている機能)

 この辺りをチェックしておくことで、どのような変更があったか、今後あるのかを確認できます。

 最後になりますが、Office 365は導入して終わりではありません。導入よりも運用をいかにして無理なく継続的に続けられるかがキモとなるサービスだと言えます。そのため、都度アップデートされる内容に対して利用者が適応していけるような人材育成もIT管理者の役割となるでしょう。

まとめ

 今回はOffice 365とは何かを中心に導入する際のメリットデメリットを、2015年版に加筆修正し、ご紹介いたしました。

 著者の所属している会社ではOffice 365導入から2年半が経ちますがOffice 365は社員全員が移行前に比べて満足度が高いです(以前の環境が極端だったというのはありますが)。細かなバージョンアップもありますが、全社員の適応力が以前よりも高くなり、社内ルールを順守した上でスマートデバイスからも利用しはじめています。LyncやYammer等の導入により、社内の業務はもちろん、休日等に活動する社内部活動の活性化も進みました。

 IT企業は往々にして自社内のインフラは後回しにしがちです。Office 365は自動でメンテナンスされ、常に最新の環境を維持してくれます。日本にもデータセンターが展開され、今後ますます勢いが加速するOffice 365。未導入の企業のIT管理者さんも一度は是非ご検討ください。

 本記事だけでなく、著者の過去記事や、参考文献のサイトやBlogもOffice 365を導入、運用する際に非常に有益です。興味を持たれた方は是非チェックしてみてください。

参考文献

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

  • WINGSプロジェクト ナオキ(ナオキ)

    <WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂...

  • 山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

    静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for ASP/ASP.NET。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。 主な著書に「入門シリーズ(サーバサイドAjax/XM...

All contents copyright © 2005-2021 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5